その男、神になる

@Hedes

【始まりの始まり】

その日...


一人の天使が、天界から追放された。


折れた羽は風に千切れそうに揺れ、傷だらけの身体からは血が滲む。


天界から、その大きな体が落ちていく中、彼は燃えるような眼差しで天を睨みつけた。


「このままでは終わらない……」


名を、「ルシファー」という。


彼は、天使として最高位の座を与えられ、神々からも深く尊敬される存在だった。


美しく、賢く、力もあり、まさに完全無欠といえる存在だ。


そんな彼が、なぜ天界から追放されることになったのか。


理由はただ一つ...



それは、あまりにも高くそびえ立った「誇り」だった。


ルシファーは、自らを完璧な存在と疑わなかった。



そしていつしか...


自分こそが、神の座にふさわしい存在だと信じるようになっていった。


天使の身でありながら、あまりにも高く、危うい思考を抱きはじめたその姿に、神々は密かに恐れを抱く。



やがてその恐れは確信へと変わり、ついに神々は決断した。


「ルシファーを追放せよ!」


天界の光から弾き出されるその瞬間、ルシファーの胸に灯ったのは、絶望ではなく燃えさかる炎だった。



神々への、決して消えることのない復讐の炎である。


神々だけではない。



彼と永きにわたり競い合い、互いを高め合ってきた大天使「ミカエル」



その存在もまた、ルシファーの標的となった。


「神も……ミカエルも……誰一人として逃しはしない」


「真に超えるべきは神ではない――このルシファーこそが、理の頂点に立つ者だということを!」


落ちゆく意識の奥底で、彼は最後の力を振り絞り、天へと高らかに叫びを放った。

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