第1話 全1、0から再び最強を目指す。




陽の光が差し込み、小鳥のさえずりが聞こえる。


「んっ…もう朝か……確か、昨日ショックで倒れて……それから……」


そう思い、ゆっくり目を開ける。すると、そこは見知らぬ天井。それに、豪華なベッドの上で寝ている自分に気付く。それに、なんだか身体が小さいような……


「え、何がどうなってんの?ここ何処?」


そう思い立つと、近くの鏡まで這い出す。

すると、そこには美しい光沢ある黒髪赤メッシュに、大きく整った青い目、綺麗な鼻筋、まだ少しふっくらした子供っぽい頬。ゲーム開始時の初期状態の10歳のノワールの姿が写っていた。


「そんなまさか……嘘だろ……データ飛んでノワール最初からになったのか?いや、そもそもあそこから寝落ちたとしてなんでゲーム内にいる?てか、これゲームなのか?VRMMOって感触とか、匂いとか実装されてないはずなんだけど……アプデだとしても実装は無理なはず……」


そう思いつつ、ベッドにもう一度腰掛ける。確かに、ベッドの感触があるし匂いも感じる。身体を触れば身体の感触も確かに存在した。これは……


「もしかして……ショックすぎて向こうで倒れて転生でもしたのか?……いや、まぁ正直それは有り得るぐらいショックを受けはしたけど…マジか……マジかマジか!よくよく考えたら、俺大好きなゲームの世界に転生した可能性が高いってことか!」


世界観やシステム、様々な面からどハマりしたこのゲーム。青春を投げ捨て、全てを賭けて費やしてきたこの世界に生まれ変わって……もう一度ノワールを育てることが出来るってこと?

確かにVRでゲームの世界に半分入り込む事が出来るようになったとはいえ、所詮はゲームで投影された世界だったと痛感する。五感の全てがこれでもかと、ここが現実なんだと実感させてくる。ゲームでは良くて視覚と聴覚のみ。それでも、充分感動していた、これを体験するまでは。


「そうか……ダンアラの世界に転生したんだな、俺は……転生って事はやり直しが効かない可能性が高い。ゲームでもステータスやスキルの割り振りはそもそもやり直し効かないポイントではあったけど……俺には知識もあるし、全1プレイヤーとしてのプレイヤースキルもあるからな、レイドボスとかにも勝てるようにゲーム時代のノワールよりも強く出来るよう育成してみるか。最強のギルドをまた一から作るのも面白いかもしれない!何より、この世界を楽しみ尽くすには強くならないといけないからな!」


俺が大好きな世界に転生した、ガチ勢であり青春を捧げたゲーム。その中に入れたのだ。そうなったからにはとことん楽しむに限る!全1プレイヤーとして骨の髄までしっかり楽しみ尽くすことを心に決めた。その為には強くならないいけないが…

色々一人でこれから先の考えをまとめていると、扉からノックがなった。


「ノワール様、失礼します。レイラでございます。お着替えの準備とお食事をお持ちしました。」


メイドのレイラ。ノワールはアルベルージュ伯爵家の次男、貴族なのでそこに仕えているメイドや執事が存在する。その内の1人だ。


「入ってくれ、準備を頼む。」


「承りました。それと今日は初覚職はつかくしょくの日になるのでお食事が終わり次第ご準備を。」


「……分かった、ありがとう。」


そう伝えると食事と着替えへと移る。


ここからは少し世界観の話になるが、この世界ではあまり貴族の立場というのはそこまで強くない。

価値観としては、弱肉強食。強い者こそ絶対であるという価値観が強いからだ。と言うのも、ダンジョンには資源や資産、お宝などが山のように存在する。それの為、強くなり攻略すれば国も民も潤うからだ。国力に直結すると言っていい。

だからこそ、弱肉強食という価値観が強いのだ。とはいえ、弱肉強食なんて言ってはいるが、そこまで物騒な物でもない。カツアゲや犯罪行為もかなりキツく締め上げてるしな。

話を戻して、貴族としての立場はそこまで強くないと言った訳だが、それはただの貴族ならという意味だ。この国の貴族は武闘派が多数存在する。弱肉強食の世界だからな。

ダンジョンで強くなり、宝を持ち帰り国へ還元する。その為に、力や金や権力を使う。思ったよりも泥臭いのがこの世界の貴族だ。

ふんぞり返ってゲスゲス言ってるよりかは遥かに健全でマシだな!暑苦しい体育会系な所もあるけど!

まぁ、そういった関係からトップ冒険者や騎士が貴族へという話も特別珍しくもない。ちなみに、アルベルージュ家は由緒正しき貴族だがしっかりと力もある貴族の一つだ。


閑話休題。



さて、メイドのレイラは今日、初覚職はつかくしょくの日だと言っていた。この国は、10歳になるとジョブを受けにいくという風習がある。ジョブを得る事によって経験値を得れるようになり、強くなる事が出来る。

逆に言えば、ジョブを受けるまでは経験値も得れず弱い。ステータスは上げれず、スキルも何もない。だからこそ、10歳になった子供が初めて職に就く初覚職はつかくしょくの日というのは大事にされている。まぁ、最強を目指す上で、転職をしまくるので沢山お世話になる記念すべき1回目だな!

ちなみに、初覚職はつかくしょくは王都の冒険者ギルド本部で行われる事が多いぞ!ギルド本部ってファンタジー世界の中でもハイテクなんだよな……楽しみだ!

ちなみに、12歳までは各々で過ごし、12歳からは一律で国の運営している学校でジョブ育成の為3年間過ごす。その後、更に3年追加で過ごすか、そこで社会に飛び出すかは自由となっている。要は、中学校、高校だな。大学はあるにはあるがどっちかって言うと研究所で行く事は稀だな。


さて、これからまず何のジョブをつくのかと言う事が大事だ。


「まずは……やっぱりあれしかないよな!とはいえ、リアルで上手くいくのか、そもそもあのイベントが発生して間に合うのかは不安だけど……なんとかなるだろ!」


という事で、ノワールの基礎となるジョブに就く為の算段を立てつつ朝の支度を終えるのだった。

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