第16話 周回するとこうなるよね。



エンシェントウルフ狩りを始めて1時間経過した頃だっただろうか?セラとシロの2人ともレベルがカンストした。なので、セラには別の属性メイジと呪術師と精霊使い。シロには最強のヒーラー職に就くための下級職を教えて就いてもらった。


シロに就いて貰いたい下級職は巫女、祈り手、神の使徒、聖火の守り手、踊り子、式神使い、僧侶、聖属性メイジの8つだ。特に、巫女と神の使徒に関しては獣人の中でも特別な存在にしか就くことは出来ない。神の使徒は巫女をカンストさせないとそもそも解放されないしな。


そして、俺も最弱勇者の上限まで辿り着いた。という事でサクッと転職。やっとステ振り出来るぜ!最初は鉄板の剣士、槍士、盾士、侍、短剣、剣舞、光闇を除いた基本4属性メイジ、それで解放されたエレメンタラー、そして勇者をレベル上げした。

最初は、1回辺り時間が多少かかっていたものの慣れてくるとどんどん早くなる。まぁ、そもそも俺が最弱勇者から脱却してステ振り出来るようになったからな…もはや敵ではなくなってしまった。開幕10秒かからない、剣でラッシュしたら終了だ。途中からシャトルランみたいななっていたかもしれないな。


途中から赤箱も反応も薄くなっていった。本来嬉しいものなんだけどな…こんだけあっさりボスが倒されたらありがたみも何もないか…ちなみに荒野ダンジョンの結構めぼしい装備品は回収出来た。ただ、貴重なアイテム系は出なかったな…仕方ないけど…ただ個人的にはホクホクだ!全身このダンジョン装備1式に着替えたからね!


さて、これだけしっかりと周回した結果念願のメインジョブが全員解放された。セラとシロは遠い目をしてるな。俺からすれば1からメンバー育成する日常なんだけどな…


「…ノワってホントに非常識の塊なのね…1日で下級職をこんなにも…いくらランクアップや隠し条件があるからって的確だし早すぎるわ…」


「……私は夢でも見てるんでしょうか?それともあの時ウルフ達に襲われて死んじゃったんでしょうか…意味が分かりません…」


「……正直すまんかった…テンション上がり過ぎて数日に分けようと思ってた工程を一日でしてしまった…けど、これで俺達のメインジョブになる物は解放されたから…」


そういうと3人ともライセンスカードを見る。セラにはハイエレメンタルマスター。シロは神獣の子。

俺はバトルマニアが出ていた。もちろん、全員転職する。

え、セラとシロのジョブに俺のジョブはあんだけ苦労してるのに名前負けしてないかって?確かに名前は弱そうに見えるかもだが、強さはとんでもない。勇者すら素材となり得るランカー御用達のジョブだからな!



という事でやって参りました、ジョブ解説のお時間です!


まずは、セラのハイエレメンタルマスター。下級職の魔法職の完成系の1つと言っていい。全属性の魔法を柔然に扱えて、デバフや精霊召喚まで行えるハイスペックな魔法職。まだ下級職だから物足りなさはあるものの、ランクアップさせれば化ける。ちなみに、この世界で下級職をこんなに上げてる人はいないので未発見ジョブだったりする。精々、みんな多くて3~4個なんだと。まぁ上級職がゴール地点になるならそれでいいんだけど、そうもいかないからなぁ…


続いては今日加入したにもかかわらず振り回されっぱなしのシロ。

シロが就いたのは神獣の子。正直これは強さで言うならまだ全然強くない。ただ、無難にヒーラーをこなせる職だ。だが、中級職にランクアップした時に化ける。そりゃ、こんな大層な名前がついてるんだ、もちろん化ける。伸び幅がどんどんおっきくなっていくのが特徴だしな。今後に期待だな。


そして、最弱勇者から脱却した俺。そんな俺が就いた職はバトルマニア!解放条件は下級戦闘職Lv50以上が12個以上。このジョブはこれまたユニークスキルがついてる。名前は能力奪取。これがあまりにも強い。

このユニークスキルは対象のジョブスキルを何でも3つまで奪う事が出来る。そして、その対象は選ばない。これで相手の能力を奪うのかと言ったら違う。自分がこれまで就いてきたジョブのスキルを得るのだ。例えば勇者を指定して奪取して使う事も可能。それが3つも選べる。そう、選べるのだ。何時でも切り替えることが出来る、万能戦闘職、それがバトルマニア。ちなみに近接だけじゃなくてバトルなら魔法もアリでしょって感じで魔法職も使えるから遠近に弱点らしい弱点がない。


ちなみに、俺がメインで使う予定なのが勇者、エレメンタラー、剣舞だ。勇者だけでも強いのに剣技に更に磨きがかかり、エレメンタラーで魔法を強化。ちなみに、勇者はチートスキルって言われるパッシブスキル、身体覚醒を持ってる。これはステータスを2倍にするという破格の能力だ。

これで、ランカー御用達という理由がわかって貰えたと思う。



…まぁ所詮下級職の中で強いと言うだけで上のランクのジョブになるともっと理不尽に強いんですけどね!ステータス2倍は強いし、破格!だけど、上位の専門バッファーのバフに比べたら雀の涙だし、そもそも攻撃スキルの倍率自体が違うからね。今は良くても2倍とかだけど強くなれば5倍とか平気で超えてくるんだぜ、ワクワクするだろ?


閑話休題



とりあえず、メインジョブとして定めたジョブに全員就けたのはめでたい。ただ、正直かなり疲れてもいる。ゲームと時間の進みが違うからかレベル上がるの早かったしな…ゲームだと1日でこれだけのジョブを上げるのは不可能だった。何かしらの恩恵でも得てたんだろうか?


「みんな、無事に下級職のメインジョブに就けた。軽く戦闘を試してみてもいいがどうしたい?」


「……2、3回だけエンシェントウルフ倒しましょうか。せっかくメインジョブに転職したのにLv1じゃ虚しいもの…今更2回も3回も変わんないでしょ。」


あ…セラが闇落ちしかけてる…あとでフォローしないと…そもそもみんな10歳なんだもんな、やっちまったよ…


「…私も同じかな、ボス倒すのが効率良いのは痛い方身に染みてわかったし…」


という事で3回程追加でエンシェントウルフを倒して帰還用魔法陣に乗った。ちなみに、最後の1回は赤の宝箱だったが2人とも何の反応もなかった。中身は上級ランクアップチケットだった。これ、案外集まりにくいからな。今のうちに1枚確保出来てよかった。

ちなみに3戦でLv18まで全員上がってたよ。


魔法陣から帰ってくるとそこにはレイラが馬車を呼んで待っていた。


「ノワール様、セラフィナ様お疲れ様でした。あと、そちらの方は?」


「あぁ、長く待たせてしまったな。この子はシロコ。俺達はシロと呼んでいる。危険な目にあっていた所を助けて今日パーティーメンバーになった。また、少々ワケありでな。暫くの間ウチに住まわせようと思う。」


「かしこまりました。私はレイラと申します。主にノワール様の世話周りを任されております、以後お見知り置きを。」


「あ、えっとシロコと言います、ご丁寧にどうも……え?ノワってもしかしてお貴族様なの?」


「あれ?言ってなかったか?俺もセラも貴族だよ。」


「あー、そういえば匂わせはしたけど言ってなかったわね。」


「今日一日で価値観全部壊れちゃった…へへへ…はぁ…」


そんなたわいもない話をしてると3人ほどノソノソと近づいてくる。殺気を隠そうともしてない。

これは恐らくシロ関係だろうな…。


「レイラ、俺達3人は非常に疲れている。早く帰って湯浴みして食事を取りたいと考えている。シロに外道を働いた連中だ、好きにしろ全て任せる。3分で片付けろ。」


「ふふ、ノワール様、ご冗談を30秒で充分でございます。」


「分かった、急げよ。」


そう告げると横から渦中の本人であるシロから声が上がる。


「えぇ…容赦ない…」


「当然だ、少し離れているとはいえここを仕切ってるのはウチだ。そんな場所で領主の息子に危害を加えようとした時点で終わりだ。セラもいるから尚更な。セラの家はもっと偉いからな。」


「偉いと言っても大したことないわ、ノワに頭上がらないもの。まぁ今日はそんなノワに対しても魔法ぶつけたくなったけどね。」


「ごめんて…俺もこんなにテンション上がるとは思ってなかったんだよ…」


「ノワール様、お待たせしました。」


「うん、時間丁度だな。レイラはやはり優秀だな。やはりパーティーにレイラのような優秀な斥候が欲しくなるな。」


「…ノワール様、日に日に人をたらすのがお上手になっておられますよ。私じゃなければ惚れていましたよ、今の。さて、屋敷へ帰りましょうか。」


「素直に褒めただけなんだけどな…」


「私ホントにこんな中でやっていけるのかな……」


そうボソッと零したシロの声を聞き届ける者は誰もおらず、俺達はアルベルージュ家へと帰っていった。

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