第8話

 プレートに記された文字をタッチすれば、そのスキルの詳細が見れるようになるらしい。

 試しにタッチしたら『生命力強化』の詳細な内容が表示された事から、それは間違いない。


 どこまでもタブレットPCのような仕様のシステムである。――――ホントに異世界か、ここ?


 さて、その『生命力強化』であるが、能力自体はさきほど自分が考察したものと大差ないものだ。

 つまり、内外からのダメージ軽減と、死に難にくくなるアドバンテージを得る。

 スキル『生命力強化』の能力は、そうゆうもののようである。


 そうなると、他のスキルも恐らく俺の推測と大差はないかも知れない。


 とはいえ推測のままて据え置くわけにはいかない。

 いざと言う時――今が割とその「いざ」ではあるが、正確に把握しているのとしていないのとでは大違いだ。

 俺は早速、次のスキルをタッチした。



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 『異常耐性』

 常時発動型(パッシブスキル)。

 あらゆる状態異常に対する耐性を得る。

 下級の状態異常魔法及び投薬の効果無効化、中級ならば効果の大幅な減退が可能。

 ただし、上級に類するそれらに対しては、スキル保有者のレベルに準じて効果が増減する。

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「そりゃ『異常耐性』っつうくらいだし、そのまんまだよなぁ」


 読んで字の如しってなもんで、『異常耐性』のスキルを理解する。


「まぁ、並大抵の毒じゃ死なずに済むと思えば、ありがいスキルかな」


 そう納得すると、次の『アイテムボックス』をタッチする。



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『アイテムボックス』

 任意発動型(アクティブスキル)。

 ありとあらゆる物を、魔力的な次元空間へと収納出来る。

 収納物はスキル保有者の意志で自在に出し入れが出来る他、ステータスボード上の『アイテムボックス』アイコンに二度触れる事で表示される「収容物一覧」で確認後、そこに記された収容物を指定する事によっても取り出す事が可能。

 収納可能な残り容量はメーターで表示され、およそ屋敷一軒分に相当する。

 収容物の大きさは、許容量以内であれば問わない。

 ただし、生きたままの生物を収納する事は出来ない(魔物の部位等、亡骸であれば収納可能)。

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 屋敷一軒分に相当する容量と言うのが、いまいちピンと来ないが、とりあえず大容量という事は間違いない。――――正直、収容量何tって表記されても結局、ピンと来ないだろうしね。

 生き物を収納出来ないのも、予測の範疇だ。

 むしろ、これが出来たら誘拐とかし放題だろう。

 尤もっとも、仮に出来てもやらないけどね。


 ――――いや、マジでやらないよ? 身代金要求する度胸もなければ、女の子監禁する偏執かつ変態的な趣味もないし…。


 って言うか、今現在、アイテムボックスに何か入ってたりするのだろうか?


 気にはなるけど、とりあえず今はスキルを全て確認してからアイテムボックスの中身を確認しよう。



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『言語習熟』

 常時発動型(パッシブスキル)。

 ありとあらゆる言葉や文字を理解し、使用する事が出来る。

 大陸間の共通言語は勿論、少数部族間でのみ用いられるマイナー言語も解し、失われた古代言語も解読可能。

 スキル保有者は、意志疎通の意志さえ持てば特に意識せずとも、相手に合わせた言語を自由に用いる事かが可能。

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 なかなかに万能なスキルである。

 少なくともコミュニケーションで困る事は一切ない。

 なにせ、大陸間の共通言語――多分前世で言う所の英語から、部族間でしか使われないマイナー言語まで補完してくれる万能っぷりである。

 話せない言語がないとなれば、前世で言う「36ヶ国語が話せる」なんてレベルじゃない――まぁこっちの世界に言語が36もあるのか知らないけど。


 そもそも。


「ここ、人が居ねぇんだよなぁ……」


 目覚めた時は心地よかった筈の微風が、妙に寒く感じる今日この頃です。


「次、行こ…」


 言語習熟の有能さと、それに反する今の孤独な現状に心持ち冷え込んだ心境を改め、次のスキルを調べる。


 次は、ナビゲーションシステムとかないかなぁと冗談半分に考察したスキル『マッピング』である。



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 『マッピング』

 任意発動型(アクティブスキル)。

 スキル保有者の周辺地理をステータスボード上に表示する。ただし、指定すればステータスボードとは別に『マッピング』スキル専用のボードを出現させる事も可能。

 尚、表示される周辺地理は、保有者の任意で表示範囲を広狭させる事が出来る。

 周辺に居る人及び魔物の検索も可能だが、この場合、捜索範囲と内容によって相応の魔力を消費する(マップの表示自体に魔力は消費しない)。

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 流石に、ナビゲーションシステムは搭載されていないようだ。


 ――――だと思ったけどね。


 でも、とりあえずこのスキルがあれば迷子の心配はないわけで、おそらくは表示範囲を目いっぱい広げれば樹海の出口だってきっと判明する事だろう。

 検索に関しては、どの程度、魔力を消費するのか検証が必要だが、仮に大した消費でないとなれば危険な動物――むしろ魔物と遭遇するリスクも減る。

 上手く活かせば、この危機的状況を脱する糸口となるスキルと言える。


 さて、次が今の俺の中での本命となるスキル、『鑑定眼』の出番だ。



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 『鑑定眼』

 任意発動型(アクティブスキル)。

 スキル保有者が目にした物及び人物の詳細を調べる事が出来る。

 知る事ができる情報は多岐に渡り、物であれば『名前(種類)』『用途・効能』『レアリティ(レア度は☆で表記され、最大5つ☆)』、人物であるなら『名前』の他に『レベル』や『保有スキル』、『HP』及び『MP』の残量も知る事が可能。

 ただし、この効果はスキル保有者のレベルに左右される為、格上の相手を鑑定する場合、全ての情報を知る事が出来るとは限らない。

 また、対鑑定スキルの効果を有する妨害スキル及び魔術、魔道具によって情報を隠蔽もしくは改竄される可能性もある。

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 レベルに準じるとは言え、相手を丸裸に出来る鑑定眼の有用さは言うまでもないな。

 このスキルがあれば、最低限、食べ物の見極めには苦労しなさそうだ。

 一か八かでその辺のキノコを喰って死ぬ、なんて失態はせずに済む。

 ――――このスキルの真価は、そこじゃない気がするけど。

 今の状況では、その用途が一番重宝する気がする。


「さて、残りは意味不明な『運命天秤』こいつか」



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『運命天秤ラックバランサー』

固有特殊型(プライベートスキル)。

万物の運命を操作出来る。

スキル発動時、天秤型の専用アイコンが出現し、対象の幸運・不運に干渉する。

天秤の傾きに応じて、対象の運命が大きく変動する。

このスキルによって改変した運気は、一定期間で反転してバランスが取られる。

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「なんだ、このスキル?」


 思いの外、壮大そうなスキルである。

 元々、意味不明なスキルが、詳細を見た事で余計に混迷してしまった。


 常時発動でも任意発動でもない、固有特殊型という事なので、このスキルに関しては女神様から貰った俺専用のスキルという解釈が成り立ちそうだが…?


 それにしても、万物の運命を操作って、無駄に凄そうなスキルだな!


「天秤型のアイコン、ねぇ……どれどれ?」


 スキルの発動方法すらよく分からないが、とりあえず目の前の樹に対して『運命天秤ラックバランサー』の発動を念じてみる。


 ピコン!


 ステータスボードとは別に、天秤を模したアイコンが出現した。 

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