第3話、スキルレベルアップ

 それから二日後の日曜日。この国にも暦があり、人々は六日働いて一日休むと言う生活を送っている。


 今日は、王都からいらした立派な司教様が教会でお話しされると言うので、多くの町民が教会に押し寄せていた。


 司教様ってこの間のお爺さんかな? 僕はお爺さんの事を思い出して、胸に下げたおメダイを見た。


 教会の前は町の人で溢れていた。いつもの日曜礼拝だと人は来ないのに、立派な司教様が来るとなると祝福が貰えるのではないかと皆集まってきたんだ。


「アベル、お前も来たのか!」


 声がした方を見ると、重戦士のスキルを授かった友だちが派手な服を着て立っていた。


「今日は、俺が司教様直々に祝福を授かるんだぞ! お前なんか後ろの方で見ているんだな」


 僕はこの子の事があまり好きじゃない。また嫌な事を言われたと思ってションボリしていると。


 ザワッ!!


 急に人混みが騒ぎ出して、ザッと教会までの道が開いた。その開いた人混みの先に居たのは。


「テツ……」


 それこそ立派な服を着たテツと、横には騎士の人と神父様が並び立っていた。その後ろには、不安そうな顔のテツの両親の姿も。


 今日、司教様がわざわざ王都からきて祝福を与えるのも。このテツが『勇者』のスキルを得たからだ、『重戦士』の友だちはそのついでなのだ。


 潮が引くように開いた教会までの道を、当然のように歩いてゆく騎士と神父様。そして、申し訳なさそうに背中を丸めて歩くテツ。


 ちょっとテツの顔が見えたけれど、あれは色々な事を言われているのだろう、いつもの指を噛むクセが出ていた。

 

 テツ達が教会に入った後、何時もいつもなら教会の入り口は閉じられるのだけれど。大勢の入り切れない町民の為に、今日は扉を開けたままで司教様のお言葉が始まった。


 風の魔法が使われているのか、その声は外にいる僕たちにまでハッキリと聞こえる。


「アルテの町の人達よ、今日はこんなにも集まってくれてありがとう」


 先日と同じ、優しいお爺さんの声が届く。


「先日の神の儀式で、この町から素晴らしいスキルを持った少年が誕生したと聞き、一言お祝いを述べたいと思いこの町にやってきたのですが。ある少年と出会い、この町にはスキルだけでない素晴らしい少年少女に溢れていると感じました」


「不慣れな私を、自分の用事も放って案内してくれた少年。料理人のスキルで母親を助ける為に一生懸命頑張っている少女。その他にも、とても素晴らしい姿を見せて貰いました」


 僕の事を言ってくれている、あの時案内した町の皆んなの事も。

 

「その様な子らの為にも、私は精一杯の祈りを贈りたいと思います」


 司祭様が両手を組み合わせると、町の皆も同じ様に手を組み合わせる。

 

「神の子らに、祝福を!」


 言い終わると、司祭様がパッと両手をあげて広げた。


 そして、その広げた手の先から何かキラキラしたものが飛び出したように見えたと思ったら。そのキラキラは教会の天井近くまで舞い上がるとグルグルと回り、集まった人たちの頭の上へと降り注いだ。


 当然僕の頭の上にも降ってきたのだけれど、そのキラキラが触れた瞬間、僕の胸の辺りに何か暖かいものが生まれたように感じたんだ。


 ピコン!


(神の祝福を受けてスキルが進化しました。スキル『わらしべ長者』はスキル『わらしべ長者Max』へと進化します)


 ピコン!


(神の祝福を受けてスキルが進化しました。スキル『わらしべ長者Max』はスキル『わらしべ長者Extra』へと進化します)


 ピコン!


(神の祝福を受けてスキルが進化しました。スキル『わらしべ長者Extra』はスキル『わらしべ長者Hyper』へと進化します)


 ピコン!


(神の祝福を受けてスキルが進化しました。スキル『わらしべ長者Hyper』はスキル『わらしべ長者Infinity』へと進化します)

 

 えっ!? 何々、何なの? スキルが進化しましたと言っている?


 僕は慌てて周りの人の顔を見るけれど、誰も慌ててる様子はない。もしかしてコレって僕だけ? この声も、僕にだけ聞こえているの?


 僕が訳もわからずに慌てていると、勝手にスキル画面が開いた。


『名前、アベル

 年齢、十歳

 レベル、一

 スキル、「わらしべ長者」(2) → 神の祝福により「わらしべ長者Max」へ進化 → 神の祝福により「わらしべ長者Extra」へ進化 → 神の祝福により「わらしべ長者Hyper」へ進化 → 神の祝福により「わらしべ長者Infinity」(0)へ進化


 スキルの進化によりスキルポイントはリセットされました。


 現在のスキル『わらしべ長者Infinity』

 

 スキルの制限が解除され、スキルは任意に発動が可能になりました。

 

 スキルの制限が解除され、強制イベントを任意に止めることが可能になりました。

 

 スキルの制限が解除され、スキルの多重発動が可能になりました。

 

 スキルの制限が解除され、収納が使用可能になりました。

 

 スキルの制限が解除され、検索が使用可能になりました。

 

 スキルの制限が解除され、知識の泉が使用可能になりました』


 目の前に広がるスキル画面。

 

「何だ、コレ……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


目に止めて頂きありがとうございます。

これから毎日更新する予定です。


スキル『わらしべ長者』、手にしたアイテムは交換するまで手放せません。『わらしべ長者』でアイテム交換して勇者を目指します。


作品を少しでも面白いと感じられたら、フォロー、応援、よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る