全てを兼ね備えた姫は、それ故に幼女であった
青羽真
全てを兼ね備えた姫は、それ故に幼女であった
ルミはルミっていうのです! 今日から
お休みが終わっちゃうのは残念だけど、ルミはそんな事でしょんぼりしないのです。だって、ルミは「さいきょー」で「ぱーふぇくと」な「ぷりんせす」だから!
それに、楽しみな事もあるのです。それは新しいおねえちゃんとの出会いだよ! ルミのすーぱーな
「ルミ様! ごきげんよう」
「わあ、可愛い~!! おはようございます!」
「ルミ様、ごきげんようですの」
「おはようございます、ルミ様!」
おねえちゃん達が笑顔であいさつしてくれたです! なんだかとってもいい感じなの! わーい!
あっ! あそこにいるのは!!
「サーナおねえちゃん、マリおねえちゃんだあ! 今年もよろしくなの! えっと、おねえちゃんは……はじめまして?」
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いいたします。ルミ様と一緒のクラスになれて嬉しいです♪」
「はっ、初めましてっ!
ミナおねえちゃんとは初めましてだったの! 新しい出会いにルミはとっても嬉しくなったから、思わずぎゅってしたくなったの!
「ミナおねえちゃんだね! よろしくなの、ぎゅーっ!」
「はわわっ?! ど、どうしよ……」
「なでなでしてあげたら喜ぶよ」「こんな風になでなで~って」
流石はルミの配下なの、すぐになでなでしてくれたのです。これがすーぱー・ぷりんせすのみらくるな
だけど、ミナおねえちゃんはびっくりした顔のまま動かなくなっちゃったの。なでなでしてくれないのかな……?
「じー」
「え、えっと……。よしよし~」
「っ! す、すごいの。ミナおねえちゃんからは、とてもすごいなでなでぱわーを感じたの!! ほめてかわかすのっ!」
「あ、ありがとうございます?」
ミナお姉ちゃんはなでなでのプロかもしれないの。心ののーとにメモメモしておくのです!
他にも色んなおねえちゃんと出会えたの。みんなを配下にできるよう、
ルミが「がんばるぞ」って思っていると、後ろから聞き馴染んだ声が聞こえてきたの。
「おーい、ルミちゃん♪ おはよ!」
「ルミちゃん、おはよ~」
「むむむ、この声は……。リディアおねえちゃんとカレンおねえちゃん! おはようなの!!」
みらくる・ぷりんせすの私を「ちゃん」って呼ぶこの二人は、ルミの特別な人なの。
リディアおねえちゃんは笑顔が
カレンおねえちゃんはすっごく
そして、この二人はなんと――ルミのおよめさんなのです! えへへ///
そうこうしていると、先生がきてお勉強の時間になったの。この時間は席についてお勉強をするの。
「今日はカレンおねえちゃんに座るの!」
「うん。どうぞ」
カレンおねえちゃんのおひざに座ります。よいしょ、よいしょ。
そしてカレンおねえちゃんにもたれかかると、頭の後ろにぽよよんって柔らかいものが! これは……カレンおねえちゃんのお胸なの! むふふーなの!
「全員席につい……。コホン、全員準備できたようね。それじゃあ、さっそく魔法陣学基礎の授業を始めます。初回の今日は、魔法陣学の可能性や応用性を知ってもらう為に、私の行っている研究を紹介します」
ふむふむ。
なるほどなるほど。
すごーい! なんだかとっても楽しそうなの!
わくわくって感じで、どきどきなのです!!
「――というように、発展の余地がまだまだあり、私たちはそれを模索し続けています。それでは、何か質問はありますか?」
「はーいなの! せんせー!」
「はいルミ様。なんでしょう?」
「ここのグルグルをこっちのカクカクにつないで、このぴらぴらとこのぴらぴらをどどんってしたら面白いと思いました!」
「えーっと、空間積分制御陣を構造化熱魔制御回路に? なるほど。それで、この二つの魔力路平面を? 交差させると?」
「そうなのです! そうしたら、ここのぱわーのぼわぼわが、仲良しになると思ったの!」
「???」
「えーっと。ここのぱわーのぶるぶるがここにも来て、ぶるぶるが一緒になると思ったの!」
「増幅陣と空間積分制御陣のエネルギー変動が同期するという意味かと」
「カレン様、翻訳ありがとうございます。なるほど、それは考えたことがありませんね。しかしそれは――いえ、ひょっとして。ありがとうございます、早速試してみます。凄いですルミ様、新たな知見を得る事が出来ました」
「えっへんなの!」
◆
その日の夕方。魔法陣学研究室では大パニックが起きていた。
「こちらを見ていただきたいのですが……」
「な、なんですか、これは?」
「なにこれ?! 意味わかんない事になってますね!」
「ルミ様が『こうすれば増幅陣と空間積分制御陣のエネルギー変動が同期する』という旨の事を仰ったので試すことにしました。結果がこちらです」
「なっ?! 揺らぎが!」
「ノイズレベルが1/5くらいになってる!」
「この回路をベースに理論値を計算しなおすと、設計次第ではノイズレベルを1/100ほどまで抑えられる可能性があります」
「凄まじい……ですね。ルミ様のご活躍は度々聞いていましたが、まさかここまでとは……」
「天才なんて言葉では言い表せない、人智を遥かに超えた叡智の結晶、ですね!」
「ですね。女王様がご懐妊された時は、不安視する声が多くありましたが、今では崇拝されてますよ」
ルミはここ“ユイクリス王国”の姫であり、母親は現女王である。
現女王は登山と冒険が好きなワイルドな人物であり、偶に行方不明になったりして皆を困らせていた。
そんな彼女は結婚に興味がない様子で、寄せられる求婚を全てスルーしていた。しかし、ある日突然、妊娠が発覚したのだ。
当然世間は「もう一人の母親は誰か?!」とパニックになった。「女王様を傷物にしやがって」などと責めるつもりはなく、むしろ跡継ぎ問題が解消したのは良い事だ。とはいえ、正式に結婚手続きを行う方が両者にとって都合が良いだろう。
えっ、父親? なんですかそれは? 男? そんな生き物、聞いたことがないですが……?
皆からもう一人の母親は誰なのか聞かれ、現女王は恥ずかしそうに言った。
「2か月前、登山に出かけた時、濃霧で帰りが遅れたのは覚えていますか?」
「ええ。何故か翌日には王城のベッドで気持ちよさそうに寝てましたね。あの日、私たちがどれだけ心配したか……。帰っていたならちゃんと言ってくださいよ!」
「実はあの時……。森の中で妖精と出会ったのです」
「は? 妖精?」
「蝶々のようにパタパタと空を飛ぶ、愛らしい女の子でした。妖精ちゃんは濃霧で困っていた私を家に案内してくれて、そこで一休みすることにしました。その時に、まあ、その、はい。しまして」
「は? え?」
「翌日、目が覚めると、何故か王城の自室にいました。思い当たる節はそれしかないので、妖精ちゃんがこの子のもう一人の母親かと……」
こうしてルミが生まれた。
ルミは健康にすくすく育っていたものの、【データ削除済】歳で肉体的・精神的な成長が止まってしまった。現女王によると、妖精の性質を受け継いだものと推測されるそうだ。
なるほど、現女王が一晩を共にした妖精もこのような姿だったという事だろう。つまり現女王はロ……。これ以上は考えてはいけません。
妖精の力は凄まじく、魔法適性や思考力が人智を遥かに超えていた。今朝行った魔法陣の改造の他にも、様々な分野で新発見を人類にもたらしている。
◆
様々な意味で世間を騒がしているルミだが、本人は事態をあまりよく理解していない。だって子供だもの!
ルミは、今日も元気に学園生活を楽しんでいます!
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