綿密な構成と上質な会話劇

 嫉妬してしまう程の台詞回しの巧みさと、読んでいるだけでその世界の住民になったのかと錯覚させられる程の描写力が両立している稀有で秀逸な作品でした。

 物語の主軸は落ち着いた人間(エルフ)ドラマに置かれているのですが、それを地味に感じさせないストーリーテンポの秀逸さと、引き込まれる繊細な世界観。

 キャラの一人一人が「その世界の住民」としての説得力を持っており、水が上流から下流に流れるが如く自然に会話が進んでゆく。

 時折挟まれる主人公の注釈が、地の文が重くなりすぎないことに寄与している上に、キャラ同士の個性的な掛け合いや作中世界を理解することへの補助もしてくれている。

 主人公が後世に向けて書いた日記なのかと思う程に「生きた」ファンタジー世界がそこにはありました。