第3話 全1による高難易度チュートリアル?
襲撃者が襲いかかってくる。スタイルは全員暗殺者タイプのジョブの動きだ。
「おら、死ね!」
そう言いながら襲撃者の1人が顔に向けて短刀を突き出す。それを薄皮1枚だけ斬らせつつ、避ける。ステータスの差は圧倒的だが、ガチ勢で全1の俺だぜ?動きが単調、ゆえに読みやすい。俺レベルでいえば欠伸してようと当たりはしないね!……まぁ最強を目指す上でここのクリアは必須だから慣れちゃったってのが1番なんだけど……
ステータスで能力が上がってるからって攻撃の出だしが分かれば避けるのなんか楽勝楽勝!
「クソ、避けられた?!覚職前のガキの癖に!」
そういうとまた攻撃してくる。胸に、腹に、足に、背中に。短刀を突き出す様に攻撃するがどれも薄皮1枚だけ斬らせて避ける。スキルも使ってない単純な攻撃だから張り合いがない。
「何だこのガキ、普通じゃねぇ……お前らも加わってくれ、さっさとやらないとまた人が増えて仕事が増える!」
「分かった」
そういうとさっきまで周囲を警戒していた残りの2人も攻撃に加わる。それぞれが切りつけたり、刺突したりと攻撃してくるがどれも薄皮1枚だけ斬らせてひたすら避ける。
気配や足音、立ち位置、間合い、力の入り具合に重心の動き。どれもこれも分かりやすい。何より、コイツらのスキルも行動パターンも全部知ってるからな……どんだけ研究して何回狩ったと思ってる。
「アハハハ、おいおい、どうした襲撃者。この程度でガキ相手にイキってたのか?笑いが止まらないな、恥ずかしい奴らだ!」
「クソが、確実に殺すぞ!スキルも使って息の根止めてやれ!」
「おう!行くぜ、『一閃』!」
「『雷速︰五月雨突き』」
「『ソウルイーター』」
そういうとそれぞれがスキルを使い、更に猛攻してくる。一閃と五月雨突きが正面。ソウルイーターが背後、ソウルイーターは暗殺者の技で不意打ちで決まれば即死させる特殊効果があるが、知ってるし分かってるから不意打ちに入らないし問題ないな!
という事で相変わらず、薄皮1枚だけ斬らせて全部避ける。だが、薄皮1枚だけとは言えダメージは入り、HPは削れていく。
「確かに、俺たちの攻撃を避け続ける腕は見事だがずっとカスり続けている。HPがなくなった状態で攻撃が直撃すれば確実に死ぬぞ!さぁ、どうするんだ!」
相手もそう思ったのだろう、そう告げてくるが問題無い。
そもそも、この世界の仕様。HPは全損した瞬間即死する、という訳ではない。所謂、戦闘不能状態になる。HPが無くなるとステータスやジョブ、レベルの恩恵がなくなり、そのタイミングでまともに攻撃を喰らってしまうと死んでしまう事になる。そうなると蘇生も何もない。ただ、戦闘不能状態ならヒーラーの蘇生呪文で戦線復帰出来たりする。
ちなみに、モンスター達は戦闘不能状態になった人間を狙ったりしない親切仕様である。ただし、その状態で攻撃した場合、また襲ってきてそうなったら基本死んでしまうだろうな……親切はしっかり受け取らないと!
さて、ここまで話した中で察しの良い人は気付いただろう。要はHPが無くなったとしてもまともに直撃しない限り死ぬ事はないのだ!
そりゃそうだ、かすり傷でまともに出血すらしてないのに死ぬわけがない。というか、コイツらの攻撃をまともに今の俺が喰らったらHPがあったとしても貫通して即死だしな。
それに、戦闘不能状態はステータスやジョブ、レベルの恩恵を受けれなくなるといったが今はその全てがない!つまり、HPがなくなろうが関係ないのだ!
というか、それが目的だ。発現したい職。ランカー達すら見落としたジョブの発現をする為にHPを全損させないといけなかったからな、じゃないとわざわざカスらせない。
「お喋りしてる暇があるならさっさとこいよ、俺の事殺すんだろ?早くしないとタイムオーバーになるぜ?まぁ、殺せやしないがな。」
「いつまでも生意気なガキだ!早くやるぞ!」
「「了解!」」
そういうと更に3人は攻撃を仕掛けてくる。そして、HPが全損してから丁度200回目のかすり傷をつけられたところで俺は告げる。
「そろそろ時間だな、終わりにしよう。こっちは条件を達成したんでな。」
「何訳の分からない事を言ってやがる、いい加減死ね!『カオスブレード』!」
「『スパーククロウ』!」
「『アイシクルバレッド』!」
そう言って襲いかかってくる襲撃者達に父から渡された剣を鞘から抜き、振り抜いた。
すると、その襲撃者達の腕が宙を舞う。
スキルって発動すると強力とはいえ、貯め時間あるし並の人ならスキルの力でゴリ押そうとするから軌道が読みやすくて楽なんだよな。
あとは、筋力のない俺の力だけだと正面で切り結ぶのは無理だから大振りになる瞬間、相手の力を利用して切るしかなかったからな……
「グゥッ!?……な、なぁ、何故だ!HPは残っていたはずなのに何故、腕を切り飛ばされる。それもステータスの恩恵を受けてないやつの攻撃で!」
「知らないのか、お守りだよ。名前は無垢なる剣。覚職する前の子供しか使えない、代わりにこの剣はステータスを無視して攻撃出来る。覚職しに行く月にしかその効果も発揮されないがな。あとは、単純に腕だ。スキル頼りの攻撃しかまともに繰り出せないお前達とは違うという事だ。」
「く、くそが……」
そう説明を終えると茫然とする3人、それぞれの足も切りつけ、逃亡出来ないようにした。
これで戦闘終了だ。
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私は一体何を見ていたのでしょう……私の名前はセラフィナ。セラフィナ・メルトステラ。この国のメルトステラ公爵家の末の娘。
私は、初覚職の為馬車で王都の冒険者ギルド本部へと向かっていました。もちろん、襲われたりする事もある為、お父様達が護衛をつけて下さって向かってました。
充分気をつけていたはずだったのですが……凄腕の暗殺者でしょうか?恐らく上級職の方なんでしょうね、3人が襲ってきました。中級職でも実力を伸ばしていた騎士達がまるで歯が立たず、あっさりと倒されて馬車も横転させられました。
もうダメか……覚職前に命を落とす事になるなんて無念だけど、ここまでの暗殺者じゃどうする事も出来ない。完全に諦めてしまっていたのです。
しかし、そこで同い年の黒髪の男の子が割って入ってきてしまいました。この時期に、王都へ来ている。それも服装からして、貴族の方。
私自身もあまり社交界などで顔を出したりしていないのですが、それでもある程度有名な方なら分かります。ですが、初めて見かけた方だったので彼もそんなに社交界などに出ていないのかもしれません。
それはさておき、同い年という事、しかもまだ向かう道中のこの場所。覚職していたとしても、覚職したてじゃ、万に一つも勝てない。それなのに、覚職してすらなかったら勝てるはずがない。
そんな彼に対して、逃げる様に言ったのですが聞く耳を持ってくれませんでした。
彼も捕まってしまい、最悪殺されてしまう。そう思い、戦闘が始まると同時に目を瞑って閉まったのですが……戦闘が終わる気配がしません。それどころか、どんどん激しくなっていくのに、彼は余裕綽々といった様子で話しています。それに対し、襲撃者達は焦っている様子。
そこで、私は恐る恐る目を開けました。その瞬間見た光景を私は生涯忘れる事は無いでしょう。
3人の攻撃を紙一重で交わし続け、舞うように避け、かすり傷からか少量の血が飛び散りますが、それがあまりにも美しい舞踊にすら思える手捌き。それを余裕綽々な表情で笑いながら行なっているのです。
信じられませんでした、この世界において能力やステータスは絶対正義。そう言われ続けてきてた世界で、ステータスやジョブ、スキルすらまともに持ってない少年が上級職3人も相手にしながらをいなし続ける様はまさに神のごとく。
それに飽きたのか、彼が時間だと告げると剣を一閃。すると、襲撃者達の腕は切り離されて宙に舞いました。
さっきのがなんだったのか、彼は何者なのか。そんな疑問が湧く中で、いや、それよりも……心の奥底がカッと熱くなるのを感じました。間違いなく、人生で初めての一目惚れをしてしまったのだと私は自覚したのです。
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