第二章 立ちふさがるモノ
第31話 ダンジョン突破①
「いったんさ、外に出てみない?」
「……確かに気になるが」
カイネはポイントを、Bランクにあげる用としてとりあえず貯めておくことにした。
雪斗がまた酒でやらかさないでいてくれる前提だが。
「ずっとレベル上げしててもいいんだけどさ。大学でつるんでたメンツ、D端末で登録してなかったし」
「ここから、高田馬場はそうとう遠いぞ?多分電車はつかえない」
「うん、わかってるんだけどさ」
雪斗の秀麗な顔に憂いが帯びる。
ずっと隠していた不安だったのだろう。カイネは雪斗こそ守れればいい、という自分だけの主義を貫いてきたので、思いもしなかった。
オークションをいじっていると、個人の名前だけが商品名のものが出てきた。
ためしに触ると、――商品名と合致しません。と拒否された。
「そうか――
「そんなことが出来るのなら、アリだな。一宮空牙なんてそうそう同姓同名いないもんな!」
「空牙なら、春太と一緒だろう、まとめてポイントを送れば分割するはずだ」
試しに20ポイントずつ二回に分けて、オークションに乗せてみた。試しに雪斗が押してみるが、やはり同様に弾かれた。
あとは、当人に気が付いてもらうだけ。オークションは誰でも開ける――はず。
「あ」
雪斗が大きな声を出す。
「カイネ、見てこれ」
雪斗が見せてきたD端末は、掲示板だった。スレッドは探し人関連。
書きこめば1ポイント消費するが、雪斗が指したページには――。
シンエイカイネ、キクオウジユキト宛の生存メッセージだった。名前は出せないが、大学寮のそばの近くにみんなと居る。無事か――という内容。
「無事でいたか――」
久しぶりの安心感に、カイネは太い息を吐く。
スレッドは三日前。まだ、友達は生きていた――。
雪斗が1ポイント消費して、そのスレッドに返信する。千葉にいること。これから向かうこと。オークションでポイントを送ったこと。
これで、頑張って外に出る気力が生まれた。
あとの問題は、豚肉と騒いでいた雪斗だけだ。
「どうせ、お前のことだから突破する前にオークエリアで長く暴れて豚肉取っときたいんだろ」
「そうですよー、だって豚肉も牛肉もいざってときは絶対ポイント稼げるからね、オークションで」
にやっと笑って、雪斗は少しは元気の出た顔をする。
生まれ変わっても、そういう表情は前世の王太子の面影が強い。
「試しにオークション覗いてから取り掛かるか」
「あれが欲しいなー、アレ」
「アレじゃわからん」
カイネはD端末を覗く。
素材を出す人間も増えてきた。ダンジョンの攻略に挑むメンバーが増えてきているのだろう。
魔石はもう山のように出品されている。装備もいくつかあったが、写真からして貧弱そうだ。カイネたちが買った装備クリエイターとは別の人物だろう。
初期に出ていた園芸用品などもまだちょこちょこと残っている。ここはストアで買う人間が多いらしい。
「しかし、すごい増えたな……」
勉強机だの、漫画だのとりあえず家にあるものを全部放り込んだ雰囲気がかなり強い。
何か変わったものがあるとは思えなかった。そろそろカテゴリー別に売り場を見やすくしてほしいが、Dシステムはそんなことをしてくれると思えない。
むしろ、ダンジョン発生から次の日、なぜかダンジョンマップが追加されたのか。
本来あったものなら、初日のストアなどの解禁時に一緒に出すことに問題はないはずだ。
そこに、システムの――D運営の意図がなにかしら隠れているに違いない。
「あった!ポーション」
「ポーション!?」
雪斗が探していたものは、ポーションだった。まあ、ダンジョンものといえば定番かもしれない。
「試しに二個買ってみた」
「なぜいつも相談しないでやるんだ、お前は」
Dストアの段ボールが落ちてきて、カイネはため息をつく。
毎度のことながら、なぜこんなに不用意なのか。
雪斗が取り出したポーションは、おきまりのガラス瓶――というより試験管に見えた。
薄い水色のものが、試験管に入っていて、何かうさんくさい。
「怪しげな顔をすんなって。オークションじゃ嘘をつけないシステム分かってるだろうーに」
「それはそうだが……」
毒物じゃなかろうかという顔は、雪斗に丸見えだったようだ。
カイネとしては、前世は回復魔法で治すもので、ポーションはラノベや漫画の知識だ。
体力よりも、いわゆるMP的なスキルを使うと疲労する部分をどうにかしたい。
影魔法をバンバン使いながら、スキル『雷矢』をかるがる使える雪斗が異常なのだ。
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