第12話 荒野ダンジョンその1
今回の荒野ダンジョンも入り口は洞窟のようになっているが中へ入ると様変わりする。
辺りを見渡すと、一面が荒野。岩が多くゴツゴツした印象を受ける。気温などは暑くも寒くもないな。
まずは、このダンジョンでやる事。それは採取だ。
「よし、セラ!今回の荒野ダンジョンでの作戦を発表する!」
「!?はい、分かりました!ノワ隊長!」
見た感じちょっとお固めに見えて意外とこの子ノリいいんだよなぁ。
「よし、まずは出来るだけ接敵しない様に注意しながら、荒野ダンジョンの上層にある睡花の実を採取する!」
「なるほど、睡花の実ですか!ただ、あれをどう使うんです?」
「フッフッフ、よくぞ聞いてくれた。睡花の実は燃えると周囲に催眠作用をもたらす煙をばら撒く。」
「そうなのですか、食せば催眠効果が出る為不眠の人やリラックスしたい時に摂取するってのは聞いたことありましたがそれは知りませんでした。」
「そうか?まぁ人がその煙を吸っても軽く欠伸が出るくらいだからな。」
「なるほど?では、モンスターにもそこまで効果がなさそうだけど…」
「まぁ普通のモンスターならそうだろう。だが、ここ荒野ダンジョンにおいてはそうではない!魔獣型で鼻の効くウルフ系モンスター達はその煙を吸うと1発でダウンだ。」
「なるほど!鼻の効きすぎるウルフ系ならではの弱点という訳ですね!」
「そうだ!魔獣系は特に五感が敏感なモンスターが多い。本来ならそれは強力な武器になるが同時に弱点にもなる。これはウルフ系に限った話じゃないから覚えとくといいぞ!」
「分かりました、勉強になります隊長!」
「という事で最初は採取スポットへ行こう!」
「おー!」
という事でまず俺達は睡花の実を採取する為に動き出した。睡花の実自体、結構そこら中にあるもので採取するのは難易度も低い。アイテムボックスに2人でどんどん詰めていくとあっという間に200個ほど集まった。
「うーん、集め過ぎたかな?」
「いや、荒野ダンジョンにおいて最強の武器の1つだ。それに、これを使うとウルフ系がどれだけ来ようと簡単に倒せる。レベル上げにも最適なんだよ。」
「そっか、じゃあ今日でこれ全部使い切るつもりで行かないとね!」
「あぁ、その通り!という事で1つ目の目標は達成!次は俺が欲しいアイテムを取りに行こう!」
「おぉ、いいね!何が欲しいの?」
「実は、ここのダンジョンには隠し部屋があるなんて話があってな。そこで俺が欲しい靴装備があるんだよ。」
「なるほど!それは取りに行かないとだね!」
そう、ここを選んだ理由の一つ。それは欲しい装備が存在するからだ。
下級ダンジョンにおいて破格の性能。そして、俺も助けになってくれる装備が存在していた。それを取りに行く。
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俺達は今荒野ダンジョンの4層まで来ている。道中のウルフや上位種のハイウルフ達はさっき採取した睡花の実を投げつけ、そこにセラのファイヤーボールを当てる。すると全員寝るので簡単に勝てた。
一度に10体とか来られても簡単に一網打尽に出来るし、経験値がアホみたいに美味しい!
そりゃ、初級とは訳が違う。これなら簡単に俺もセラも早くにカンスト出来そうだな。
そして、俺が欲しい装備はここ、4層の隠し部屋に存在する。ここは赤の宝箱固定で中身も固定だ。隠し部屋の場所はしっかり頭に入ってるのでセラと一緒に向かっていく。
「この辺に隠し部屋があると思うんだけどな…」
「うーん、荒野なのにそもそも部屋なんてあるのかな?」
「あー、ここの隠し部屋は岩の下に埋まってるって言う話を聞くな。」
「えぇ…それ仮に見つけたとしても動かせないんじゃない?」
「いや、それが岩に軽く触れると魔力を通して簡単に動くらしい。ただ、隠されてるのが階層への階段の道から大きく外れるからって聞いた気がするな。」
「ノワはそんな話何処から聞いたんだが…私聞いた事ないわ。それに、そんな話を聞いたってことはそこにはもうないんじゃない?」
「それがね、なんと取られてないらしいんだよね。」
「…何でそんなことわかるの?」
「……まぁセラ助けた時に勇者ジョブ就ける様になったからじゃないかな?ほら、勇者の直観的なね?」
「へぇ…勇者の直観に勇者ジョブね………勇者!?勇者ってあの伝説の勇者!?」
「伝説かどうかは分からないけど勇者だよ。」
「今勇者に就いてるの?」
「うーん、なんとも言い難い所だね。勇者といえば勇者だけど特殊なジョブについてるからな…」
「嘘でしょ…普通の勇者ですら伝説のジョブって言われてるのにその特殊ジョブって…怖くなるわ…」
「ちなみに今戦闘力自体はめっちゃ弱いよ、ステータス振れないジョブだからね。」
「えぇ…ますます意味わかんない…というかステータス振れないならなんであんなにモンスター倒せるの…いや、私を助けてくれた時点でおかしな戦闘力持ってる事は分かってるけど…」
「まぁ天才ってやつかな?」
「…なんも否定できない。」
「お、そんな事行ってる間に着いたみたい、あの岩だ。」
「…もうホントに隠し部屋があっても驚かないわ。」
そういうと俺はゆっくりと目の前にある岩を押す。すると下へ続く階段と1畳ぐらいの空間。その中に赤の宝箱が現れた。
「ホントにあったのね…」
「まぁ予想通りかな?中身も恐らく想像通りだろう…」
そういうと宝箱を開ける。すると中からハイウルフの更に上の存在であろう素材が使われた足装備が現れた。
この装備の名前は風狼の誇り。効果は以下の通り。
[靴装備:風狼の誇り]
VIT+20、AGI+60、DEX+20
効果
統率Lv2、風の友Lv2
※統率…ギルドマスター及びパーティーリーダーにのみ適用。
パーティーメンバーへの指示を行う際、動きが良くなり指示が通りやすくなる。
※風の友…風によって友として認められた事を指す。転倒状態になりそうな時、風が力を貸してくれる。また、攻撃を受けた際受け流しやすくなる。
これはやっぱり下級レベルだと最強装備の一角だな…ステータス値も高いし、効果も優秀。何よりも大きくAGIが上がるのが偉い。
ボスモンスターは大きい、受け流そうとしても大き過ぎて受け流せないって事も増えてくる。そういう時に高いAGIで回避出来るのが偉い。
中級中位までは全然現役で使えるだろうな!俺もよくお世話になった装備だから思い入れもあるし、嬉しいな!
「ノワ、目的の装備で合ってたの?」
「あぁ!完璧だ!最高だ!めっちゃ嬉しい…」
「そんなにいい装備なのね…けど、ノアの家なら覚職した時にいい装備一式貰えたんじゃないの?」
「セラ、何を言ってるんだ!自分で見つけた装備で強くなる。最初からお金や人に頼った装備じゃ楽過ぎて歯応えもないし、楽しくないさ!」
「なるほど…そういうものなのね…」
「もちろん人それぞれだが、アルベルージュ家は特にそういった思考が強いな。まぁ、貴族なのにそんなんでいいのかと言われると答えに詰まるが…」
「私もそうしてみようかしら?」
「それでもいいと思うぞ!あ、けど、一つだけ。魔法職の杖や魔本ってのは貴重で大切な物だ。それだけはしっかりと妥協せずに選んだ方がいい。」
「なるほど、確かに下級ダンジョンはもちろん中級ダンジョンですらなかなか良い杖や魔本は見つからないって言うものね。」
「そういう事。魔法職はその辺だけは最初からきっちりしてる方がいい。特に公爵家の人間なら尚更だ。正直今の家から貸してる杖もレベルが低いから使わせたくないぐらいだけど仕方ない。」
「わかったわ、説明ありがとう。きっと覚職のお祝いにお父様やお爺様が張り切って準備してると思うから楽しみにしておくわ。」
「あぁ、それがいい。」
こうして隠し部屋で装備をゲットした俺達は荒野ダンジョンの最奥へと突き進む事になった。
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ちなみに、後日セラの父と祖父は親バカの為、杖だけでなく装備も程々に良い物を揃えていて、これを装備しない限り危ないからダンジョンに行かせられないと言ったら、セラから「大嫌い、もう知らない!」と言われて燃え尽きた事は別の話である。
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明日か明後日まで荒野ダンジョン編が続きます、お楽しみに!
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