天賦の才は、異才の剣に恋焦がれる
苔虫
第1話 『迷宮』と『探索者』
『
世界中に突如として現れた謎の空間。なんてことのない街の近くにポツンと生まれたのもあれば、天空や深海といったように人間が簡単には行けないような場所でも確認されている。
『迷宮』にはそれまでの世界では到底、再現できなかったであろう技術や貴重な宝といった多くの『未知』が眠っていた。
そして、そんな『未知』から生まれる富や名声を求め、常に死と隣り合わせな『迷宮』に挑む者たちを、人々は『
『ガァアアアア‼』
三メートルを超える熊型の魔物、グリルベアーが咆哮と共に鋭い爪のついた豪腕を振るう。
「よ、っと」
その攻撃を俺―――レオスは難なく躱しながら、自身の武器である大剣を構え直す。
「まさかコイツがこの階層で出るとはな……」
『グルゥ…………‼』
目の前で唸り声を上げながら迫りくるグリルベアーに合わせ、俺は大剣を横に一閃。直撃を受けたグリルベアーは胴体を綺麗な真っ二つにされ、そのまま地面へと倒れ込んだ。
「討伐完了、っと」
倒されたグリルベアーの身体は灰となって『迷宮』に消えていくのを眺めながら、俺は地面に転がった魔石を拾う。原理は未だ不明だが、魔物は倒されると核である魔石のみ残し、身体を灰へと変化させた後、『迷宮』へ消えていく。
稀に身体の一部が灰とならずに素材として残ることもあるのだが、今日は何も残ることなく消えていったので、俺は少しだけ落ち込む。
「何かしら素材が落ちてくれればよかったんだが……まぁ、目標分の魔石は回収できてるから、良しとするか」
拾った魔石を特製の鞄にしまった俺は端末を取り出し、現在の時刻を確認する。
「おっ、もうこんな時間か」
予想以上に潜っていたことに驚きながら、俺は『迷宮』の外へと向かうのだった。
「買取をお願いしたいんだけど~?」
「はいは~い……今、行きま~す、って、レオスさんじゃないですか‼」
初心者向けの『迷宮』から街に戻ってきた俺は手に入れた魔石を換金しようと、ギルドに足を運ぶと顔馴染みの受付嬢―――ノエルが笑顔で出迎えてくれた。
「おぉ~今日もかなりの量を取ってきましたね~」
「まぁ、探索者になってからそろそろ二カ月だからな。これぐらいは何とかな」
感心したように呟くノエルに、俺は苦笑しながら答える。
「二カ月でこれだけの量を取れるようになるなんて、中々ないんですよ……って、これ、グリルベアーの魔石じゃないですか⁉」
「? あぁ、探索していたら偶然、遭遇したんだ」
「……レオスさんが倒したんですか?」
「そうだが……何か問題でも?」
「問題、大アリですよ‼」
いきなり大声を上げられ、俺が驚く中、彼女は『バシンッ‼』と机を強く叩きながら、身を乗り出してきた。
「レオスさんは今日も五階層までしか潜っていないんですよね⁉」
「あぁ。だから、本来、十階層以下で確認されるグリルベアーと遭遇した時は驚いたぜ」
「な・ん・で‼ そんなに平気そうなんですか⁉ 頭おかしいんですか⁉ 探索者になったばかりの新人がたったの二カ月でグリルベアーを討伐するなんて聞いたことがありませんよ‼」
「……そうなのか?」
「そ・う・な・ん・で・す・よ‼」
そう言いながら、さらに身を乗り出してくるノエル。整った顔を目の前まで近づけられ、俺は思わず目を逸らしながら「まぁまぁ」と彼女を落ち着かせ、問いかける。
「やっぱり、グリルベアーが五階層に出現したのはおかしいよな?」
「えぇ、こちらで調査隊を派遣するでしょうから、あの『迷宮』はしばらく閉鎖ですね~」
「結構、いい稼ぎになる所だったんだけどな~……」
「いやいや、レオスさんなら他の『迷宮』でも稼げますよね?」
「稼げはするんだけど、一番効率いいのがあの『迷宮』だったからさ~……」
今日、探索した『迷宮』は一日で約五千ゼニーは稼げるのに対し、他の『迷宮』だと一日で約三千ゼニーほどしか稼げないのだ。
「稼ぎたいのであれば、もう少し下の階層に行ってみるのはどうですか?」
「俺も出来ればそうしたいんだが、同級生に『絶対に行くな‼』って言われているんだよな~」
「同級生……?」
俺の言葉に首を傾げるノエル。
「あぁ、そう言えば、ノエルにはまだ話していなかったな」
「話していない、って……何をですか?」
「俺が『学園』上がりの探索者で、学生時代に一緒にパーティーを組んでいた奴らが大手クランに所属している、って話」
「――――――…………」
俺の言葉に口をあんぐりと開けるノエル。目の前で手を振ってみるも反応はなし。
「おーい、大丈夫か?」
「…………で」
「ん?」
「な、んで……そんな大事な事を話してくれなかったんですか――――――‼」
ギルド内に、ノエルの大声が響き渡るのだった。
―――――――――
新作です‼
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