5話『秘密の告白』
雨宮が、雨宮清華が救急車で運ばれた。
彼女が倒れた時に出した、僕の叫び声を聞いた先生が読んだのだ。
僕も当然、一緒に救急車に乗ろうとした。
だけどそれは認められず、僕は学校に残ることになった。
学校に残った僕は、先生から状況の説明をさせられた。
正直、雨宮が心配でそんなことを説明する余裕なんて無かったが、何とか事情を先生達に伝えることができた。これから警察が来て、あの男子生徒は留置所に入れられるらしい。
ふざけんな。そう思った。あいつは、雨宮を殺そうとしたのだ、それどころか、雨宮は、助からないかもしれないのだ。だというのに留置所行きなんて、ふざけていた。
その日は一度帰り、眠れない夜を過ごした。
❀❀❀
次の日の放課後、担任の先生に言われた。
「雨宮が、お前に会いたいらしい。見舞いに行ってやれ」
電話で雨宮にこの言葉と、病院の住所を教えられたという、先生からその住所を聞いてすぐに僕は駆け出した。
雨宮が入院した病院は学校から少し距離があった。
電車とタクシーも駆使することで面会時間に余裕を持って病院に着くことが出来た。
「306番、306番……」
雨宮の病室を早足で探し、そして着いた。
どうやら個室らしい。僕はノックをしてその扉を開ける。見えたのは、
「雨宮……」
雨宮清華だった。僕は、我慢できず、走った。
そして、こちらを見つめる雨宮さんを雨宮清華を抱きしめた。
「ごめん……僕がサッカーを見てほしいなんて誘ったせいで、僕が、雨宮さんと仲良くなんかしたせいで……」
溜め込んだ感情が抑えきれず、涙として、溢れ出した。
そんな僕を雨宮は優しく抱きしめ、頭に手を乗せて。
「そんなこと言わないで……私はキミの試合を見たかったし、キミと仲良くできてからの日々がすごく楽しいよ、」
雨宮清華も涙を流して、優しくそういった。
❀❀❀
「浅霧くん。キミに言わないといけないことがあるんだ、」
互いの涙が収まると、雨宮はそう告げた。
「……聞くよ。──どんなことでも」
「──ありがとう」
そう微笑むと、彼女は語り始めた。
「私ね、生まれた時から少し、身体が弱かったんだ。それでも何事もなく生きていけると思ってた。だけど12歳の時だったかな。急に倒れちゃって、検査を受けてみたら虚血性心疾患っていう聞いたこともないような心臓の病気になっちゃって……」
僕は彼女の言葉に全力で耳を傾け、
ちゃんと聞いているよと頷いた。
「心臓の病気になっても、頑張ったんだよ……? リハビリとか、検査とか、痛いのや辛いのをいっぱい我慢して、頑張った……。だけど今年の4月。病院の先生から言われたんだ、貴方は生きられても後、半年ほどでしょう。って」
彼女の言葉を聞くと、僕まで胸が苦しくなった。
だけど、最後まで聞く意思を再び示す。
「それでもう、何もやる意味ないじゃんって、頑張る意味ないじゃんって思って。だから高校では誰とも関わる気なんてなかったんだ。だけど、キミと出会って、キミに出会えて、私のその弱気な考えが世界が変わった……」
泣きそうな、だけれど強い意思を持って彼女は言った。
「キミと生きたい。キミとずっと生きて、水族館だけじゃなくて、もっといろんな、もっといろんな景色を見て、もっといろんな場所に行って、一生キミと明日も明後日も、来年も、過ごしたいっ……。だけど、それは叶わないから、私が死ぬ、その一瞬まで一緒にいてくださいっ……」
彼女の言葉を聞いてると、涙が止まらなかった。
そしてこの涙が出るくらい自然に、当たり前に答えは決まっていた。
「僕の方こそ、一緒にいたい。キミと最後の一瞬まで一緒に笑って過ごしたい。だからお願いします。僕と──付き合ってください」
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