世に愛猫家は多い。
空前の猫ブームと言われてから既に
数年が経ち、今もその人気は衰えを
知らない。だが、猫というものはもっと
ずっと以前から愛されていた。
人の生活、 人生 と共に在った。
さて、この作品は『猫又』と『火車』の
二篇にて構成されている。
どちらも猫の妖怪ではあるが。
同時に一人の男の人生でもある。
猫は歳を経ると、尾が二股に分かれて
怪を為すという。手拭を引っ掛けて
踊りの集会を持ったり、障子を開け閉め
したり、人の言葉を解し、何かに化ける
ことも往々にしてある。奥山にも巷にも
家中にもいる。
そして、人の死に際して、黒雲と共に
現れては屍骸を奪って行くという。
猫は気まぐれで愛情も淡白だというが、
決してそうではない。猫ほど愛情豊かで
その愛憎の解釈が人に似る生き物を
他には識らない。
作者の猫と暮らした経験が具に現れる
怪異譚。猫好きも、そうでなくても
必見の妙味。
……ですにゃ。