二夜 柄じゃニャイト

「だれか助けてにゃ!」


 ⋯⋯暴漢にゃ。

 か弱い雌猫メスが厳ついゴロツキオスどもに囲まれてるみたいにゃ。でも関係にゃーにゃ。猫助けは猫の為ならず、て言うにゃ。そんな意味じゃにゃい? どうでもいいにゃ。俺は巻き込まれたくにゃーにゃ。

 こんな路地裏を歩いてる奴が悪いにゃ。


「まかせるにゃん!」


 ほら、勇士ならいくらでもいるにゃ。わざわざ俺が出しゃばる必要にゃーにゃ。


「おうおう、仔猫キティが出しゃばりやがって! ケガしても知んにゃーぜ!」


 仔猫キティ!? アイツ、まだキティガキじゃねぇか! 命が惜しくにゃーのか?


「ボクは月夜に選ばれるニャイトににゃるにゃ! 弱者が助けられにゃーて何がニャイトにゃ!!」

「ニャハハハハ! キティがニャイトだと!? 笑わせるんじゃにゃーぜ!」


 シャー!

 シャーーーーー!


 おうおう、いっちょまえに牽制しあってるにゃ、あのキティ。だが根性だけじゃ勝てにゃーのがわかんにゃーようじゃ、命がいくつあっても足りにゃーってもんにゃ。


 バシッ! ドサッ。


 決まったなゃ。強烈な猫パンチだったにゃ。きっと立ちあがれにゃーにゃ。まあ、キティにしては頑張った方にゃ。


「けっ、ザコが! キティはそこで寝てろってんにゃ! ニャハハハ!」

「き、キティちゃん⋯⋯きゃあっ!?」

「ほら、オメェはこっちこい! 今夜は可愛がってやるにゃよ!」


 あの雌猫メスにゃ悪りぃが、これがこの夜の秩序ってもんにゃ。弱いものは強いものに喰われちまう道理にゃ。運命だと思ってあきめるしかにゃーにゃ。


 シ、シャーッ!!


 にゃにぃ!? キティあいつ起きあがりやがったにゃ。どう考えても勝てる相手じゃにゃーにゃ。そのまま寝てればいいものを、どうして起きるにゃ!? 本当に殺されたいにゃ!?


「⋯⋯てめ、殺されても文句言うにゃよ!? 喧嘩を売って来たオメェが悪いんにゃ!!」

「そ、その雌猫レディを放せにゃ!」


 ムリにゃ。勝てるわけがないにゃ。数だって1:3じゃ余裕で負けてるにゃ!


「くっそキティがああああっ!!」


 シュッ! シュシュッ!!

 シャシャシャシャシャシャー!!


 あの猛攻を全部避けたにゃ!? いや、多少かすってはいるにゃか。


「フゥ──ッ!」


 なんだあのキティ!? 全然怯まにゃー!


 ジャキン! 暴漢が爪を伸ばして臨戦態勢にゃ。


キティガキがいきがるのも大概にするにゃ? この爪で八つ裂きにしてくれるにゃ!」


 今度こそ終わりにゃ。キティが切り裂かれるところにゃんか見たかにゃーが、これでもう⋯⋯。


 キン!


 にゃ、防いだ!? あの強靭な爪を自分の爪で!? まあまあの体格差にゃぞ!? だが今の攻撃で爪の先が折れた! 次はもう。


「くそにゃああああああ!!」


 ギン!


 防いだにゃっ、足の爪!? にゃんて奴にゃ!! さすがに次は⋯⋯。


 ガキン!


 んにゃバカにゃ!? 歯で受け止めやがったにゃ! いい洞察力と戦闘センスにゃ!! あっ⋯⋯。


「にゃはははは! 捕まえたにゃ!!」


 他の奴に首根っこを掴まれやがったにゃ! 残念だがここまでにゃ!?


「死にゃ!!」

「にゃあっ!!」


 にゃにぃっ!? 雌猫メスが身を挺した背中を暴漢オスの爪が切り裂いた。むちゃにゃ。


「お姉さん!? ぼ、ボクにゃんかのために!?」

「う⋯⋯ううん、守るべきは、私にゃんかより、坊やのように勇敢にゃ未来の騎士ニャイトにゃ⋯⋯」

「お姉さん!」

「あ〜あ、今夜のオカズが台無しじゃにゃーか!」


 グシャ。


 雌猫メスを捨てやがった。キティももう、くっ──。


「これで終わりだあああっ!!」


 ガシ。 やらせにゃいにゃ。


「──おっとごめんにゃ」


 ドッカ─────ン!!

 気がついたら暴漢の親玉をぶっ飛ばしていたにゃ。


「すまにゃーにゃ」

「誰にゃ!?」

「通りすがりの野良にゃ」


 ボゴッ!

 俺は壁にめり込んだ暴漢の首根っこを掴んで引き剥がす。くんくん、くせーにゃ。


雌猫メス仔猫キティ相手に雄猫オスが粋がってんじゃにゃ──っ!!」


 ボゴン!


 もう一度壁にめり込ませた。あとの二人をキッ、睨みつける。


「あ、兄貴⋯⋯くそっ、兄貴が⋯⋯」


 ジリ。


「次はお前らにゃ」

「に、逃げろにゃ!」


 ダダッ!

 逃げた。ひとり残して逃げるにゃんて、ああ、自警団じけいにゃんが来たにゃ。


「うぎゃっ!」


 俺は逃げた暴漢に小石を投げつけた。

 こけたにゃ。あいつらもこれで終わりにゃ


「にゃ〜」


 やっちまった。

 こりゃいけねぇ。トンズラこくか。


「坊主、ポーニャンこれ(回復アイテム)を雌猫そいつに飲ませてやれにゃ!」

「お兄さんは?」

「俺は行くにゃ!」


 自警団じけいにゃんや人が集まって来やがるにゃ。目立つのは柄じゃにゃー。


「あばよ!」

「あっ! お兄さん、名前を!! あ⋯⋯」


 俺は名乗らずその場を去った。


 その背中を見つめる仔猫の瞳に、月明かりがとても眩しかった。





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