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夜唄

第1話 何をしても…

僕は綺麗に終わりを迎える映画や、小説が嫌いだ。いや、好きでもある。でも、やっぱり嫌いだ…。恋愛だったりヒューマンドラマだったり、ホッとするようなエンディングを迎えると「良かった…」と思う反面、自分にはできないなと思い知らされるからだ。誰かしらそりゃ悩みの1つや2つあるだろう。でもそれは誰かを思って悩んだり、一生懸命に取り組むから悩むものなんだろう。でも僕は自分に何も無いことに嫌気がさす。周りの環境に流されるままに生き、なるようにことを済ませてきた。そんな自分につくづく嫌気がさす。そんな事を考えながら今日も一日の終わりを迎える。


目を覚ますと朝の7:00だ。

いつも通りの朝、いつも通りの時間。

天気は曇りみたいだ…。曇りの日は自分の心を写し出されたみたいで少し憂鬱になる。毎朝コーヒーだけのみながら1時間ほどタバコをふかして今日もまた、学校へゆく。この繰り返し。今日の講義は長いから早く帰って寝たい、そんな事を考えている内に毎日学校に着く。同じ人と話して決まった講義を受講する。何も考えなくていいから気が楽だった。

決まって僕はいつも時間ギリギリに教室に入り相手席に座る。「おはよー」そう言って挨拶をしてきたのはクラスメイトの2人だ。名前は…知っているのだけど、顔と一致しない。「おはよ」眠たい声を振り絞り挨拶を交わす。「一コマ目から瀧澤の授業とかほんとついてないよな!必修だからしゃーないけど」そんな文句を垂れながら話しかけてきた。「そうだな。まーでも聞いてるだけでいいから俺は別に嫌とかないかな」と返すと、「それがだるいんじゃんかよ〜」と返ってきたのでそれは無視した。俺には関係ない。流されるままに生きている僕にとっては…。


時間になり講義が終わると、「じゃ、ヤニってから行くよ」とその場から離れる。タバコは周りに合わせる自分へのご褒美だ。いやその場から逃げているだけなのだが…。人と話すのはやっぱり疲れる。この人にはこういう接し方、あいつにはこういう接し方、目を見るタイミングや表情の作り方すらも変えて接してきたからだ。本当の自分の感情などとうに忘れた。そんな疲れを癒す場が、喫煙所なのだ。

そんな事を繰り返し今日の講義も終了を迎える。今日はバイトがないのでそのまま家に帰り酒を飲み、タバコを吸う。お酒もタバコも…別に好きなわけではない。お酒は人並み以上に強いから好きなのだと自分に言い聞かせ、タバコも煙がかっこいいからと適当な理由をつけて吸っているだけだ。そんな自分に嫌気を感じながら今日も一日の終わりを迎える。


こんな自分に、思いもよらぬ出会いがあることなど露知らず、今日も眠りにつく。

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