第2話 星屑の砂時計の逆流

 テラ・ノヴァ高等魔法学院に進学した星羅は、魔法の授業にはそれほど熱心ではなかったが、早くも三ヶ月が経っていた。

 学生たちは日々魔法の研鑽に励み、学院の白く丸いドームの中心にそびえる巨大な『星屑の砂時計』が、静かに時を刻んでいる。

 しかし、突然静寂は破られた。

 ある朝『星屑の砂時計』が逆流し始めたのだ。

 学院の中央に鎮座していた巨大な時計の砂が、下から上へと逆流し、モンスターが次々と現れる。

 時間が逆行した結果、過去の時代に生息していた魔物が現在に迷い込んだのだ。

 水辺に溶け込むように現れたスライムや、山奥に現れる鬼火の姿をしているウィル・オ・ザ・ウィスプ等によって学生たちは恐怖と混乱に包まれる。

 廊下のソファに座り本を読んでいた星羅は、その騒ぎに気づくと、ため息をついて立ち上がった。そして、砂時計の近くに行き、冷静に事態を分析し始める。

「スライムの構成物質はポリビニルアルコールとホウ砂!」

 星羅はそう叫び、周囲を安心させるように言った。

「ホウ砂はB(OH)₄+H⁺→B(OH)₃+H₂Oの化学反応で分解できる。つまり、スライムはただの液体に還元できる!」

 彼女は指をパチンと鳴らすと、魔法の力で瞬時にスライム達は液体に崩れ落ちる。

 続いて鬼火の正体であるウィル・オ・ザ・ウィスプを指し示しながら言った。

「ウィル・オ・ザ・ウィスプの化学方程式はPH₃+2O₂→H₃PO₄ね。酸化させれば動きは止まる」

 再び鳴らす指の音とともに、モンスターたちは動かなくなった。

 星羅の冷静な対応を見て、学院の生徒たちはその巧みな分析と処理に称賛の拍手を贈る。

 その場には『星屑の砂時計』を正常に戻すために呼び出されたジグルド先生がいた。

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