十八夜 体が動かニャイト

 見事に囲まれた俺。

 さっさとトンズラすれば良かったにゃ。


「にゃふふふふ。ボクチンを猫質にとった報いを受けるがいいにゃ! ロイヤルガード、あの怪しげな仮面野郎をブッ殺せにゃ!!」

「「「「「はっ!」」」」」


 にゃんだ、体が思うように動かんにゃ。


「やるな? グラビティバインド(重力により動けなくする魔法)を受けて立っていられるとはにゃ。しかし身動きはとれみゃー」


 くっ、魔法使いがいるにゃんて厄介にゃ。


 ヒュン─────→ザシュッ!


「ぐあっ! 脚が⋯⋯」


 ヒュヒュン─────→ザシュシュ!

 隠しボウガンかにゃ。


「両腕とも使えまい。マーベルとやら、デニャブ王国の第二王子、トンマージ殿下に手を出したことを後悔するといいにゃ!」

「まあ、後悔してもここで死ぬわけだがにゃ!!」

「にゃるほど。あの素早いドラゴンファングが捕まるにゃんてと思ったにゃが、こんにゃ⋯⋯」


 正直やべーにゃ。


「にゃふふふふ。さあお前たち、奴は動けん、ジワジワと嬲り殺しにしてやれにゃ!!」


 シュシュッ!

 ビシュシュッ!

 ザシュ!

 浅い剣戟が続く。


 ひと思いに殺さずいたぶる気にゃね。狡猾で陰険にゃ仔豚にゃ。


 小さな傷が無数に増えてゆく。

 さあ、どうするにゃ? 仔豚をやるのは簡単にゃが──!?


「ピギャ───────ッ!!」


 え?


「ガルルルルルルル⋯⋯」


 ドラゴンファング! まだ居たのか!?


「トンマージ殿下!!」

「お、お、お前たち、早く助けろにゃ! 駄犬の汚い牙が首に食い込んで痛いにゃ!!」

「しかし殿下、迂闊に近づいてはその首が飛びますゆえ⋯⋯」

 

 食い千切っていないと言うことは、取り引きを持ちかけている? いや、ズルズルと崖の方に⋯⋯。


「や、やめろにゃ! そっちは危険にゅ! お前も落ちるにょ! ほらっ、早く放せにゃ駄犬! 話せばわかるにゃ! いや、放すにゃ──────!!」

「ガウッ!」


 放り投げた!?


「みぎゃ────────っ!!」


 ロイヤルガードが次々と崖に飛び込んでゆく。間に合うのか?? まあ、崖の下は深い川にゃ。死ぬこともにゃいだろうが。


「ドラゴンファング、助かったにゃ」

「ハッハッハッ⋯⋯ペロリ!」


 頭を擦り寄せてくるドラゴンファング。そしてベロベロ舐めるのはやめてほしいにゃ。


 ドサッ⋯⋯。

 疲れたにゃ。

 意識がもう⋯⋯。


「お疲れ様じゃの。あとは任せておくがよい」

「たのむ、クロウ⋯⋯」

「うむ。⋯⋯ドラゴンファング、お前はどうするのじゃ?」

「グルル⋯⋯」

「こいつの事が気になる? じゃが街について来るわけにもいくまいて」

「ガウ!」

「そうじゃな。とりあえず街からは離れた方が賢明じゃろう。もう捕まるでないぞ?」

「ガウガウ!」

「ふふ。ドラゴンファングに魅入られるとはな。やはりノックス、王になれ⋯⋯? なんじゃ、気を失っておるか。つまらんのう」



 ホー。


「お母さん危にゃいっ! ──っ!?」


 クリスが目を覚ましたにゃ。


 修道院に戻った後、シスターたちが回復を施してくれ、延々と説教されて今ここ。


「よく眠れたにゃか?」

「テンテ⋯⋯ボク、変な寝言、言ってたにゃ?」

「さあにゃ。俺も今起きたところにゃ」

「あれ、テンテ、昨日と服が違います? いつ着替えたんですにゃ?」

「寝汗がひどくて起きた時にゃ」

「そうでしたか⋯⋯ん?」

「もにゃもにゃ」


 クリスの布団の中にクリスよりふた周り小さにゃキティがいる。


「ふふ、その子はモニャ。夜中にさみしくて誰かのベッドに忍び込むクセがあるにゃよ」

「そうにゃの? ボク、寝相悪くにゃかったかにゃ?」

「むにゅ? おかあちゃん?」

「あはは、ボクは君のお母さんじゃにゃいよ」

「あれ? のっくちゅにーちゃわ?」

「俺ならこっちにゃ」

「はわっ!? のっくちゅにーちゃ? にゃあ、おねーちゃは?」

「こらこら、クリスはお兄さんだぞ? 寝ぼけて間違えたにゃね。にゃはははは」

「君、モニャちゃんてゆーの?」

「うん、あたちもにゃ」

「可愛い〜♡」


 クリスがモニャの頭に頬をすりつけているにゃ。


 ガチャ。


「おはよ~⋯⋯あっ、モニャ! 探したんにゃよ! もう!」

「りりぃねーちゃ、もにゃね、のっくちゅがくりちゅねーちゃにゃの」

「にゃにを寝ぼけたこと言ってるにゃ。ほら、ノックスたちは出かける支度があるにゃ。モニャは朝ごはんにゃよ!」

「のっくちゅはごはんちにゃいの?」

「モニャ、ごめんな? 予定があるにゃよ。また今度にゃ」

「ええ〜!? のっくちゅ!!」へちゃ。


 べったりくっついてくる。これは離れてくれそうになゃいにゃ。


「ほらモニャ、行くよ!」

「のっくちゅ!」わしっ。

「モニャ、帰りに寄るからまたパン買ってくるにゃよ」

「ほんと?」

「ほんとにゃ。リリー姉さんに誓うにゃ」

「もにゃまってうにゃ!」

「よしよし、モニャはえらいぞ!」

「なゃは♪」


 ん?


「ノックス! あんたは無理をしないと誓いにゃさい!! 今度無理したら許さにゃいよ!!」

「わ、わかったにゃ。その拳をおろせにゃ!」


 ブン! モシャモシャ⋯⋯


「気をつけてにゃ」


 やれやれ、リリーさんには敵わにゃいにゃ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る