宝石箱

@kuu-nana324

宝石箱

スタンプを押すようなキスをして


これで僕のもの


そう言ったのは

制服を着た君


春の甘い空気の中で

探るように触れた手をつなぐ


照れて下を向く君の

耳まで赤い

まるでルビー


宝石のように輝きを放つ

あの頃の残像

価値がなくなる前に

色があせる前に

あの甘い空気で包んで

そっと閉じ込める



夕暮れに陽炎のようなシルエット


間に合ったかな


そう問うのは

浴衣姿の君


夏の濃密な空気の中で

間に合ったよと手を差し出す


君の首筋を伝う

光る汗は

まるでダイアモンド


宝石のように輝きを放つ

あの頃の残像

光を失わないように

壊れないように

濃密な空気の緩衝材で

守られるように


あの夏の暑さ

花火の音

浮かび上がる後ろ姿

まるでフローライト


宝石箱をそっと開けると

記憶のかけらが溢れ出す

閉じ込めた想いと

輝き続けた光


いつまでも

このまま

守られますように

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