佐久間 恭一郎の推理
MRo
第1話 グラウンドに残された思考
朝のホームルーム前、校庭がざわついていた。
砂の上に、奇妙な足跡が残っていたのだ。
俺――一年の島田は、友達に呼ばれて見に行った。
グラウンドの中央に、円を描くように並ぶスニーカーの跡。
まるで誰かが夜中に盆踊りでもしてたみたいだった。
「幽霊? UFO? それとも深夜の体育教師?」
「やめろ、不祥事みたいに聞こえるだろ」
くだらない会話をしてたら、背後から落ち着いた声がした。
「――島田くん、それは『思考の軌跡』ですよ」
出た。
佐久間 恭一郎。
探偵気取りの二年生。紅茶のペットボトルを持ってる時点で、もう面倒くさい。
「思考の……。軌跡?」
「人は悩む時、同じ場所をぐるぐる回るんです。 つまり、これは『昨日の誰か』が進路に迷っていた証拠です」
「迷ってもグラウンド回らねえよ」
「違います。地面が共感したんですよ」
やばい、すでに物理法則を超えてきた。
「砂は人間の足跡を記録するだけでなく、感情も保存するんです。 だから、グラウンドがその迷いを再現した」
「それ、地球が情緒不安定すぎだろ」
笑ってるうちに、佐久間はしゃがみ込み、跡を指でなぞった。
「見てください、この踏み込みの深さ。葛藤の重さがわかりますね。 しかも右回り。つまり現実から逃げたいタイプです」
「心理テストすんなよ!」
その時、体育教師が近づいてきた。
スコップ片手に、ちょっと気まずそうに笑っている。
「あー、それ俺だ。昨日、白線引く前に石灰まぜてたら、固まっちゃって足で踏んでほぐしてたんだよ」
佐久間は一瞬、固まった。
だがすぐに笑みを浮かべ、紅茶をひとくち。
「……なるほど。教師の葛藤だったんですね」
「いや、ただの準備だわ!」
みんなが笑う中、佐久間だけが真顔でグラウンドを見つめていた。
その顔は、少しだけ誇らしげで――少しだけ本気だった。
☕️あとがき☕️
えー、本格ミステリーではございません
勘違い系コメディですが、佐久間は常に本気です
金曜 17:15 更新 どうぞ紅茶のご準備を☕️( . .)"
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