番外編3「元・魔王軍幹部の絶望日誌」
俺は、元魔王軍四天王、灼熱のゼノス。
あの日、かの『聖人』に敗北し奇跡的に生き延びた俺は、今は一介の農夫として暮らしている。
なぜ、俺様がこんなことになったのか。
日記に記すことで、心の整理をつけたい。
×月×日
王国南部の砦を攻略中、奴が現れた。星野悠。
見た目はただのひ弱な人間。俺は奴を嘲笑い、必殺の獄炎魔法『ヘル・フレア』を放った。
しかし、奴は「うわ、熱っ」とつぶやきながら、うちわで扇ぐような仕草をしただけ。
すると、俺の地獄の炎は、まるで線香花火のように、フッ…と消えた。
意味が分からなかった。俺のプライドは砕け散った。
×月△日
復讐を誓い、俺は奴を奇襲した。完璧なステルス。奴は全く気づいていない。
俺は渾身の力で背後から斬りかかった。
だが、奴は「ん?」と言いながら、ちょうどそのタイミングでハンカチを拾おうとかがんだ。
俺の剣は空を切り、俺は勢い余って木に激突。気絶した。
奴は俺に気づきもしなかった。
×月□日
もう駄目だ。奴の強さは、次元が違う。
計画とか、戦略とか、そういうものが一切通用しない。
奴の「なんとなく」の行動一つで、俺たちの野望は粉砕される。
先日、魔王様が奴に敗れたと聞いた。伝え聞くところによると、原因は奴が「世界が平和になればいいのになぁ」と思ったかららしい。
そんな馬鹿なことがあるか。
だが、奴ならあり得る。
俺はもう戦うのをやめた。畑を耕している方が、よほど精神的に楽だ。
今日、俺が作ったトマトが、とても赤くて美味かった。
平和って、いいな。
……星野悠、恐ろしい男。
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