セレスト
夏宵 澪 @凛
プロローグ
「はぁ〜……終わったぁ!!」
教室に響いた自分の声が、やけに間抜けに聞こえた。
今日は理科の追試があって、いつもより帰るのが遅くなっちゃった。
出来はまあまあ。たぶん、凡ミスも――ない、はず。……たぶん。(願望)
時計を見ると、針はちょうど五時を指していた。
んー、思ったよりも遅くなっちゃったな。
外は小雨のあとみたいで、空気がしっとり冷たい。
秋の終わり、冬の入口。
そんな言葉がふと頭に浮かんで、思わず息を吐いた。
放課後でも部活終わりでもない、この微妙な時間帯。
校門の前にはもう人影もほとんどなくて、世界に自分だけ取り残されたみたいだ。
冷たい風が頬を撫でて、ちょっと背筋がぞくっとした。
――そういえば、あの日もこんな感じだったっけ。
霞色だった私の日常が、
セレストの光で一瞬にして塗り替えられた、あの午後。
今思えば、あれが私の初恋だった。
中学生になった今でも、
彼の笑顔や声、何気ない仕草、
そして、あのときかけてくれた言葉たちが、
頭の中でずっとリピートしている。
……うん。少しだけ、思い出してみよう。
あの、私の世界が色づいた日のことを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます