第6話 やっぱりこうなるか
朝、透真は起きひとつ考える。本当に今日は天宮が何とか上手くやってくれるのだろうか、そういった心配があった。
しかし昨日の朝陽の言葉を思い出し、気持ちを切り替え学校に行く準備を始める。
朝ご飯を頂いた後、玄関前で軽く深呼吸をし椿に挨拶をする。
「じゃあ姉さん、行ってきます」
「はーい! いってらっしゃーい!」
学校に登校してる際に月島と水篠を見かけ、あちらも透真の事を見つけ大きく手を振っている。
「おーい! 透真ー!」
「おはよう。萩野君」
「あぁ、おはよう」
その後は一緒に登校し教室へと向かう。一番良いのは何事も無く今日の学校が始まること、最悪なのは天宮と一緒に歩いていたのが俺だとバレてしまい、悪く目立ってしまうこと。
この二択のどちらが来るのかは教室に入り、クラスメイトや周りの会話を聞くまでは分からない。
そんな心配を抱えながら教室に入り、席に着くと同じクラスの女子の会話が透真の耳に入る。
「ねぇ、昨日天宮さんがスーパーに居たんだって」
「へぇ〜天宮さん見かけたんだ」
「それだけじゃなくてね、なんか同い年くらいだと思う男子と一緒に歩いてたとかっていう噂が出回っているんだよね」
「ええ!? まさか彼氏もう初日に作ったとか!」
「天宮さんなら有り得そうだよね〜」
最悪の状況にはなっていなかったが、思った通り悪い噂が立ち始めており、それを聞いた透真はため息を吐き落ち込んだような表情を見せる。
それを見ていた水篠が透真に話しかけてきた。
「萩野君大丈夫? 体調悪いの?」
「いや、昨日あんま寝れなかっただけだ」
「それなら良いんだけど、無理はしちゃダメだよ」
「透真寝不足なのか? 気をつけろよ」
「あぁ、ありがとう」
やっぱりこうなるかと思わざるを得ない現実に透真はひどく落胆する。どうして学校の人気者と関係を持っているとこうも他人の噂話が自分に刺さるのだろうか。
理不尽にも程があると思っている時に廊下がまた騒ぎ始めた。
(ああ、天宮が登校してきたんだな)
透真の思う通り、天宮が登校してきてまたも天宮は皆から今日も『綺麗』だったり『可愛』と黄色い声が廊下中に溢れていた。
だが天宮が学校に来てくれたことで透真も少し安心できた。
このあと恐らく、いや確実に昨日の事を天宮に聞いてくる人がいるので、それを逆手に取り天宮が上手く誤魔化してくれれば事態も収まってくれるだろうという考えを頭に浮かべているととある女子が天宮に近づいてきた。
「天宮さんおはよう。ところでさ、昨日スーパーに居たよね? その時一緒に居た男の人って誰なの?」
やはり聞きにきた。考えが上手く進んでると思った時にちょうど教室のドアから天宮が見え、一瞬だが透真と目が合ったが、天宮は透真の方を見て微笑んでいるように見えたが、一瞬の出来事だったのであまり良くは見えなかった。
「昨日一緒に居たのは...私のお兄ちゃんなの」
(ん? お兄ちゃん? おいおいいくらなんでもそれは怪しまれるだろ······あいつもしかして嘘が下手なのか······?)
天宮が誤魔化しに使った言葉は透真も予想していなかったもので、透真の事を自分の兄として誤魔化していた。
しかし透真はそんなので誤魔化せる訳が無いと考えていた。
透真は天宮の兄と言えるほど顔つきは似ていない上に大人びている訳でも無い為、そんな透真を自分の兄と言って誤魔化すのには無理があるだろうと絶望していると
「あれお兄さんだったの!? 天宮さんと同い年くらいの顔っぽかったからつい彼氏かと思っちゃったよ」
「顔つきはよく同い年に近いって言われることは良くあるよ。それに彼氏とかは今のところ作る予定とかは立てて無いの」
「天宮さんがそこまで言うなら違うのかぁ」
上手くいくのかよ!!
なんと天宮の誤魔化しは上手くいき天宮のクラスメイトを騙すことに成功した。
それを聞いていた廊下にいる他の生徒も、昨日の男子は彼氏では無いということを知った矢先、その話題には興味を持たなくなったのかそれぞれ自分のクラスに戻っていくが、時計を見るとそろそろ時間なので妥当ではあると思った。
それよりも透真は驚く事で精一杯だった。何しろあんな考えで他人を誤魔化せているのは恐らく周りからの人気が故の影響だろう。
朝陽の言っていた人気な人ほど筋が通っている話は信用されやすいという考えは本当のようだ。
「時間だぞー早く座れー」
驚いている間に教師が教室にドアを開け入ってきて、生徒を座らせるように指示する。
全員が座った後、朝のホームルームを終えたその後は何事も無かったかの様に授業、昼休み、掃除などを終え気がつけば下校時間になっていた。
(天宮に連絡して一応会っておくか)
今日の事を一応会って話をしたかったので連絡を入れる。するとすぐ連絡が返ってきた為2人は初めて会った学校から少し離れた場所で会って話すことにした。
「透真君ー」
「来たか。突然で悪いがよくあんな誤魔化しが通じたな。もしあれで怪しまれてたらどうするつもりだったんだ」
「いや幾つも考えた結果があれなんだけど? 弟はなんか違うし、昔からの友達って事にすると幼馴染がバレちゃう可能性があったからお兄ちゃんが一番いいかなって」
会って早々透真は天宮に質問を吹っ掛けるが、返ってきたのは奇しくも理解できる理由だった。
確かに弟は似合わないし昔からの友達設定だと幼馴染がバレる可能性があり得るという事なら兄が理想かと仕方無く理解する。
「それとももしかしてお兄ちゃんって言われたのが恥ずかしかったのかな? 透真お兄ちゃん?」
「バカにしてくる口はここか?」
「痛い痛い! ごめんなひゃい!」
「全く······」
天宮がいきなり透真をお兄ちゃん呼ばわりしてきて煽ってきたので仕返しに頬をつねると、天宮は少し涙目になりながらも謝りつねられた頬を優しくさすっている。
「とにかく今日は助かった。ほら、早く帰るぞ。別に今日は用事とか無いんだろ?」
「うん。でも一緒に帰ってバレない?」
「それが嫌だから早く一緒に帰るんだよ。わざわざ帰る時間帯とかずらす訳にもいかないし、早く帰ったほうが得策だろ」
「······それもそうだね。帰ろっか」
そうして天宮に感謝を伝え、急いで家に帰宅する。
今日の天宮はよくやってくれたなと、信用した甲斐があったなと透真は思った。
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