「その執事、悪魔。命綱は女子高生。」

櫻　愛梨

第１章『現実世界と異世界』

　かつて異世界を治めていたのは、絶対的な美しさを持つ『天使』たちだった。しかし、彼らは**「死になさい」**という冷たい命令とともに、自由な心を持つすべて――人間であれ悪魔であれ――を「不純な存在」として容赦なく粛清し始めた。

　理不尽な暴力と、天使の圧倒的な秩序の前に、『悪魔』たちは敗れ、安住の地を失う。戦いの傷と、悪魔の本能に潜む**「狂気」**に心を蝕まれ、彼らは静かに滅亡へと向かい始めた。

　希望を失いかけた彼らが最後に縋ったのは、魂の安寧と失われた力を取り戻す、たった1つの約束。それは、**現世に生きる、一人の『運命の主様（マスター）』**の存在――悪魔たちの魂に深く共鳴し、彼らの運命を救い出す特別な印を持つ少女。

　悪魔たちは、その主様を見つけ出し、お仕えすることで自らの狂気を鎮め、さらに主様が守りたいと願う人間たちをも守り抜くことを誓った。

　だからこそ、彼らは今、『悪魔執事』という優雅な仮の姿を纏い、今日ものどかな現世で、その鍵となる女子高生を探し続けている。

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