悪魔たちと朝食


目が覚めると朝になっていた。


カーテン越しに朝日が差し込んでいる。


体を起こして一昨日と同じように大広間へ向かおうとする。



今日は皆揃っているのだろうか。


そう思い、部屋のドアまで歩いた時だった。


「ルナー、起きてる?」


ドア越しに声がした。


「はい、起きてます!」


そう返事をして急いでドアを開ける。


「あ、おはよ。ミラとパン焼いたんだけど、ルナも食べる?」



ドアを開けると、レイさんが部屋の前まで来ていた。

勢いよくドアを開けてしまったせいか、一瞬驚いた驚いた顔をした後でそう言った。



「ありがとうございます。いいんですか?」


「うん、一緒に行こ。」


そう言ってダイニングまで案内してくれた。


ダイニングに向かう途中、レイさんの後ろ姿を見ているとどこか既視感を覚える。


なんだろう、この感じ...。どこかで?



私は火事の夢のことを思い出した。


一緒に逃げた白い服の男の子。


レイさんも白い服を着ている。


もしかして...。


そんなことを考えるうちに、到着したらしい。

レイさんがガチャリと大広間の扉を開けると、焼いたパンのいい香りが鼻を通り抜けた。


大きなガラス張りに海が見える。


たくさんのテーブルが並べられていて、そのうちの1つにパンやフルーツなど朝食が並べられている。



ミラさんが厨房から出てきてテーブルに向かってパンを運んでいる。


「あら、ルナ、おはよう。早かったわね。」



「おはようございます。私が寝ている間に、2人で朝食まで作って下さって、何もできずにすみません。」


「いいのよ、気にしないで。私たちが作りたかっただけだから。ルナが戻ってきてくれて嬉しかったし、久しぶりに全員揃ったからレイと一緒に作ろうってなってたの。」



「そうそう。だから気にしないで皆で食べよー。」



そういうとレイさんはテーブルまで歩いていった。

ミラさんとレイさんがいるテーブル以外、誰も座っていない。


私たち以外本当に誰もいないようだ。



3人とも席に座ったあと、私は手を合わせた。


「いただきます。」


「あ、それ懐かしい!食べる前の挨拶!」


レイさんが楽しそうに私を見ている。


「私もそれで思い出した。国が違うと挨拶も違うのよね」



「俺ら魔界はこうだよね、やってなさすぎて忘れてた」


「そんなことあるの?」



レイさんが胸の中央より左に手を当てている中、すかさずミラさんがツッコミを入れている。

そのやりとりに思わず笑ってしまった。



「あ、ルナが笑った」


「ふふ、すみません、面白くてつい」


その時、レイさんの首あたりから花が落ちた。


桃色や白の花がフードの隙間からぽろぽろと落ちていく。


「あ、やば。」


私がその現象に釘付けになっているとミラさんが説明をした



「初めて見ると驚くかもしれないけど、レイは嬉しかったり驚いたりすると服か体からか分からないけど花が咲くのよ。」



「あーあ、バレちゃった」



「別に隠さなくてもいいじゃない」



「なんか気づいたら咲いちゃうんだよね。」


「ルナが笑ったの見て咲いてたわね」



「違うし、たまたまだし」



「嬉しかったんでしょ。1ヶ月前から今日の朝食のメニュー考え「うるさい、早く食べろ。」



「はいはい、素直になればいいのに。」


「別にー。」




そう言いながらレイさんはドライフルーツやナッツが入ったパンを取って口へ運んだ。


他にもチョコが入ったパン、何も入っていないパンがあり、どれもふわりとした食感でとても美味しい。



「ふふ、うま。」



ふと隣を見ると、レイさんが嬉しそうにパンを頬張っている。

私よりも背丈は大きいのに、その姿を見て小動物のリスを思い浮かべてしまった。私それを楽しそうにミラさんが見ている。微笑ましい。


「そういえば今日何する?」


レイさんが言うとミラさんは食べていたチョコのパンをお皿の上に置いた。


「そうね、何がいいかしら?ルナは何かしたいことある?」


そう聞かれて昨日の夜、レイさんに会う前、温室に行ったことを思い出した。


「昨日、温室に入って。良ければ植物の観察とか?」



「おー、癒し。」


「良さそうね。ルナはフラワーブーケの香りが好きって言ってたわね、温室にある花で何か作ってみる?」


「アロマオイルとかは?」


施設の人が、夜眠れない時、私の部屋まで来てアロマオイルを焚いてくれたことがあった。

お皿の上にオイルを垂らして、下から電気の熱で温めると、オレンジに似た果実の香りや花の香りに安心したことを思い出した。


「レイ、いいこと言うわね」


「でしょ」


「楽しそうですね、やってみたいです。」



「じゃあ決まり!」



「やったー。楽しみ」



朝食を食べながら私たちの1日の予定が決まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

不思議なホテル(コメディ要素あり) うみ色の炭酸水🫧 @pachipachi777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る