アルテミスの森〜熊に襲われた農夫の話〜
水井竜也(仮)
【第1回】熊に襲われた農夫
私は『クロノシア領』で農業を営んでいる農夫です。
葛葉様の提案で取り入れることになった『米』の生産をしています。
刈り入れをした『稲』は、こぎ取られて『籾』となり、乾燥・籾すりを経て『玄米』となります。
私はその作業をしています。昔は人の手で行われていたみたいですが、今は機械がやってくれます。
それを精米したものを『白米』、さらに炊いたものを『ご飯』と呼びます。この呼び名の細かいことが『皇国』の『米』への関心の高さを表しているように感じられます。
その日私は、この籾すり作業を行うための小屋で、一人で作業をしていました。
今日の分を終えて家に帰ろうと小屋を出た時、暗がりに黒い塊がいたのです!
はたして、その塊は二頭の熊でした!
一頭は山に逃げましたが、一頭はこちらに襲いかかってきます!その距離5メートルほど。
私は、咄嗟に小屋に逃げ込みました。しかし、小屋はシャッターが上がっていて、追いかけてきた熊が侵入してきます!
私は持っていたシャッターを下ろす棒を構えて、向かってきた熊の頭を叩きます!
それをものともせず、熊は私に襲いかかってきます。
熊に押し倒され、数カ所、噛まれたり、引っかかれたり。
私も無我夢中で、熊を押しのけて抵抗しました。
熊は虚を突かれたのか、小屋の奥に逃げ出しました。
その隙に軽トラ……あれ?軽トラってなんだろう?
とにかく機械の乗り物に乗ったのです!
ドアを閉じ、一息ついた私。熊も小屋から出て、山に逃げていきました。
私は、軽トラの鍵を回そうとしましたが、右手も左手も動かなかったのです。
左手の人差し指と中指で鍵をつかみ、ようやく回して、家に逃げ込みました。
家族に救急隊を呼んでもらい、病院に搬送されました。
◇ ◇ ◇
結局、私は、頭と右腕、胸、左手などを噛まれたり、引っかかれたりして数カ所を縫ってもらいました。
前腕を損傷したので右手の握力がなく、左手親指の付け根を噛まれたせいで骨折していたみたいです。
これが体高70センチほど、立ち上がった高さが120センチほどのツキノワグマの子どもによる被害です。
【後書き】
※この作品には極端な言説が含まれています。一部の意見として受け止めてください。
後日の目撃談から、若い母親熊ではないかと言われました。
二頭のうち、逃げたのが子熊であり、向かってきたのが母親熊だったのかもしれません。
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