第一章

臆病者の異世界転生

第1話 気づけば白い空間にいた

 気づけば白い空間にいた、此処は何処だろう。

 唖然としていると突如何処からか声が聞こえて来た。

 男とも女とも似つかぬ声だ。


『人間よ、これからお前には異世界に転生してもらう。拒否権はない、そのかわり望む能力を出来るだけ授けよう』

「..........貴方は神様ですか?」

『神ではないが創造主だ』


 こちらの都合を一切考慮していないあたりが創造主らしいな。

“神ではないが創造主だ”というのはどういうことだろうか? 神と創造主はほぼ同義だった気がするのだが。


(いや、今はどうして僕を異世界に転生させるのかを聞こう)


「....................貴方は何故僕を転生させるのですか?」

『実験だ、魔法世界に物理世界の人間を転生させたらどうなるかの。転生した後は好きに生きると良い、私は干渉しない』


 僕は考えた。

 これはチャンスではないか?

 怠けた生活から脱するためのチャンス。


 僕は腑抜けた怠け者で臆病者の情けない男だ。

 今年十四才だが中学校は不登校だった。

 理由は面倒くさいのと今更登校した時のクラスメイトの反応が怖かったからである。


 母に会えなくなるのは寂しいが、拒否権がないのだから仕方ない。

 望む能力を出来るだけ授けてくれると言うし、相手が創造主と言う抵抗しても無駄な存在だからか、転生を強制される怒りも湧いてこない。


「.....すみません、授かる能力について考える時間をください」

『良かろう』


 どの様な能力を授かろうか?

 まず病気にならず、毒が効かず、高い身体能力の身体が欲しい。

 悩んだのは、不老と飲み食いせずとも生きていける能力である。

 まず不老は自分は老いなくても周りの者は老いていくわけで、それは寂しいし気味悪がられるだろう、だが老いるのは嫌だ。


 次に飲み食いせずとも生きていける能力だ、この能力を授かれば僕は怠けるだろう、だがこの能力を授からなければ何処かで飢え死にするかもしれない。

 僕は散々悩んだ後、授かる能力を決めた。


「――――創造主様、僕は病気にならず、毒が効かず、高い身体能力の永遠の寿命の衰えない不老の身体、痛みに泣かずに耐えられる常時発動の能力。望む相手に一個体だけ僕と同じ能力を授ける、相手は自由に変えられる能力が欲しいです。因みに高い身体能力と言うのは、棘付きメイスで思いっきり殴られても、目を剣で思いっきり突かれても問題ないぐらい頑強で、走った時の最高時速は時速100キロ以上、全速力で走っても24時間以内なら疲れず、1週間以内なら眠らなくても問題なく、飲まず食わずでも1カ月以内なら問題ないことです。転生時の姿は人間、身長2メートルの男で、細マッチョ、黒髪黒目20歳のイケメンでお願いします。転生先の世界の知識もある程度ください」

『強欲な人間だな』

「すみません、でも欲しいんです」


“病気にならず”は病気になるのが怖いのと、体調管理が面倒くさいから。

“毒が効かず”は毒が怖いから。

“高い身体能力”は怪我したくないのと、敵から逃げられるように。

“永遠の寿命の衰えない不老の身体”は肉体管理が面倒くさいのと、老いたくなから。

“痛みに泣かずに耐えられる常時発動の能力”は怪我をしても痛みにたえられるように――“耐えられる”なので痛みを感じないわけではない――。

“転生先の世界の知識”は、言葉や文字、常識、が分からないと大変そうだから。

 これぐらいないと異世界で生きていける気がしなかった。

 細マッチョとイケメンは純粋に欲しい。

“出来るだけ授けよう”と創造主様も言っていたし、通るかもしれない。


(いや、誘拐して転生を強制するんだから、これぐらい貰ったていいじゃないか)


 僕は土下座して頼んだ。


『良かろう、だが魔力は無しだ。では転生させる』

「えっ」


 こうして僕は異世界に転生し、気付けば街へ向かう街道に立っていた。

 僕は自分の頬をつねった、こんなことがあるのかと。

 どうやら現実の様だ。

 こうして臆病者の異世界転生生活が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る