この物語は、誰かを探す少女の話でありながら、
読む者の心の奥にある“懐かしい痛み”を呼び起こします。
前半の3話まではまるで夢を歩くよう。
言葉が音もなく風景を染めていくようでした。
音・匂い・光の描写がとても繊細で、
静謐系ファンタジーとしての完成度は高いです。
後半では少し現実的な語彙やテンポが増え、
霧のような幻想性が弱まった印象もありましたが、
書き手が“自分の物語を見つけようとしている過程”として、
その揺らぎもまた、誠実な筆跡だと感じました。
1〜3話の静けさが、きっとこの作者さんの本質。
あの世界をまた見てみたいです。