第33話 ダンジョン突破

「コボルトの肉っておいしいかなー?」

 

「残念ながら、肉はドロップしてないぞ」

 

 ドロップするのは骨やぼろぼろの剣だ。紅王絶華の衝撃波が下に向くと、ぼろぼろの剣が二個折れたので、カイネは違う緊張感に包まれながら戦うこととなった。

 

 それでも、フロアを制覇するのに時間はかからなかった。

 

「雪斗、フロアボスをついでに倒したらどうだ。ポイントが多くはいるかもしれない」

 

「やってみる」

 

 雷矢であっけなく倒れされたボスは、悲鳴をあげる暇もなかった。

 雪斗も手ごたえのなさに首をかしげる。

 

「次にいくか」

 

「おお」

 

 これはちょっとモンスターが可哀そうになってきた――前言撤回。これは嫌だ。

 三階は、キラービーという蜂が飛び交っていた。

 

 カイネの最大の弱点――それは虫全般。

 一気に腰砕けになったカイネを、雪斗が憐みの目で見る。

 

 だが、数は多いのだからカイネも戦うしかない。

 

氷獣召喚ヒョウジュウショウカン! 行ってくれ、虎丸!」

 

 壁に避難して、目の前のキラービーだけ倒しながらカイネは羅刹虎丸の影に隠れる。

 親衛隊隊長としては情けなさマックスの姿だが、誰も見ていないことだけが救いだ。

 

 虎丸は、躍りかかり、牙を剥き、しっぽで打ち倒し八面六臂の活躍を見せた。

 せめてもの情けか、雪斗は別のフロアで戦ってくれたようだ。

 

「カイネの弱点だから仕方ないけどさー」

 

「……すまん」

 

「今日はビール二つにしてもらおうかな~」

 

「調子乗るなよ」

 

 ぼそっと釘を刺し、さらに上の階層に上る。

 二階は、ゴブリンだった。

 

 キラービーと同じく、ここでのドロップ品は魔石ばかりだ。上の階層は素材らしいものをあまり落とさないことが分かった。

 ゴブリンのボスフロアは、ホブゴブリンで手ごたえはやはりなかった。

 

 とうとう一階――地上の階は、スライムがわんさか沸いている。

 

「いったん、外に出ないか? 光を浴びたい、ここまでくると」

 

「そうしよう」

 

 雪斗とカイネが歩くだけで、面白いようにスライムが倒される。水風船を割るような感覚だった。

 

「久しぶりの地上ー!!」

 

「夕方だな」

 

 言って、二人ともしばらく黙り込む。世界がおかしくなってから、ずっと二人はダンジョンの中に居た。

 一見、外の景色は何も不幸など起こっていないように見えた。

 

 夕焼けを眺めていると、この数日のことが滑稽に思える。そんな二人の心をあざ笑うかのように、D端末が同時に鳴った。

 

 ――――――――――――――――  

 ――@管理者

[参加型イベントの告知]

 

本日18時~23時限定イベント

スライムを十体倒したものには50ポイントを付与します。

なお、不参加でも今回は懲罰はありません。 

 ―――――――――――――――― 

 

「今回は、か……意味深だな」

 

「今後、絶対参加タイプのイベントがありえるってことだね」

 

 悩んでいても仕方ないが、綺麗な空を見たあとの心がひどく汚れたように感じた。

 雪斗がダンジョンに向き直る。イベントに参加するつもりなのだろう。

 

 せっかくスライムがそばにいて、やらないのは勿体ない。

 

「待て、六時まであと五分あるぞ」

 

「……時間見てなかった。ステータスでも見るか」

 

 普段なら雪斗はこんなミスを犯さない。

 夕方の空は、思いのほか雪斗の心をえぐったものらしい。

 

 カイネは千ポイントを超えていたので、筋力に割り振ることにした。

 

――――――――――――――――  

 慎英カイネ レベル/11 ポイント100

氷華を咲かせる者グレイシャルブルーム

スキル/ 水分強奪(中)浄化(中)水球(中)疲労軽減(中)収納インベントリ(大)反響定位エコロケーション(中)水縛鎖(スイバクサ)(中)氷槍陣ヒョウソウジン(中)氷獣召喚ヒョウジュウショウカン(中)暗視(中)飛行(中)


体力:LvD

筋力:LvB

敏捷:LvD

防御:LvD

器用:LvE

走力:LvD

幸運:LvE

―――――――――――――――― 

 

 次はBからAに上げるには相当のポイントが必要そうだ。

 雪斗はバランスよく、スキルも育てたようだ。のぞき込むと、得意げな顔をする。

 

――――――――――――――――

菊王子雪斗  レベル/レベル11 ポイント260

マジックアーチャー

スキル /火矢(中)風矢(中)雷矢(大)

 反響定位エコロケーション(中)暗視(中)飛行(中)

体力:LvC

筋力:LvC

敏捷:LvC

防御:LvD

器用:LvD

走力:LvD

幸運:LvA

――――――――――――――――

 

 時間になると、雪斗とカイネはもう一度ダンジョンの一階に入った。

 ステータスを見ながら倒すと、スライム一体で1ポイントらしい。十体倒せば10ポイントのところ、今回はイベント参加によって50ということらしい。

 

 十体倒すと、すぐに60ポイントが入った。10ポイントとは別なのか。

 ゲームで生き残っているメンバーなどにはおいしい特典に違いない。

 

「……行こうカイネ」

 

「ああ」

 

 下山しても、あの頃には決して戻れない。

 

 それでも、二人は東京を目指して月影山を下り始めた。夜に背中を押されるように。 

 

 ひたひたと、この日の夜が始まりを迎えた。

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