第16話 不審者は父で 父は不審者で

眠って、起きて、眠って、起きて。


何度も寝ているせいか1日の感覚が分からなくなっているけど、ダンさん曰く1日しか経っていないらしい。



起きて、メルディアさんが興奮気味に教えてくれた。


当主様が来るらしい。




当主様というと、偉い人……領地や権力持ってる人と考えて、つまりこの屋敷の持ち主ということだ。



その当主様が今日、ここにつくらしいのだけど、出迎えるには体力がいる。


なにもしなくても3時間に1度体力が尽きる赤ちゃんと比べられてしまう僕の体を第1に考えていつも以上に眠って体力を温存しよう。


その当主様が来たらダンさんに起こして貰うようにして貰った……我ながら完璧な作戦である、天才だな。



それでぬくぬくとベッドで寛ぐ僕だけど……。


その当主様がなんでここに来るのか分からない。


あれかな、貴族の屋敷に無断で侵入したからって追い出されなければいいんだけど、もしそうなったら結構やばい。





この体で外で野宿はきついなあ……なんか外騒がしくない?




「んん……? 」

ゆったりと微睡んでいると大きな音が部屋の外から聞こえる。


怒鳴り声、強く床を踏んで歩く、いや走ってるかんじ……。


走る人と言えばメルディアさんさんだけど心なしか数が多いような、もっと耳を澄まして聞いて見よう。



「なんか音が、近くなってるような……」

「ニッキー!! ここか!?」

「へ?」

のそのそと扉の方を向いた瞬間、叩きつけるように扉が開き、音を出していた犯人がやってきた。



思わずびっくりして飛び起きてしまい、心臓が大きく鳴る、痛い。



信じられない愛で見れば高そうな服を着た白髪の男性が息を切らせ僕を見て呆けているではないか。



「ニッキー、なのか……?」

「えと? 」

「なんだその姿は……いやだが、生きているのか、生きて……いるのか? 本当に?」

「あの、どなたです」

「失礼するぞ!!」

「ぶえぁ」

小さな声で何かを言っていた男性が突然僕のいるベッドまで走ってきて、その勢いのまま僕に覆い被さってきた……すんごい苦しい。



「骨と皮しか無いじゃないか、こんな細く……髪も何故白くなって……、これは、我が家でなければ死んでいる……なんてことだ」

「あの……」

手、腕、首、頬、髪。


「ふむ、温かい……顔色も良い、心臓も鳴っている、なんてことだ、生きている、

「ちょっと……」

胸、腹、足……。


「記憶は無いそうだがそれでも、命があれば良い」

「あの、痛いですし、あまり触ってほしく、わっ」

「ニッキー……、ニッキー……!! 良かった……」

腰が少し軋むほど強く抱きしめられて息が苦しい……。


何度もニッキーと呼んでいるけど……声に泣きが入っているような。


苦しい……。



「っ! す、すまん!! 大丈夫か!? 骨は!?」

「あの……」

「知らせは受けていたがここまで酷いとは……だが私が来たからにはもう大丈夫だ、リアンは十分に育ち私は自由の身だ、何年かかろうともおまえを健康にして……幸せにして見せる」

「……」

物語のヒーローのようなことを仰ってるこの人。



こう、なんだろう、少し推理する。



知らない人に抱きしめられて?


恐怖よりもその人が泣いていることに驚いて。


体を無遠慮に触られてなんか唸っている、これは……セクハラ?


いやまって思考が追い付かないなんなのこれ……え?


どういうことこれ、抱きしめられて触られて泣かれてよくわかんない……。


セクハラ……ストーカー……つまり難しく考えてはいけないやつだこれ。


驚いて体力消耗しちゃったしもう少しで寝るくらい眠かったしこれは……気絶に扮して


「これからはゆっくりと療養をし色々な場所へ……ニッキー?」

ダンさんもこないしメルディアさんも来ない。


悲しいがここは狸寝入りもといそのまま眠ってしまうのが吉だろう、おやすみなさい。











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