第29話 奇跡の名は
「フハハハハッ‼ どうだ、この圧倒的な魔法制御は‼」
高笑いしながら次々と魔法を展開していくノーズ。俺は小さく舌打ちしながら、次々と襲い来る魔法を防いでいく。
「魔法制御ねぇ…………」
魔法士に求められる能力、その内の一つが魔法制御。いかに魔力を少なく、速く、正確に組み替えることが出来るのか。その程度を示すのが魔法制御であり、高ければ高いほど魔法士としての実力があることを証明する。
「随分と便利な魔法だな、《逢魔転換》とやらは」
「フンッ、お前のような無能には到底、扱えない魔法なのだ‼ 精々、圧倒的な才能の差に絶望するがいい‼」
「ノーズ、一つ、聞かせろ」
さらに勢いづく魔法を防ぎながら、俺は問いかける。
「その魔法は……その力は、自分で手に入れたのか?」
「はっ、そんなわけがあるか‼ 俺の実力を真に認めた者が役に立つだろうと渡したのだ‼」
「はぁ……やっぱりか。まぁ、お前がこんな強力な力を自分で努力して手に入れるわけがないと思っていたから、予想通りといえば予想通りだな」
「だ、黙れっ‼ 俺のような貴族に力が与えられるのは当然のことだろう‼」
発狂しながら、何度目かの魔法掃射を繰り出すノーズ。変わらず、凄まじい攻撃だがパターンを把握してきた俺は最小限の動きで躱し、一言。
「―――うるせぇよ」
「ッ…………⁉」
冷たい眼差しと共に紡がれた言葉に、ノーズが声にならない悲鳴を上げながら思わず後ずさる。発動しようとしていた魔法も次々と霧散していく。
「力ってのは与えられる物なんかじゃねぇんだよ。力ってのは―――掴み取る物だ」
そう告げながら、俺は右腕に触れる。
「―――行くぞ」
そう呟いた次の瞬間、
「なっ、なんだ⁉ そのふざけた魔力は⁉」
突如として吹き荒れた膨大な魔力にノーズが目を見開きながら絶叫する。それを無言で見つめながら、吹き荒れる魔力の中心にいる俺はそっと右腕を上げる。
「俺はアイツ等とは違って『固有魔法』が使えなかった」
比類なき『天才』であるアイツ等に対し、俺は努力することで必死に喰らいつく『秀才』止まりの人間だった。
「数えきれないほど憧れた。『自分だけの魔法』を使う姿に、俺は何度も憧れた」
才能という名の大きな壁を前に、何度も苦しんだ。だが、それで絶望したことは一度もない。
「筋金入りの負けず嫌いなんだよ、俺は」
『固有魔法』を持たない俺がどうすればアイツ等に追いつき、追い越せるのか。色々と考えた末にたどり着いた『答え』
―――持っていないなら、創ればいいのでは?
「……………………は?」
告げられた『答え』にノーズが信じられない物を見るかのように視線を向けてきた。
「魔法を、創る、だと……? そ、そんな、不可能だ‼」
「そうだな。けど、それは今までの話で、これから先は出来るかもしれないだろ?」
魔法とは神が与えし奇跡の産物。その考えから俺の頭の中に、一つのアイデアが生まれた。
「与えることが出来るなら、創ることだって出来るのでは、ってな」
そこからは試行錯誤の毎日だった。魔法の構築や魔力の運用。そこに意志と言った感情が作用するのかどうか。研究と実験を繰り返し、たくさんの失敗をしてきた。
「結論から言うと、魔法を創ることは出来なかった」
「と、当然のことだっ‼ お前みたいな無能に…………」
「だが、俺は諦めず、魔法が創れないなら、魔法に似た『ナニカ』を創ればいいという考えに至った」
話を途中で遮られたのと、俺が放った言葉を理解しきれなかったことによって、目の前で顔を真っ赤にするノーズへ、俺はニヤリと笑いかけながら告げる。
「
顕現せし力の名は、
憧れを糧に至った、なんてことはない―――ただの『奇跡』だ。
―――――――――
さぁ、反撃といきましょう‼
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