第18話
鳩尾を殴られたような衝撃。
追い打ちをかけるように全身を駆け巡る激痛。
――――一体、何が起きた!?
俺は無意識的に腹に手をやり、ビチャッという感触に不審を覚える。
何で、俺の腹が濡れてんだ?
濡れた手に目をやる。
手は、赤一色に染まっていた。
――――赤?
これは、何の色だろう?
「なんだよ、コレ……?」
やがて俺は立ってられるなくなり、膝を付き、遂に倒れ込んだ。
腹を貫かれた、という事実を今更、実感する。
痛い。尋常じゃない痛さだ。
もはや痛みよりも、熱さを感じるレベルである。
燃えるような痛み、とでも言おうか?
――――なんで、俺は刺されたんだ…?
地を踏みしめる音に、俺は視線をそちらへと送る。
そこに居たのは、勿論、クレイジータイガー。
口から涎のように血を流し、目からも涙のように一筋の血を溢しているのは刺される前と変わらない。
だが、決定的に変わっている部分もあった。
「グルルルルル!!」
怒りに満ちた唸り声を上げる奴の口から、その口に収まり切らない程にまで伸びた牙が生えていた。
その姿は、地球上では遠い昔に絶滅しているサーベルタイガーを彷彿とさせ、手傷じゃ済まないダメージを与えた俺を串刺しにせんと血に塗れた牙が光る。
そして、奴が頭を軽く振りかぶった事で、俺の疑問は氷解する。
クレイジータイガーが頭部を振る動作に合わせて、口に生えたその牙がさながらブーメランのように分離。
だが、それが外傷で折れてしまったのではないのは明らか。
何故なら。
その分離した牙は、ブーメランのように回転しながら俺目掛けて飛来し、地に伏した俺の肩へと突き刺さったのだから。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
追加された激痛に、俺は喉を嗄らす勢いで苦悶する。
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い……
そうか。この腹も――
この腹も、この肩のようにあの牙による遠距離攻撃で貫かれたのか!!
更に俺は気付いた。
表示されっぱなしになっていた《運命天秤ラックバランサー》の表記アイコンも変わっている事に。
-------------------------------------------------------
対象【クレイジータイガー】
G:■■■■■■■■■■(10)
B:(0)
ポイントを調整中です。ポイントの変動は出来ません。
-------------------------------------------------------
ポイントを調整中、だと!?
しかも、幸運GOODを0にして不運BADに全振りしたはずのポイントが、いつの間にか真逆に変わっている。
更に、何故かポイントの変動も受け付けない、と来ている。
「な、んで……?」
――――。
意識が朦朧もうろうする中、俺は《運命天秤ラックバランサー》のスキル詳細、その最後の一文をおぼろげに思い出した。
『このスキルによって改変した運気は、一定期間で反転してバランスが取られる。』
ちくしょう……!
そう言う事か!? あの一文は、そうゆう意味なのか!?
くそ!
もう少しで予想以上に上手く行きそうだったのに!
流石に、これは恨んでいいですか、女神様!?
「あぁー!? やっと見付けましたよ、長谷さん!」
どこか聞き覚えがあるような声が、聞こえた気がする。
そう思った頃には、俺は意識を手放した――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます