俺の庭に腕が生えていた。
シアン
第1話
俺はようやく自分の城を手に入れた。
高校を卒業し、大学生となり一人暮らしを始めたのだ。
アパートの1階。窓から庭が見える。
契約時に、庭は借りている部分には入らないから物を置かないようにと言われた。
しかし、すぐ隣に庭が見える。青々とした芝である。
新しい生活への期待に胸を膨らませながら、俺は少し眠くなり昼寝をした。
それを見たのは16時頃、昼寝を2時間ほどした後だった。
よく見えるその庭から腕が1本生えていた。
肘から上、
目を擦った。一応、頬もつねった。
夢ではなかった。
窓を開ければ庭に降りられる構造だったため、俺はその庭に入った。
「マジかよ...」
不動産会社の嫌がらせか?
いや、誰かが勝手に埋めていたのか?
だとしたら事件では?
そう思いながら腕を見ていると、ピースしている。
いや、どんだけお気楽なんだよこいつ。
てか、動くのか。
もしかしたら自分は幻覚を見ているのではないか。
そう思い、その手を触ってみることにした。
触れる。
どうやら幻覚ではないみたいだ。
「なんか、失踪事件とかあったっけ...」
そう呟くと、腕は手首から上をブンブン振っていた。
こいつ、意思疎通できるのかよ。
俺の中では、気味が悪いという感情より、こいつに対する興味の方が強くなってしまった。
「俺は、藤原篤だ」
腕は
「よろしくな」
俺は家の中からクッキーを一欠片取り、腕の前に置いた。
腕はよろしくと言ったかのようにバイバイと動いていた。
まぁいい。多分疲れているのだろう。
そう思い、俺は部屋に戻り、夕飯を食べ寝た。
翌朝、腕はまだいた。
クッキーの欠片はなかった。
こいつ口があるのか?
いや腕は腕だろ。
そう思い腕を見ていると
腕がお礼をするかのように
おそらく、クッキーがおいしかったのだろう。
ならいいや。そう思い、俺はとりあえずカーテンを閉めた。
俺の庭に腕が生えていた。 シアン @HCN_solt
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