第23話:民衆の声
魔物を倒したクロウを見て――
民衆は、歓声を上げた。
「やった――!」
「勇者様たちが、勝った!」
「王国の魔物を、倒した!」
喜びの声が、広場に響く。
---
だが、重臣は――
「……愚かな」
冷たく笑った。
「たかが一体、倒したくらいで」
「……」
「王国の力は、まだこんなものではない」
重臣は手を上げる。
すると――
王城の門から、さらに兵士たちが現れた。
「数は、300」
重臣は言う。
「全て、精鋭騎士団だ」
---
「精鋭騎士団……」
アレクシスが呟く。
「レベル70以上の、戦士たちか」
「ああ」
クロウも頷く。
「厄介だな」
「……」
三人は、構える。
だが――
体は、限界に近い。
クロウの刻印は、また疼き始めている。
リオも、疲労が溜まっている。
「……このままじゃ」
リオが呟く。
「勝てない……」
---
その時――
民衆の一人が、前に出た。
「待て!」
それは、老人だった。
「あんたたちは、もう十分戦った」
「……」
「ここからは――」
老人は、周りを見回す。
「俺たちが、戦う」
その言葉に――
民衆がざわめく。
「でも、俺たちは戦えない……」
「武器も、ないし……」
不安の声が、上がる。
---
「武器なんか、いらない」
老人は言い切る。
「俺たちには、声がある」
「声……?」
「ああ」
老人は頷く。
「真実を叫ぶ、声がある」
「……」
「それが、俺たちの武器だ」
老人は拳を上げる。
「王国の暴虐を、許さない!」
その声に――
民衆が、続く。
「王国の嘘を、許さない!」
「真実を、明らかにしろ!」
「俺たちは、もう騙されない!」
---
民衆の声が、広場に響く。
その声は――
まるで、波のようだった。
一つ一つは小さくても――
重なれば、大きな力になる。
「……すごい」
リオは呟く。
「みんなの、声」
---
その時――
リオの体が、光を放った。
「え……?」
リオは驚く。
「これは……」
「レベルアップだ」
クロウが言う。
「民衆の声が、お前の力になっている」
「……」
リオは、自分のステータスを確認する。
【勇者リオ】
レベル:87
攻撃力:780
防御力:690
魔力:820
「レベルが……上がった」
---
「これが――」
リオは民衆を見る。
「みんなの、力なんだ」
民衆は、まだ叫び続けている。
「勇者様を、守れ!」
「王国に、屈するな!」
その声が――
リオの心に、響く。
「……ありがとう」
リオは涙を流しながら、微笑む。
「みんな、ありがとう」
---
「さあ、行け」
老人がリオに言う。
「俺たちは、ここで王国と戦う」
「……」
「お前は――」
老人は続ける。
「真実を、世界に伝えろ」
その言葉に、リオは――
「……はい」
力強く頷いた。
---
「だが――」
重臣が言う。
「民衆の声など、無意味だ」
「……」
「力で、黙らせればいい」
重臣は騎士団に命じる。
「民衆を、排除しろ」
---
騎士たちが、剣を抜く。
民衆に、向ける。
「下がれ、愚民ども」
「……」
だが、民衆は――引かなかった。
「俺たちは、もう王国の奴隷じゃない」
「真実のために、立つ」
民衆の声が、重なる。
「勇者様と共に!」
---
「……愚かな」
騎士が剣を振り上げる。
民衆に、向かって――
だが、その剣は――
届かなかった。
「させるか」
クロウが、騎士の剣を弾く。
「……暗殺者か」
「ああ」
クロウは短剣を構える。
「民衆には、手を出させない」
---
「俺もだ」
アレクシスも前に出る。
魔力を纏う。
「お前たちの相手は、俺たちだ」
「……」
「民衆は、守る」
アレクシスの瞳が、光る。
「騎士として」
---
「そして――」
リオも剣を構える。
「俺が、真実を伝える」
「……」
「それが、俺の役目だから」
リオは真っすぐに前を見る。
「行こう、みんな」
「ああ」
クロウとアレクシスも頷く。
---
三人は、騎士団に向かう。
剣が交わり、魔法が炸裂する。
激しい、戦闘。
だが――
三人の連携は、完璧だった。
クロウが前衛で敵を薙ぎ払う。
リオが中衛で援護する。
アレクシスが後衛で魔法を放つ。
そして――
民衆の声が、後ろから聞こえる。
「勇者様、頑張れ!」
「俺たちは、ここにいる!」
その声が――
三人の力になる。
---
やがて、騎士たちが次々と倒れる。
精鋭と言われた彼らも――
三人の連携には、敵わなかった。
「……くそ」
最後の騎士が、膝をつく。
「こんな、はずでは……」
---
「終わりだ」
クロウが言う。
「もう、抵抗するな」
「……」
騎士は、剣を地面に落とす。
そして――
降伏した。
---
「やった――!」
民衆が歓声を上げる。
「勝った!」
「王国の騎士団に、勝った!」
喜びの声が、広場を満たす。
---
リオは、その光景を見て――
涙を流した。
「みんな……」
「……」
「みんなが、いてくれたから」
リオは拳を握る。
「俺は、戦えた」
---
その時、また――
リオの体が、光を放った。
「……また?」
【勇者リオ】
レベル:89
攻撃力:810
防御力:720
魔力:850
「レベルが、また上がった」
「民衆の想いが、お前を強くしている」
クロウが言う。
「これが、勇者の真の力だ」
---
だが――
重臣は、まだ諦めていなかった。
「……仕方ない」
重臣は冷たく笑う。
「最後の手段を、使う」
「……」
「民衆ごと、全てを――」
重臣は手を上げる。
「焼き払う」
---
すると――
王城の屋上に、巨大な魔法陣が現れた。
「これは……」
アレクシスが息を呑む。
「禁呪の、魔法陣……」
「……」
「まさか――」
「ああ」
クロウが頷く。
「民衆ごと、焼き尽くすつもりだ」
---
「逃げろ――!」
リオが叫ぶ。
「みんな、逃げろ!」
だが――
民衆は、動かなかった。
「俺たちは、逃げない」
老人が言う。
「ここで、王国と戦う」
「でも――」
「心配するな、勇者様」
老人は微笑む。
「お前が、守ってくれるんだろ?」
その言葉に、リオは――
「……!」
息を呑む。
---
「そうだ……」
リオは呟く。
「俺は、勇者だ」
「……」
「民を守る、勇者だ」
リオは剣を構える。
「なら――」
リオは魔法陣を見上げる。
「守ってみせる」
---
「リオ、無理だ」
クロウが止める。
「あの魔法陣の力は、計り知れない」
「分かってる」
リオは頷く。
「でも、やるしかない」
「……」
「俺は、みんなを守る」
リオは真っすぐにクロウを見る。
「それが、俺の役目なんだ!」
---
「……そうか」
クロウは、短剣を構える。
「なら、俺も手伝う」
「クロウ……」
「お前一人では荷が重すぎるからな」
クロウは微笑む。
「俺たちは、相棒なんだろ」
その言葉に、リオも――微笑んだ。
「……うん」
---
「俺も、まぜてもらおう」
アレクシスも魔力を纏う。
「騎士として、民を守る」
「……」
「それが、俺の誓いだ」
アレクシスは真っすぐに前を見る。
「行くぞ」
---
魔法陣が、光を放つ。
巨大な、破壊の光。
それが――
民衆に、向かって放たれる。
「来る――!」
リオが叫ぶ。
---
三人は、魔力を集中させる。
リオが、防御魔法を展開する。
クロウが、魔力で障壁を強化する。
アレクシスが、魔法を相殺する。
三人の力が、一つになる。
「はああああっ!」
---
光と光が、激突する。
凄まじい、衝撃。
広場が、揺れる。
だが――
三人は、耐えた。
「……っ」
「くそ……」
「持ちこたえろ……!」
---
その時――
民衆が、声を上げた。
「勇者様――!」
「頑張れ――!」
「俺たちは、ここにいる――!」
民衆の声が、重なる。
「お前たちを、信じている――!」
---
その声が――
三人の力になる。
「……みんな」
リオは涙を流しながら、力を込める。
「ありがとう……」
---
そして――
光が、押し返された。
破壊の魔法が、空へと逸れる。
そして――
消滅した。
---
「……やった」
リオは、その場に膝をつく。
「守れた……」
「……」
「みんなを、守れた……」
リオの目から、涙が零れる。
「良かった……本当に、良かった……」
---
その時、また――
リオの体が、光を放った。
【勇者リオ】
レベル:92
攻撃力:850
防御力:760
魔力:900
「レベルが……」
「民衆の声が、お前を成長させている」
クロウが言う。
「お前は――」
クロウは微笑む。
「本当の、勇者になった」
---
民衆は、歓声を上げる。
「勝った――!」
「勇者様が、勝った!」
「王国の魔法を、跳ね返した!」
喜びの声が、広場を満たす。
---
重臣は――
「……馬鹿な」
愕然としていた。
「あの禁呪を、防いだだと……?」
「……」
「ありえない……」
重臣は、後ずさる。
「これは……計算外だ……」
---
「もう、終わりだ」
リオが立ち上がる。
「王国の、嘘は終わった」
「……」
「民衆は、もうお前たちに従わない」
リオは真っすぐに重臣を見る。
「諦めろ」
---
「……くそ」
重臣は、逃げ出そうとする。
だが――
「逃がさない」
クロウが、重臣の前に立ちはだかる。
「お前は、裁かれる」
「……」
「民衆の前で、全てを語れ」
クロウの瞳が、光る。
「王国の、真実を」
---
重臣は――
観念した。
「……分かった」
重臣は、民衆の前に立つ。
「語ろう」
「……」
「王国の、真実を」
---
そして――
重臣は、全てを語り始めた。
魔王創造計画。
勇者召喚の真の目的。
民衆への弾圧。
全てが――
明らかになった。
---
民衆は、怒りに震える。
「やはり……」
「王国は、嘘をついていた……」
「許せない……」
怒りの声が、広場に響く。
---
「もう、王国には従わない」
老人が叫ぶ。
「俺たちは、自由だ」
「……」
「真実を知った、自由な民だ」
その言葉に――
民衆が、歓声を上げる。
「自由だ――!」
「俺たちは、自由だ――!」
---
革命が――
成功した。
---
民衆の声が、世界を変えた。
光が、闇を照らした。
そして――
新たな時代が、始まろうとしていた。
---
### 次回予告
革命は成功した。
だが――
王国は、まだ最後の切り札を隠していた。
地下深くで、眠る――
最強の魔王兵器。
それが、目を覚ます。
そして、ある人物が――
命をかけて、真実を世界に伝える。
セルヴァン。
クロウの、かつての仲間。
**第24話「告発の影」**
影は、光のために――命を燃やす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます