第7話 ダンジョンバトル②

 雪斗が『魔法』を使う前に、カイネは一旦ポイントの割り振りを申し出た。

 優位はいくらあってもいいはずだ。

 カイネは、敏捷、走力、防御をDにあげる。

 

――――――――――――――――

 

慎英カイネ レベル/3 ポイント15

水の操者アクア・ヴォルテックス

スキル/ 水分強奪(中)浄化(中)水球(中)

体力:LvD

筋力:LvD

敏捷:LvD

防御:LvD

器用:LvE

走力:LvD

幸運:LvE

――――――――――――――――――

 

雪斗は、筋力に10ポイント降ったあと雷矢に40ポイントを振り込むという力技に出たが、中レベルに変化は起きなかった。強くするにポイントが足りないらしい。

極振りは怖いと言っていた人物だとは思えない。

 

「じゃあ行くよ――影のシャドウ・ウィップ

 

雪斗の足元から、影が直線状にしなる。

影はそのまま生き物のように、六階のグレートブルの中に突っ込んだ。

 

「すごい、六階って言ってもかなり広いよ、この先」

 

雪斗の影魔法は、攻撃を食らっても魔法の使い手には痛みは作用しない。

今は、前に竦むグレートブルたちを前に追い立てているのだろう。

 

段差の場所で出来ていた隙間が、興奮したモンスターで再びいっぱいになった。

瞬間、カイネの手元で紅王絶華こうおうぜっかが放たれる。

 

やすやすとグレートブルの巨体から、首が飛んだ。

一体、そして二体――太刀は音もせずに、頭部を跳ね上げる。

 

紅い花がゲームのモーションのように、ハラハラと花弁を散らしながら舞う中、カイネの白刃は止まらない。

 

「シャドウ・ブロード」

 

影を刃にした雪斗が、そこに参戦した。

刃渡りは日本刀に劣るが、刻みの入った黒いナイフは首の急所を捉える。

 

太い首根から、真っ赤な血が吹き出るが構わず雪斗は刺しきった。

カイネのようにはね飛ばせないのは、やはりポイントで筋力を育てていないからだろう。

 

気がつくと、目の前のグレートブルたちは視界からは消えていた。

足元には、倒したドロップ品が山となっている。

 

「カイネ凄いじゃん!」

 

「刀が凄いな、刃こぼれも血の汚れもない」

 

実際、使っていて前世の剣とはしなりが違った。

紅王絶華のスキルである毒の花弁が、グレートブルの動きも若干遅らせていたようにも思う。長期戦で、よりこの刀の真髄は光りそうだ。

 

ただし、カイネ自身の体は想定より。カインネフィア時代の身体能力を大幅に下回っている。

筋トレなどをして、最低限に体は作っていたが体はまだまだ重かった。

軽くため息をついて、カイネはドロップ品を拾っていく。紙を丸めて括った、ゲームでよくみるマジックスクロールのようなものがあった。

 

鑑定をかけると、どちらもレアドロップ。一つは『疲労軽減』、一つは『収納インベントリ』と書いてあった。

 

「収納ってゲームのアイテムボックスみたいなやつかなー」

 

「オークションで売れるかもな」

 

「何言ってんの、勿体ない!収納は貴重だよ、これで大量の肉も保存して持ち歩けるんだぞ」

 

言われて、カイネも貴重さを理解する。

ただ長期保存が出来るかどうかが、要であるが。武器が増えたり、登山リュックを背負ったまま戦わなくていいのは有難い。

 

グレートブルの肉はトータル十個。

牙と毛皮が、六個。

 

マジックスクロールが二つ。

 

レアドロップについては、雪斗の幸運値が作用したのかもしれない。

レベルは5に上がっていて、カイネのポイントは44に加算されていた。雪斗は25ポイントだ。

返り血でドロドロになった雪斗と自分に、浄化をかけると汚れも汗も見事に落ちる。

 

「一休みしよーぜ」

 

「ああ、そうするか」

 

戦利品を、飯盒などが置きっぱなしのキャンプ地に運ぶ。

 

「毛皮と牙は、加工素材って書いてあるだろ。僕らにはないスキルだけど、クラフター系のスキル所持者なら六階の素材は欲しいと思うんだよね」

 

雪斗が喉を鳴らすように水を飲んでから、話を切り出した。

 

「持ってても仕方ないなら、オークションでいいんじゃないか?売れるかわからないが」

 

「そこは僕もわからないけどさ。カイネの買った剣だって妙に安かったじゃんか。あれってクラフターの作品かもな、って思ったんだよね。とりあえずポイント欲しくて安めに売った可能性があるし。あと、全部は売らないからね。手持ちに一個ずつ残しておこ」

 

可能性としては、なにかしらであの装備を引き当てて売ったこともありえそうだが、あのクオリティを手放す格率は低そうだ。

また、売れるのであればポイントが緊急の自体に対策も出来ることになる。

 

「雪斗に任す」

 

「じゃ、カイネがマジックスクロール使ってね」

 

「なんでだ?」

 

「むしろ、僕が荷物管理していいの?」

 

自分で言うかと思ったが、お世辞でも返す言葉はない。

雪斗に管理能力がないのは、長い長い前世からの付き合いで身に染みていた。前から、そうしたことはカイネの仕事なのだ。

 

「疲労軽減は?」

 

「だって、浄化の出番多いし」

 

攻撃の為というより、生活スキルとしての配慮らしい。

理屈で雪斗に勝てたためしはないので、カイネはスクロールを開いた。

 

若干、肩の疲れが取れた気がする。

マイページを見ると、どちらもスキルとして登録されていた。

 

――――――――――――――――

慎英カイネ レベル/5 ポイント44

水の操者アクア・ヴォルテックス

スキル/ 水分強奪(中)浄化(中)水球(中)疲労軽減(小) 収納インベントリ(小)

体力:LvD

筋力:LvD

敏捷:LvD

防御:LvD

器用:LvE

走力:LvD

幸運:LvE

――――――――――――――――

 

「よーし、これはインベントリ育てるぞ!」

 

「分かった、とりあえず中にする」

 

ポイントを3振ると、他のスキルと同じくレベルが(小)から(中)に変化する。

 

「とりあえず、荷物全部入れてみて」

 

雪斗に促されて、カイネは何も無い空間に確かに収納インベントリがあることを確信しながら、手を伸ばした。

リュック二人分。飯盒。寝袋。折りたたみテント。脱いで入れてみた上着。ダンジョンのドロップ品たち。

 

どれもすんなりと入った。まだ、底がある気はしない。

 

「これも入れといて」

 

出したものをまた引っ張り出しているカイネに、雪斗がグレートブルの牙と毛皮を一つずつ差し出してきた。

入れたものは覚えておかないと、後が大変そうだ。

 

「じゃ、オークションやってみようか」

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