誰もいないホテル

坂道を登り、ホテルの前まで来た。


ホテルは白い石の壁で作られていて、洋館みたいだ。


白くて少しお城のような雰囲気がある。


扉を引いて中に入る。



誰もいないのだろうか、人の気配がない。


「すみません、誰かいませんか?」


大きな館内に私の声がこだまする。



場所を間違えたのだろうか。


しかしマップと写真を見る限り、

そんなはずはない。



写真の外観と同じホテルに来たはずだ。



開館より前に来てしまったのだろうか。



ロビの天井には透明の宝石が付いた黒いシャンデリアが下がっていて、窓からの光を反射してキラキラと光っている。



とりあえず、招待状に書かれた自分の部屋まで行こうと、地図を頼りに館内の奥へと進んだ。



扉を開けると大きな中庭に出た。幾つものコテージがあり、ロビーから渡り廊下で繋がっている建物、さらに教会のような場所もあった。


近くに見える海から潮風の心地よい香りがする。


地図の通りに進むと私の部屋は海から1番近い大きなコテージだった。


部屋の2階から渡り廊下でロビーやラウンジ、各部屋に繋がっているようだ。


芝生の上に敷かれた石の上を渡っコテージへ入ると、白を基調とした少し大きな部屋だった。


窓からは海が見え、1人で寝るには大きなベッドと、その向かいに黒い鏡台が置いてある。


なぜか白を基調とした部屋の中に、黒がやけに目立っていた。


バスルームには白いレンガの壁と床、大理石の洗面台が設置されている。


しかし、どうしてこんな豪華な部屋に私を招待してくれたのだろうか。


ここに来るまでに奇妙なことが続いている。



謎のモノクロの映像を2回みて、

送り主が分からないプレゼントが届いてたり、招待状は届いているのに、ホテルに誰もいなかったり。


普通ならきっと、こんな状況が続いたら、気味が悪くなって帰りたくなると思う。


だけど、なぜかここにいると帰ってきたような安心感がある。


施設にいるのが嫌だったわけではないが、とても居心地がいい。


誰もいなくても不思議と怖くはなかった。


私はおかしいのだろうか。


早朝から来たが、ここに着くまでに数時間かかっているため、時計をみるとちょうど正午を過ぎたくらいだった。


そういえばここには図書館があったはずだ。


ロビーからここに来るまでの間、

少し離れたところに木目調の看板が見えた。


そこで本を読んでいれば誰か来るかもしれない。



部屋の2階に上がり、図書館へと続く渡り廊下を歩いて部屋を後にした。

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