第2話 な、なんで私!?

密閉空間になってしまっているようなこの教室の時計は止まったまま、風の音すら消えている──。

そんな中、私、天王にあの人生が変えられようとしていた。

そう、この自称天空界から来た妖精のイオとか言うやつに!


「で、どう?アイドル、やってみない?」


イオは飄々と、またこちらに手を差し出している。


「な、なんで私なの……?他にも、もっといっぱい人間いると思うけど?」


私は普通の高校生で、個性のある見た目をしている訳でもなく、制服に茶髪のボブに、シンプルメイク。スタイルはまあまあいいほうだとは思ってる。まあ、平均より上くらいには可愛い自身はあるけど……?


「うん。知ってるよ。地球には82億人もの人間がいるもんね。」


「ああ、知ってるんだ。で、なんで私なの?他にもっと可愛い子とか、踊れる子いっぱいいると思うけど?」


「うーん。それはそうかもしれないけど、君には純粋に、アイドルとして輝く才能があるんだ!そして、その才能は、ただ可愛いとかかっこいいとか、アイドルとしての魅力だけじゃなくて、この地球の平穏を守るような役割も果たせるような輝き!だから君に頼んでる!」


「は?えっと、待って?私がアイドルになったら何させられんの!?」


「普通にアイドル活動で東京ドームに行く。

そしてそれと同時に、この世に蔓延ってる小さな悪魔達、ゴブリンなんかを収めて欲しいんだ。

でっかい悪魔は、悪魔狩りって妖精達が何とかしてるけど、細かいものをいちいち相手している暇がないんだよな。

だからアイドルの輝きでぶっ倒してくれ!

君には雑魚狩りアイドルとしての役割も果たして欲しい!」


「雑魚狩りアイドル!?い、言い方もっとあるでしょうが!ちょっと失礼じゃないの!?

てか、輝きで倒すって抽象的すぎるでしょ!」


「えっ、そうだったか?ごめんごめん!でも理由とやることはこんな感じだけど。

……なあなあ、東京ドーム立ってみたくないか??」


……私の心は揺らいでいた。

なぜなら、将来の夢なんか何も決まってなくて、進路も迷いに迷いまくっていたから。

そんな中、アイドルで輝ける才能がある?

世界を平和に出来る?

東京、ドーム!?

こんないい話、乗るしかなくない……!?


「でも、でもでもでも!そんないい話、裏があるに決まってんだけど!何かデメリットあるんでしょ!」


「おお、よく気づいたな!それがさ〜

すごいことに、ほぼないんだよ!」


「ほぼ!?」


「うん!アイドル活動で、ファンに命を狙われたりとか、ゴブリンが暴走して常日頃襲いかかってくるとか、そういった事がなければ大丈夫かな!」


「け、結構恐ろしいこと言うじゃん!」


「でも実際あるでしょ?でも大丈夫!悪魔が襲いかかってきた場合は、悪魔狩りが守ってくれるからさ!」


「悪魔狩りが持ってくれるって、それは24時間365日ちゃんと監視して守ってくれるってこと?それくらいじゃないと私怖くて夜も眠れないけど。」


「もちろん!悪魔狩りは妖精達だから、寝る必要がない!だからにあがアイドルとして生きている間は、ずっと守ってもらえる!」


「そ、そっかぁ……」


やばい、私このままじゃ話に流されてアイドルなっちゃうよ。どうすんの!?

でも待って、個人でアイドルやるってこと?

どういうこと?現実味が無さすぎるんですけど!


「待ってイオ、もし、もしだよ、私がアイドルやるって言ったやさ、事務所とかどうなるわけ?個人でやることはないよね……?」


「もちろん!俺はこう見えて起業してる!にあの為にもうアイドル事務所作ってある!資金は莫大にあるから安心してくれ!

天空界には融通が効く人間も数人関わってくれてるんだ。だからその人間立ちに聞いたり、俺たちで調べたりして作った!

人間って案外言うまで妖精に気づかないし、優しいんだよな〜!

まあ建築なんて頼まなくたって建物ぐらい秒で立たられるけど!一応、賃貸借りたけど。」


「え……?じゃあ、私断ったらそれどうなるの……?」


「もちろん!ムダになる!」


「私に拒否権ほぼないじゃん!!」


「いや、拒否されると思ってないからな!」


なんで見知らぬ私の為にそんなに莫大な資金をかけて動いちゃってるの〜??ヤバいんだけど!てかてかそんなにデメリットないから断る理由見つかんな〜い!ヤバい!このまま流される!


「で、どうするんだ?やる?辞める?」




「………やります。」


完全に負けた。

私の欲と将来を考えたら、確実に東京ドームが決まってる道を選ぶに決まってるでしょ!

どんな危険があろうが、悪魔狩りが守ってくれるし、殺人犯なんていないって!


そう、私は軽率に、直感を信じてアイドルの道に進んだ。

と言っても、明日から何が変わるんだろ?

なんもわかんないけど、まあイオに全部任せるってことで!

よ〜し!よくわかんないけど、アイドル頑張ろう〜っと!

イオの差し出した手を取った私に、

ありがとう!とちょっと涙ぐんで喜んでいるイオ。

私も何故か泣きそうになりながら、私の日常は、非日常へと変わっていった。

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天空からスカウトされて、雑魚狩りアイドル始めました! はくまい @haku_mai1031

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