第13話 狐人族のシロコ
荒野ダンジョンは最奥が15層にある。なので俺達はガンガン進んでいく。ウルフやハイウルフ、また10層を超えたあたりから出てくる属性持ちのエレメンタルウルフが出てきた。荒野ダンジョンでのエレメンタルウルフの属性は土と風だったな。
属性持ちとはいえウルフ系。それに下級ダンジョンのモンスターだから大した魔法も使えない。
ウルフ系は特に群れとしての統率力で攻撃してくるから厄介ではあったものの全部返り討ちにした。経験値が美味い!
それにしてもウルフ系のモンスターはみんな毛並みが綺麗でカッコ良くて好きなんだよな…素材の毛皮は防具として使い易くて結構良い値段で取引される程ツヤがある…テイマー系の職なら絶対仲間にしてる…生で見れて最高だぜ…
そんな事を考えていながら12階層を進んでいた時に異変が見えた。
(あれは…狐人族?でも、毛が白い?それにパッと見た感じ一人でボロボロ。群れに囲まれていて数は8か。ちょっと不味いかもな…)
そう、俺が見つけたのは狐人族だと思われる白毛の少女。恐らく同年代、というか同い歳の可能性が高いな。その少女が群れに囲まれてピンチに陥っていた。流石にこれを助けないのは後味悪い…
「セラ、ちょっと先に狐人族の子がいるんだけど一人で囲まれてるみたいなんだ。ちょっと助けに行ってくるよ。」
「それなら私も行くよ!私がいた方が群れなら殲滅も簡単でしょ?」
「わかった!頼りにしてるよ、セラ!」
「あぅ…わかったわ…」
そういうと2人して駆け出して俺が睡花の実を投擲し、それを的確にセラのファイヤーボールが撃ち抜いた。狐人族の少女を囲っていた群れは一斉にダウンしたので全員倒した。
そこで俺は助けた少女に向き直る。
「すまん、ボロボロの状態で囲まれてるのが見えた為、緊急事態だと判断し助けさせて貰った。」
「いえ、こちらこそ…正直あのままだったら私大怪我か最悪命を落としてましたし気にしてません…助けていただきありがとうございます。」
「うん…危険な自覚があったということは自分の実力的に分不相応な場所に来ているという自覚もありそうだね…そもそも1人ではとてもここまで来れる思えない…訳ありですか?」
「…はい。私は狐人族のシロコと言います。昨日覚職したばかりです。」
「やっぱりそうか…俺はノワール。隣がパーティーメンバーのセラフィナ。俺の事はノワと呼んでくれ。」
「紹介されたセラフィナよ。私の事もセラって呼んでくれていいわ。それで、どうしてこんなところに一人でいたの?どうやってきたの?」
「分かりました、説明させてください。」
そこからの話は酷いものだった。昨日覚職したばかりのシロコを同じ狐人族の男2人が無理矢理連れ出し、荒野ダンジョンのここまで連れてきて放置。連れ出した男はさっさと転移アイテムで脱出したのだという。
これは、明確な違反行為にあたる。ただ、ダンジョンという場所なのでまともな証拠が無い。だから、時折この様な酷い仕打ちを受ける子がいたりするが泣き寝入りするしか道がない。ゲームでは緊急クエスト案件だったな。発生する前に解決出来たけど。
ただ、それでも疑問が残った。
「でも、なんでそんな方法でシロコに嫌がらせをしたんだ?そこがイマイチピンッと来てないんだが。」
「それは、私が白毛で異端、なのにそれなりに強い力を有してるから…ですかね?簡単に言えば迫害、イジメですかね…」
「…それは一族総出でってことか。」
「はい…覚職するまでは嫌がらせ程度で済んでたのですが先日覚職した際に巫女のジョブが覚職してしまって…」
なるほど。そもそもこの子は特殊キャラの一つ。白狐の狐人族でしかも巫女に就けた。最終的にヒーラーの中でも最強格になれる素質を持つっていうのにここまで酷い仕打ちを受けることがあるのか…いや、嫉妬と羨望だろうな。実にろくでもない連中だ。
しかも、ここゲームじゃないんだぞ、ホントに死ぬかもしれないって言うのに…
とはいえ、俺からしたら渡りに船なんて騒ぎじゃない。この子は絶対に仲間にしてやる!あと、普通に美少女!可愛い!狐耳と尻尾モフモフやんけ!というわけで勧誘してみるか。
「なるほど、大体事情は分かった。」
「すみません、面白くもない話をしてしまって。」
「いや、問題ない。それより俺達とパーティー組まないか?」
「えぇ!?いきなりですね、でも急にどうして?」
「うちのパーティーはヒーラーがまだ居なくてな…優秀なヒーラーが欲しいと思っていたんだ。」
「でも、私は昨日覚職した初心者で…」
「いや、見込みはある。というか、見込みしかない。将来性の塊だ。」
「えぇ…私は一族でも出来損ない、気持ち悪いと言われてきて…」
「あぁ、それはそいつらが無能なだけだ。シロコの優秀さの欠片も理解出来なかったんだろう。俺ならシロコを最強格に出来る自信があるしな。
なんだったら不快なそいつらを滅ぼしたって構いやしないぞ、なぁセラ?」
「えぇ、そうね。あまりにも外道で卑劣、許されない行為だわ。それに、私もノワもそれぐらい一言指示出せば簡単に出来るわね。」
「滅ぼす事が簡単って貴方達は一体…いや、それはいいんです!別にもう一族の連中とは関わりたくありませんから。」
「そうか、とりあえずここのダンジョンは攻略するつもりだ。その後は家に来たらいい。シロコ1人ぐらい平気で守ってやれるさ。」
「…わかった。行く宛てもなかったし、命の恩人にそこまで言われたらね…これからよろしくね?ノワ、セラ。」
「えぇ!よろしくね、シロちゃん!」
「し、シロちゃん!?」
「あぁ、セラは距離詰めるの上手いからな〜。ただ、すぐに慣れるよ。俺もシロって呼ばせてもらうぜ。」
「わ、わかった…大変そうだけど頑張るよ。」
こうしてなし崩し的ではあるが無事ヒーラーを確保。しかも、白狐のヒーラーか…これはヒーラー最強ジョブの1つを確保したも同然。
しかも、ボス戦前に確保出来たのは大きい。これで、連携強化しながら3人同時育成出来るしな!
そうと決まれば、ボス部屋まで再度前進だ!
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