朴念仁ですが生きてます。
喬恢 奏多
第1話
「(ああ……)」
いま、病院のベッドにいる。
俺は、静かに病院の天井を眺める。
体調とメンタルが同時に悪くなり、病院で入院している。
仕事は激務に終われて、体調が落ちてきた。
メンタルは、最近になって彼女と別れたことだ。
彼女は、仕事の残業終了に呼び出された。
スマホのメールには《話があるの。居酒屋・五右衛門に来て!》と呼び出された。
仕事の疲れがあったが、彼女に呼び出されたのであれば、話は別だ。
俺は、居酒屋の五右衛門に向かった。
俺の職場から走れば5分で辿り着ける場所だ。
呼び出された時は、内心喜んだ。
この時は、彼女のことは好きだった。彼女と会えば、心に癒しが響くと思ったから。
居酒屋の五右衛門に着いて、店の引き戸を開ける。俺は愛しい彼女を見つけた。
「いっらっしゃいませ」
店員の男性が、俺に気付き、出迎える。
「あっ、相席で待たしている人いるので」
「そうですか。ごゆっくりどうぞ」
俺は彼女に駆け寄る。
彼女の隣に男を見るまでは!
「……美奈」
俺は、彼女……葉山美奈の方を見る。
美奈は、身体を隣の男性に預けている。視線は俺に向けている。
俺が口を開く前に、美奈が先に口を開く。
「別れよう!」
「はっ?」
仕事疲れの眠り気が、美奈の一言で吹き飛んだ。
「別れるって……。理由はなんだよ!」
「はっ! 仕事仕事で、私のことを蔑(ないがし)ろにしてるじゃない!」
美奈の言葉に、俺はため息をつく。
「話はそれだけか?」
「未練たらたらだと思ってたけど、意外とあっさりね」
「……人が仕事をしている時に、別の男とベタベタするような女と付き合ってられるかよ」
俺は美奈と男を置いて、居酒屋・五右衛門を出た。
(おなか……すいたな)
居酒屋で夕食を食べる予定していたが、何も食べずに出てきた。
誰かが泣いているかのように、雨が降り出す。
雨は、俺のスーツに浸透していく。
美奈と付き合って、幸せな日もあった。
男と一緒にいたとこを見て、愛情が薄れていった。
「(美奈と一緒にいた男、どこかで見覚えがあるような……)」
俺は、美奈と一緒にいた男の事を思い出していた。美奈の言葉にキレて、男の顔を見ていなかった。
「(まぁ、どうでもいい……)」
街中で歩いている俺は、ギリギリ保っていた意識を手放した。
朴念仁ですが生きてます。 喬恢 奏多 @CANATA-KYOUKAI
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