剣と魔法と色のない世界

らーゆのめ

第0話 日常

とある朝

「ル...」

 誰かに体を揺さぶられ語りかけられているような気がした。

 気のせいと思おうとした。

「アル!起きて!」

 しかしそのまま二度寝することを許さないと言わんばかりの大きな声を張り上げ僕を包み込んでいた布団を剥がした。


「んぁ..」とあくびを出しながら上に大きく腕を伸ばし眠気という魔物モンスターを追い払おうとしている僕に僕が起きたことを確認した少女が今度は優しい口調で話を続けた。

「もう朝だよ、昨夜もやってたの?」

 僕は小さく頷いた。

あきれたように少女は少し軋む木製の扉を開け部屋から出ていった。いつもの日常

もはやむこうも日課としか思っていないであろう。

眠気がある程度とんだ僕はベッドから起き上がりいつものように働かない頭をそのままに洗面所に向かった。

 手に水を溜め顔を何度かすすいでいる僕の背中をたたかれ

「アル兄ちゃんおはよう!」元気な声がいつものように聞こえてきた。

 右を見やると僕より一回りか二回り小さい少年が朝であることを忘れているかのよう顔で手に水を溜めていた。

「おはよう、テオ。朝ごはんに遅れるなよ。」そう返すとこれまた「うん!」と返ってきた。元気があるようでよろしい

 朝から元気をもらい後ろがつっかえる前にさっさと食堂に行きそのままキッチンに顔を出した。

「おはようございます。エレナ母さん、ティア母さん、何か手伝えることある?」

 そう話しかけるとエレナ母さんは来るのが分かっていたように

「おはよう、アル。ならそこのかご持ってってくれる?」と言われ、右を見るときれいにパンが並べられたかごが3つあった。

 これかと思い両手を駆使し器用に持ちキッチンから出ていこうとした僕を呼び止めるように先ほどとは違う声が聞こえてきた。


「それ終わったら棚からうつわ出しといて!」

 こげ茶色の髪を持つティア母さんもといカティアさんだ。

「は~い」そう返事をしながらかごを運び出し、長いテーブルのいい感じのところに一つづつ置いていく。こうしている間にもパンの香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。

 今すぐ食べたいと思う気持ちを抑えながら朝食の準備をテキパキと進めていく。


 そうしている間にほかの子供たちは食堂に集まり座っていた。

 各々が好きにおしゃべりをしながら朝食が始まるのを待っている。

 テーブルにはかごに入ったパンのほかに野菜の入った暖かいスープの入ったうつわ、湯気を上げている炒り卵や干し葡萄の乗った皿が並んでいた。

 今すぐ食べたくなる気持ちを抑えていると、

「それじゃあ、朝食の前に祈りましょうか♪」そうエレナ母さんが言った。

 その言葉を聞くとがやがやとしていた食堂が


 しんっと静まり返った。


 そのまま僕は目をつむり胸の前で両手の指を絡めて、

「静かな祈りとともに、この食をいただきます。」と小さな声で独り言のように言った。

14人の大小さまざまな髪を持つ男女に紛れるようにの髪を持つ少女やの髪の女性の声も聞こえてくる。

 少しの静寂が食堂内を通った後

「...よし!それじゃあいただきましょう!」ティア母さんが言うとさっきのがウソのように皆が話をしながら食べ始めた。

 僕は湯気の上がっている温かいスープを口に含む。

 うまい。

 素朴な味が体を温めてくれる。

 そうしてゆっくりと味わうように食事を進めていった・・・・・


そうして朝食を終え食器をに持っていき「ごちそうさま」と木の食器を洗っているつたえると「はいよ」っと返ってきた。

一度部屋に戻ろうと食堂を出ると待っていたかのように「ねぇ」と話しかけるような声が聞こえ一度足を止めた。

右を向くと翡翠色の綺麗な長髪エルフの少女、フィリアが立っていた。

エルフ特有の長い耳をぴくぴくと動かしながら

「今日も行くよね?」

そう聞いてくる少女はすでに防具を装備し腰には剣を携えているようだ。

「うん」とそう返し僕は歩き出した

「玄関で待ってる」後ろからそう聞こえてきた。

あまり待たせちゃだめだと思い部屋へと向かう足を速めた・・・


・・・準備のできた僕は玄関に向かった。

壁に背を預け目を閉じているエルフがそこにはいた。

やっぱ可愛いな絶対美人になるだろうな...

っは!だめだだめだ煩悩から逃れるように首を振り声をかけた

「待たせてごめん!」

「だいじょーぶだよ」そういいへにゃっと笑った。

やっぱ可愛い。

「ボーっとしてないでさっさと行くよ!」煩悩から逃げられないでいる僕の頬をはたくような言葉が聞こえてきた。

「今日はどれくらい走るの?」そう聞く彼女に

「どうだろ、今日は特になんもないからいつもより長めかな」そういいながら玄関のドアノブをひねり手前に引きドアを開け外に出る。


緑の地面、少し遠くを見やれば民家が点々をあり村が形成されている。

その村の周りには草原が広がっている。いつもの光景

まだ低い位置にある太陽の光を浴び、ぐっと伸びを行い空を見る。

空、な太陽。

そういつもの光景。

「今日雨降らなさそうだね」

そう言うフィリア

「だね」と短く返し、

僕たちは走り出した。


色のない世界に希望を灯すために


14歳アルト、僕はまだ何も成し遂げていない。




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