不老不死のラスボスに転生してしまったことに最終局面で気がついたから、取り敢えず主要キャラたちの寿命を待つことにした話
シャルねる
第1話
「とうとう追い詰めたぞ! ラース!」
俺の駒達……いや、仲間たちを倒して身の程知らずにもここまで辿り着いた英雄とその一行が憤慨する。
少し前の俺なら、この言葉にこれ以上無い程の苛立ちを感じ、ただ喋ることの出来るだけのゴミ共を駆除する為に動いていただろう。
だが、前世の記憶というものが蘇った……いや、統合? された今は違う。
壊れていた心が修復……違うな。新たに構築されていくこの感覚。
あぁ、どうやら、俺は死にたくないらしい。
生まれながらにして俺は最強だった。
個として、完成していた。
だからこそ、退屈だった。
きっかけはふとしたもので、この世界を……この玩具箱を混沌に陥れれば、少しはその退屈もマシになるのでは無いかと思ったから、俺はここまでの行動を起こした。
全ては、何百、何千年先になってもいいから、自分を……この退屈を終わらせてくれる存在と巡り会う為という身勝手な理由で。
だが、最早俺は終わらせてもらう必要なんて無くなった。
……違うな。終わりたく無くなったんだ。
身勝手な理由で作った混沌だ。
身勝手な理由でそれをやめたって、文句は無いだろう。
目の前の存在は文句がありそうなものだがな。
「ふっ」
「何がおかしい!」
……俺が、笑った?
そうか、死にたくないという感情が芽生えた以外にも、色々と俺は変わったのか。
そもそも、駒を仲間と呼んだ時点で、当然の話か。
少し前の俺なら、考えられなかったことだ。
悪い事をしたな。
この世界に対しては何も思わないが、あいつらはこんな俺に忠義を誓い、その命まで捧げてくれた者達だ。
そんな者達に、俺は何も報いていないではないか。
あいつらを復活させるための旅に出るというのも、悪くないかもしれないな。
まだ俺に忠義を誓ってくれているのかは分からないが、それは復活をさせない理由にはならない。
「聞いているのか! ラース!」
いくら俺とて、それ相応の素材がなくてはあいつらの復活は叶わない。
そうと決まれば、さっさと行動に移し始めよう。
そのためにすべきことは、まずは目の前のこれからなんとかしないとな。
統合された前世の記憶を元に考えるに、目の前の英雄は俺を殺すことができるらしいから、殺す……なんて選択肢は今の俺にはない。
ならばどうするか。
取る手段は1つだ。
「燃えろ」
俺の体を中心にし、赤く濃い炎を出す……出し続ける。
これで相手の視界を奪うことには成功した。
「この程度で今更僕を──は? 逃げ、た?」
後は奇襲をするために背後に回る……訳がなく、俺は背中を晒し、そのまま全速力で走った。
後ろから英雄やその一行の呆気にとられた間抜けな声が聞こえてくる。
その声はかなり滑稽で、思わず走りながら笑みを浮かべてしまう。
「………………ふ、ふざけるな!!! 貴様のせいで、どれほどの罪の無い人間が犠牲になったと思っている!!! 逃げるなァ!!! 戻ってこい、ラースゥゥゥゥ!!!」
ニヤニヤととても人様に見せられない顔をしていると、状況を理解したのか、英雄の今まで聞いたこともない怒り狂った声が背後から聞こえてきたが……当然俺が戻るはずもなく、どんどんとそんな声は遠ざかって行った。
正面から戦えば負けていたのかもしれないが、スピードは俺の方が圧倒的に早かったみたいだな。
本当に負けてたのか? という疑問が出てくるが、今更この記憶を疑う意味は無いだろう。
─────────────────────
走り続け、辺りが暗くなってきたところで、俺は足を止めた。
一体ここがどこなのかすら、今の俺には分からなかった。
ただ、それで良かった。
さっき仲間を復活させる為の旅に出るのも悪くないと思ったばかりだし、実際その為の旅に出る気はあるんだが……英雄であるこの世界の……物語の主人公であるあの男が生きている限り、絶対に立ち塞がってくるだろうから、まずはその男をどうにかする必要があるんだが……戦って勝つことは物語的に出来ない。
だったらどうするか?
簡単だ。
寿命を待てばいい。
いくら主人公とはいえ、あいつは俺とは違い、普通に寿命がある人間だ。
それをのんびりと待って、確実に死んだと思える年月……そうだな、それこそ、100年……いや、100年じゃまだ足りないな。主人公はそれで死ぬだろうが、主人公の仲間にはエルフがいたはずだ。
それを考えると、300年……余裕を持って500年は待とうか。
それだけ待てば確実に寿命で死んでくれるはず……ではあるが、今度は子孫に俺のことを伝えられるだろうという問題が出てくるか。
本人ではない、ただの子孫とはいえ……主要キャラ達の血が通っている以上、何があるか分からん。
……仕方ない。慎重に慎重を重ね、その上で更に慎重を重ねる為に3000年は待とうか。
これなら、何世代も代を跨ぐことになるし、血もかなり薄れるだろう。
そして、生物の記憶というものは風化していくものだ。
いくら親が子供に俺という存在の危険さを伝えていたとしても、それだけの年月があれば最早今の主人公たちのように心の底から嫌悪し、警戒することは出来まい。
よし、そうと決まれば、まずはこれから約3000年は世話になるつもりの家でも作るか。
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