9月16日 井出宅
「生配信だ!たかしの家に『ガイアウォーズ2』返しに行くぞ!」
突然の電話の翌日、田口は仕事が終わると昨夜の話を詳しく聞くために井出の家に向かっていた。
彼の家のインターホンを鳴らすと、すぐに扉が開いて井出が顔を覗かせる。
「おう!わざわざ仕事終わりで来てもらって悪いな!」
「いやいや、気にする……な?」
井出の顔に黒い煤のような影がかかっているように見えたので思わず目を擦ってもう一度見てみたが、心配そうにこちらを見る井出の顔が見えただけだった。
「……大丈夫か?来てもらってなんだけど、打ち合わせ別の日にするか?」
「大丈夫。ここ最近、目の疲れがひどいだけだ」
自分にそう言い聞かせるように、田口は井出の後に続いて部屋に入る。毎週末入り浸っている見慣れた部屋のはずなのに、いつもより薄暗く見える。
「照明変えたか?」
「おお、よく分かったな。球が切れそうだったから新しいのに変えたんだよ。」
微妙に話しが噛み合わない。これ以上の詮索はやめることにした。
「昨日の話、詳しく聞かせてくれ。」
井出特製チャーシューを乗せたラーメンを食べながら本題に入る。
「いいぜ。まず、昨日知らないアカウントから『げーむかえして』ってメールが届いたんだ。お前も知ってる通り、動画にコメントはたくさん来てたけどメールは初めてだったから返信してみたんだよ……まあ、実際のやり取りを見せた方が早いな。」
そう言って井出から渡されたスマホにはメールアプリでのやり取りが表示されていた。
『げーむかえして』という平仮名メールに対して井出が丁寧に対応した結果、住所だけでなく生配信の許可までもらっていた。
「お、無許可じゃなかったんだな。それなら一先ず安心だ。」
田口が考えていた一つ目の懸念点は解消された。
「なんだよ。相手に許可取らずに突撃すると思ってたのか?流石に子供相手にそんなことしないぞ。大人相手でもやらんけど。」
井出は冗談っぽく笑った。彼は普段は思いつきで行動しがちだが、根は真面目なのだ。田口は感心しながら二つ目の懸念点を確認する。
「で、この住所は本当にあったんだろうな?」
「おう、もちろん調べたぜ。マップアプリで見たらなんの変哲もない住宅街の普通の家だったわ。」
田口も自分のスマホで確認した。電車一本で行ける場所だった。
「……まあ、そこまで約束取り付けているんなら行くしかないか。」
「よっし!決まりな!でも、いきなり『今日は生配信です!』って言っても見てもらえないかもな!」
「チャンネルのページとSNSで告知しておくか。」
「それもそうだな!流石は相棒だぜ!」
その後、集合場所や時間などを決めて帰り支度をしながら話を振ってみる。
「あのメールの送り主、本物だと思うか?」
「ん?正直言って分からん!でもまあ、わざわざ住所まで送ってきたんだ。行くのがスジだろう。」
「お前はそう言う奴だったな……じゃあ、日曜日に。」
「おう!わざわざ来てくれてありがとうな!」
そう言って扉を開けた時、また子供の笑い声と古いゲームのBGMが聞こえた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます