第26話 ありがとう、そして行ってきます!!
「みんな、ありがとごじゃいまちた! いってきましゅ!!」
『ああ、行ってこい、いつでも待ってるからな!』
『おにぇちゃ!! しゅぐにかえっちぇきちぇにぇ!!』
『向こうに行って、もしも何か嫌なことをされたら、すぐに帰ってきなさい!』
『そうだぞ、ドウェインにすぐに送ってもらえ!』
『元気でな!』
『お腹を出して寝て、具合が悪くならないようにね!!』
『ルーファス! かえってきたら、またあそぼうな!!』
『おみやげ、まってるからね!!』
ついに、私たちの旅立ちの日がやってきたよ。
今日は朝早くから、みんなが集まって見送りに来てくれてね。今は出発の時間になったから、みんなで最後の挨拶をしているところだよ。
『ドウェイン様』
『ルクサス、森のこと任せたぞ』
『うう……ルクサス様』
あ~あ~、ルクサス、大きなムキムキの体に合わない大号泣だよ。よくこれで、ドウェインからの話しを受けたよね。ここは私がバシッと言ってあげるべき? だってこのままじゃね。ドウェインも行きにくいでしょう。
そう思って、私はルクサスに声をかけようとする。と、でもその前に……。
『これから旅立ちだっていうのに、何泣いているのよ!! しっかりしなさい!!』
ルクサスの頬に、強烈な蹴りが入った。
その蹴りで数メートル飛ばされるルクサス。それを綺麗に避ける見送りに来てくれていたみんな。子供たちは大人魔獣たちがきちんと守ったよ。
そうして、ズサァァァッ!! と地面を擦って止まったルクサスは、いてて言いながらと起き上がると。擦った方の頬と、蹴られた方の頬、両頬を翼でさすりながら、こっちに戻ってきたよ。
『何するんだよ、ルーシー』
『何するんだよ、じゃないわよ! これからはあんたがここを守るのよ。それがボロボロ泣いて、みっともないったら。もっとシャキッとしなさい! ドウェイン様、最後の最後まで、申し訳ございません。私がしっかり見張っておきますから!』
『フッ、ルーシーがいてくれれば安心だな』
「少しでもドウェイン様のことで情けない顔したら、私が叩き直します!」
綺麗なお姉さんグリフォンのルーシー。ぽこちゃん大好きランキング3位で、メスのグリフォンの中で1番実力があり、しっかり者でみんなから慕われている、人気者のお姉さんだよ。
そんなしっかり者のお姉さんが、まさかのルクサスの彼女だったとは……。今度番になるんだって。
ルクサスのドウェインマニアの姿しか見ていない私には、どうにも違和感が。まぁ、お互いが好きなら別に良いんだけど。
私はルクサスの頬を見る。そこにはこの間と同じ、足跡の形がくっきりついている。
この前さ、ルクサスはドウェインと長い話し合いをしたでしょう? その話し合いでルクサスは、やっぱりグチグチ言っていたらしいんだ。ドウェインがいないとダメだとか、俺なんかが代わりになれるわけないとかね。
それをやめさせて、ここを守るって決めさせたのが、ルーシーお姉さんだったんだって。バシッ! と一発食らわせてね。いい加減に腹を括りなさいってね。その足跡と、今日の足跡がピッタリ。
実は子どもたちの間で、陰の実力者はルーシーお姉さんって言われているんだ。だから、ドウェインがいなくても、ルーシーお姉さんがしっかりルクサスを見てくれるから、大丈夫なはず。
『リン、向こうでも元気でね』
「あい!!」
『ドウェイン様……いや、ゴホンッ。リン、元気でな』
ジロリとルーシーお姉さんに睨まれて、私に声をかけてきたルクサス。うん、頑張ってね。
『よし、それじゃあそろそろ行くぞ!!』
私とルーファスはドウェインに乗って、ぽこちゃん家族は他のグリフォンに乗せてもらって、ついにこの時がきたよ。
『行ってらっしゃい!!』
『じゃあな!!』
『ばいばい!!』
「いってきましゅ!!」
私の言葉とともに、一気に空へと舞い上がるドウェインと他のグリフォンたち。そしてそのままビューッ!! と風を切り前へと進んで。私はみんなが見えなくなるまで、ずっと手を振っていたよ。
さぁ、いよいよ新しい生活に向けて出発だ!!
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「このまま何も起きなければ、予定通り到着しそうだな。ダウル、ありがとう。お前のおかげで間に合った」
『なに、皆のおかげだ』
「そうね、みんなもありがとう」
『これくらいなんて事ないわよ。ねぇ、みんな』
『ああ、気にするな』
『久しぶりに、かなりの速度で飛べたからな、逆に良かったぜ』
「そう? でも、まさか出がけに問題が起こるなんて、嫌になっちゃうわ。私の楽しみが遅れるところだったのよ。戻ったら絶対に犯人を見つけて、それ相応の罰を受けてもらうわ!」
「あ、ああ、そうだな」
「母上、気をつけないと、怖がられてしまうかもしれませんよ。私たちの新しい家族は、まだ3歳と聞いています。怖がる言動は控えなければ。それで怖がられて、距離を置かれたらどうするんですか。この前の教会でのことと同じことになるかもしれませんよ。今の圧もやめた方が」
「あ、あらそうね、私ったら」
「魔獣が大好きだって言ってたよな。うちに来たらきっと喜ぶぞ。な、ヒューゴ」
『ああ。保護した子魔獣たちも喜ぶだろう』
「私はね、最初は好きにさせてあげるつもりよ。まだ詳しくは聞いていないけれど、ドウェインの話によると、ここに来た直後から、かなり大変な経験をしたようだし。だから最初は好きにさせてあげて、私たちに、そして家に慣れたら、新しいことを教えてあげようと思っているの」
「そうだな、その方がいいだろう。無理にあれこれかまって、逆に私たちに不信感を抱かれても困る」
「でも、確か魔獣の世話は、自ら率先してやっているとか」
「だから、そういうのを、好きにさせてあげるのよ。保護した魔獣たちも私たちよりも、敵意のない小さな子供の方が安心するでしょうし」
「俺は早くいろいろな所へ連れて行って、遊んでやりたいな」
「アルフレッド、絶対に無理維持はダメですからね」
「分かってるよ。俺だって新しい家族に嫌われたくないし」
『ん?』
「どうしたダウル?」
『向こうにドウェインたちの気配を感じた』
「そうか、分かった。さぁ、新しい家族との対面だ。全員怖がらせないように気をつけろ」
「もちろんよ」
「はい」
「あ~、楽しみだなぁ」
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