第25話:魔王再起動

魔王兵器が、動き出した。


その動きは――


速い。


「くっ――!」


クロウが短剣で受け止める。


だが――


衝撃で、吹き飛ばされる。


「クロウ!」


リオが叫ぶ。


---


「……強い」


クロウは立ち上がる。


「レベル99――制限内の、最強か」


「……」


「だが――」


クロウは短剣を構える。


「負けるわけにはいかない」


---


アレクシスが魔法を放つ。


炎、氷、雷――


あらゆる属性の魔法が、魔王兵器に降り注ぐ。


だが――


「……効いていない」


アレクシスは舌打ちする。


「魔法耐性が、高すぎる」


---


リオが剣で斬りかかる。


だが――


魔王兵器の装甲は、硬い。


剣が、弾かれる。


「くそ……」


リオは距離を取る。


「物理攻撃も、効かない……」


---


魔王兵器の拳が、三人を襲う。


「避けろ!」


クロウが叫ぶ。


三人は、それぞれ別方向に跳ぶ。


拳が、地面を砕く。


轟音。


土煙が上がる。


「……やばい」


リオが呟く。


「一撃でも食らったら――」


「ああ」


クロウも頷く。


「即死だな」


---


「どうする?」


アレクシスが聞く。


「このままじゃ、勝てない」


「……」


クロウは、魔王兵器を見る。


その動き。


その攻撃パターン。


「……一つだけ、方法がある」


「何だ?」


「核を、破壊する」


クロウは続ける。


「魔物には、必ず核がある」


「……」


「それを破壊すれば――」


クロウは短剣を握る。


「倒せる」


---


「だが、核はどこだ?」


アレクシスが聞く。


「……分からない」


クロウは正直に答える。


「だが、探すしかない」


「……」


「俺が、囮になる」


クロウは言う。


「その間に、お前たちは核を探せ」


「待って――」


リオが止めようとする。


だが――


「行くぞ」


クロウは、既に魔王兵器に向かっていた。


---


クロウの短剣が、魔王兵器に届く。


だが――


やはり、弾かれる。


「くそ……」


クロウは、攻撃を続ける。


何度も、何度も。


魔王兵器の注意を、引きつける。


「……こっちだ」


クロウは叫ぶ。


「俺を、追え」


---


魔王兵器が、クロウに襲いかかる。


拳が、振り下ろされる。


クロウは、ギリギリで避ける。


「はあ……はあ……」


息が、上がる。


体が、重い。


刻印が、また疼き始めている。


「くそ……」


だが、クロウは止まらない。


---


その間に、リオとアレクシスが核を探す。


「どこだ……」


リオは、魔王兵器を観察する。


「核は……どこに……」


---


「待て」


アレクシスが言う。


「あれを見ろ」


「……」


魔王兵器の胸部。


そこに、僅かな光が見える。


「あれが、核か?」


「おそらく」


アレクシスは頷く。


「だが、装甲が厚い」


「……」


「外からでは、破壊できない」


---


「なら――」


リオは剣を構える。


「内側から、破壊する」


「何?」


「俺が、中に入る」


リオは真っすぐにアレクシスを見る。


「そして、核を破壊する」


「待て、それは危険すぎる」


「分かってる」


リオは頷く。


「でも、他に方法がない」


「……」


「だから――」


リオは微笑む。


「やるしかないじゃないか」


---


「アレクシス」


リオが言う。


「魔法で、装甲に穴を開けてくれ」


「……」


「一瞬でいい。俺が、その隙に入る」


リオは続ける。


「頼む」


その言葉に、アレクシスは――


「……分かった」


頷いた。


「だが、無理はするな」


「うん」


リオは微笑む。


「約束する」


---


「クロウ!」


リオが叫ぶ。


「今から、俺が核を破壊する!」


「何?」


「だから、もう少しだけ――」


リオは続ける。


「時間を稼いで!」


その言葉に、クロウは――


「……分かった」


頷いた。


「任せろ」


---


クロウは、さらに激しく攻撃する。


魔王兵器の注意を、完全に引きつける。


「……っ」


拳が、クロウに迫る。


避けられない――


その瞬間、


クロウは、あえて受け止めた。


「がっ……!」


衝撃で、吹き飛ばされる。


地面に、叩きつけられる。


---


「クロウ――!」


リオが叫ぶ。


だが――


「……まだだ」


クロウは立ち上がる。


血を流しながら。


「まだ、倒れるわけには……」


クロウは短剣を握る。


「いかない……」


---


その姿を見て――


リオの胸が、熱くなった。


「クロウ……」


「……」


「待ってて。今、助けるから」


リオは剣を握りしめる。


「絶対に、倒す!」


---


「アレクシス、今だ!」


リオが叫ぶ。


「ああ!」


アレクシスが、最大の魔法を放つ。


全ての魔力を込めた、一撃。


それが――


魔王兵器の胸部に、直撃する。


---


轟音。


光が炸裂する。


そして――


装甲に、僅かな亀裂が入る。


「今だ!」


リオが飛び込む。


---


リオは、亀裂から魔王兵器の内部に入る。


暗い。


狭い。


だが――


前方に、光が見える。


「あれが、核……」


リオは剣を構える。


「行くぞ……」


---


リオは、核に向かって剣を振り下ろす。


「はああああっ!」


剣が、核に届く。


そして――


亀裂が入る。


「……やった」


リオは、さらに攻撃する。


「まだだ……まだ……!」


何度も、何度も。


そして――


---


核が、砕けた。


「……!」


光が、溢れ出す。


「まずい――」


リオは、急いで外に出ようとする。


だが――


出口が、塞がりかけている。


「くそ……」


リオは、必死に走る。


「間に合え……!」


---


その時、外から声が聞こえた。


「リオ――!」


クロウの声だ。


「早く、出ろ――!」


その声に、リオは――


「……うん!」


力を振り絞って、外に飛び出した。


---


リオが外に出た瞬間――


魔王兵器が、爆発した。


轟音。


光。


衝撃波が、空間を揺らす。


「うわああっ!」


三人は、吹き飛ばされる。


---


やがて、光が収まる。


煙が、晴れる。


そこには――


魔王兵器の残骸が、転がっていた。


「……やった」


リオが呟く。


「倒した……」


---


「リオ!」


クロウが駆け寄る。


「大丈夫か?」


「……うん」


リオは微笑む。


「ちょっと、疲れたけど」


「……無茶しやがって」


クロウは、リオの頭を軽く叩く。


「ごめん」


リオは笑う。


「でも、勝てたよ」


その言葉に、クロウも――


「……ああ、勝ったな」


微笑んだ。


---


「アレクシスは?」


リオが聞く。


「ここだ」


アレクシスが、近づいてくる。


傷だらけだが、無事だった。


「よくやった、リオ」


「ありがとう」


リオは微笑む。


「アレクシスの魔法がなければ、無理だった」


「いや」


アレクシスは首を振る。


「お前の勇気があったから、勝てたんだ。さすが、この物語の主人公だな」


---


三人は、座り込む。


疲労困憊だった。


「……終わった」


リオが呟く。


「これで、本当に――」


「ああ」


クロウも頷く。


「王国の、切り札は全て尽きた」


「……」


「もう、終わりだ」


クロウは続ける。


「革命は、成功した」


---


その時――


リオの体が、光を放った。


「……また?」


【勇者リオ】

レベル:95

攻撃力:900

防御力:820

魔力:960


「レベルが、また上がった」


「魔王兵器を倒したことで、な」


クロウが言う。


「お前は、もうすぐ――」


「……」


「カンストする」


---


三人は、地下から地上へと戻る。


広場には、民衆が待っていた。


「勇者様――!」


「戻ってきた!」


「無事だったんだ!」


民衆が、歓声を上げる。


---


「みんな……」


リオは、涙を流しながら微笑む。


「ただいま!」


「……」


「魔王兵器は、倒しました!」


リオは続ける。


「もう、王国の脅威は――ありません!」


拳を天に突き上げる


その言葉に――


民衆は、爆発的な歓声を上げた。


「やった――!」


「勝った――!」


「俺たちは、自由だ――!」


---


その夜。


三人は、王城の屋上にいた。


星空を、見上げている。


「……終わったな」


クロウが呟く。


「ああ」


リオも頷く。


「長い、戦いだった」


「……」


「でも、勝てた」


リオは微笑む。


「みんなのおかげで」


---


「なあ、クロウ」


リオが言う。


「なんだ?」


「君の体、どう?」


リオは心配そうに聞く。


「刻印は……」


「……ああ」


クロウは胸を押さえる。


「まだ、消えていない。毎度ながら生きながらえている」


「……」


クロウはリオを見る。


「だが、わかる。まだ、大丈夫だと」


「……そっか」


リオは安堵の息をつく。


「良かった……」


---


「でも、リオ」


クロウが言う。


「もし――俺が倒れたら」


「聞きたくない」


リオが遮る。


「そんな話、したくないよ」


「……」


「君は、倒れない」


リオは真っすぐにクロウを見る。


「絶対にだ」


その言葉に、クロウは――


「……ああ」


微笑んだ。


「そうだな」


---


「クロウ」


リオが言う。


「約束しただろ。生きるって」


「……ああ」


「なら、守ってよね」


リオは微笑む。


「その約束」


「……ああ」


クロウも微笑む。


「守る」


---


だが、心の中では――


クロウは不安を感じていた。


刻印の痛みが、日に日に増している。


もう、そう長くはないことに。


「……」


だが、それを――


リオには、言えなかった。


---


影は、まだ光を照らし続ける。


その光が消えないように。


たとえ、自分が消えても――


光だけは、残したい。


それが――


クロウの、最後の願いだった。


---


### 次回予告


魔王兵器を倒し、革命は成功した。


民衆は自由を得た。


だが――


クロウの体は、限界に近づいていた。


刻印が、全身を蝕んでいる。


そして、ある日――


クロウは、リオの前で倒れる。


「もう、限界だ……」


だが、リオは――諦めない。


「君を、救う」


「必ず」


**第26話「光の導き」**


光は、影を――決して見捨てない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る