亡くなった友人が婚約者にプレゼントするはずだった物
春風秋雄
水原麻美に、また新しい彼氏ができたらしい
トイレに行こうと事務所を出て、給湯室の前を通ると、女性社員が噂話をしているのが聞こえた。
「ねえ、聞いた?水原麻美、こんどは総務の野村さんと付き合っているみたいよ」
「ええー、野村さん、私も狙っていたのに」
「この前、会社の近くの店で、二人で食事をしているのを見た人がいたらしいの」
「なんか水原麻美って、婚約者の木下さんが亡くなってから、手当たり次第に男を替えているよね」
「本当だよ。ちょっと綺麗だからって鼻にかけているのよ。もういい年なんだから落ち着けばいいのに」
「そうだよね。確か32歳じゃなかった?もうオバサンなのにね」
「早く結婚して辞めてくれたらいいのにね」
女性社員の会話は聞くに堪えず、俺は速足でその場を離れた。
そうか、水原麻美は、今度は野村と付き合っているのか。そう言えば野村も亡くなった木下達也と仲が良かったな。木下が亡くなってから、水原さんが付き合ったという噂が流れた男は、すべて木下と仲が良かった奴ばかりだ。噂になった男連中は、仲の良かった木下の婚約者だった水原さんと付き合うことに、抵抗がないのだろうか。でも、木下が亡くなってもう3年になる。そんなことは関係ないのかもしれない。まあ、しょせん他人事だ。俺には関係ないことだ。俺はそんなことを考えながら用を足し、事務所に戻った。
俺の名前は杉内大吾。35歳の独身だ。地方から東京の美術大学に進学したが、周りの才能に圧倒されて、絵の道は諦めて、都内の総合商社に就職した。現在は広告宣伝部でデザインの担当をしている。3年前に亡くなった木下は俺と同期だった。仕事中に突然倒れて、救急車で病院に担ぎ込まれたが、そのまま帰らぬ人となった。脳溢血だった。木下には婚約者がいた。それが水原麻美だ。水原さんはショックでしばらく会社を休んでいた。半年くらい休業して仕事に復帰したが、以前のような明るさはなかった。それでもその容姿から言い寄ってくる男性社員は多かった。そのほとんどは木下とはあまり関わっていなかった連中だ。水原さんはことごとくその誘いを断っていたようだ。ところが、会社に復帰して半年もしないうちに、突然佐藤という社員と付き合い始めたという噂が流れた。佐藤は木下が一番可愛がっていた部下だ。俺たちの2年後輩で、よく飲みに連れて行っていたようだ。まるで兄弟のようだと周りでは話していた。俺も2~3回その中に入れてもらい飲みに行ったことがある。仕事でもプライベートでも何でも話し合える間柄だということが見ていてよく分かった。そんな佐藤が水原さんと付き合いだしたと聞いて、信じられなかった。木下の代わりに水原さんを幸せにしてあげたいと考えたのかもしれないが、まだ木下の三回忌も終わっていないのに、いくら何でも早すぎるだろと思わずにはいられなかった。
しかし、それから3か月ほどした頃に、今度は田中と付き合い始めたという噂が流れた。佐藤は振られたのだろうということだったが、親しい人間が佐藤にそのことを聞いても何も話さなかったという。田中は俺たちと同期だった。同期会の幹事をしており、木下は副幹事だった。新入社員研修のときから、二人がリーダーシップをとって、同期をまとめていた。だから、木下と田中はけっこう仲が良かったと思う。そんな田中も半年もしないうちに別れたという噂が流れた。
そして、田中の次は黒田だったが、黒田は既婚者だったので、不倫だという噂が流れた。その黒田も1か月ほどで噂が消え、その次は山本、斎藤と続き、今回は野村ということだった。みんな木下と仲が良かったメンバーだ。どうして水原さんは木下と仲の良かった男たちと付き合うのだろう。木下が信頼していた連中だから、水原さんも安心だということかもしれない。それにしては付き合う期間が短い。俺と水原さんは部署が違うので、水原麻美という人間を認識したのは、木下から好きな人ができたと聞かされたときだった。だから、俺は水原さんを異性として意識したことはない。それでも木下が大切に思っていた女性なので、心配になる気持ちはあった。
野村と付き合いだしたという噂を聞いて2か月もしないうちに、もう別れたという噂が流れた。今回は野村が振られたのではなく、野村に新しい彼女ができたということだった。ということは、水原さんが振られたということだろうか。
そんな噂を耳にして1ヵ月もしないうちに、会社帰りに水原さんが俺に声をかけてきた。
「杉内さん」
振り返ると、水原さんが立っていた。
「今日、このあと何か予定ありますか?」
「特に予定はないけど・・・」
「食事でも付き合ってもらえませんか?」
おいおい、今度は俺がターゲットにされたのか?木下とは入社から5年くらいはよく遊んだりして仲良かったが、俺が広告宣伝部へ移ってからはそれほどでもなかった。ましてや水原さんと付き合いだしてからは、ほとんど交流もなかった。そんな俺にまで声をかけてきたのか。しかし、どうして水原さんが木下と仲が良かった男性に興味があるのか、聞いてみたくなった。
「いいですよ。どこか良い店を知っていますか?」
「パスタが美味しいイタリアンの店があるのですが、そこでどうですか?」
「いいですね。そこに行きましょう」
さて、いったいどういう話になるのか、俺はなぜかワクワクしていた。
水原さんが連れて行ってくれた店はカジュアルなイタリアンレストランだった。メニューを見ると、ペローニビールを置いていたので、注文した。パスタは水原さんのお勧めを注文し、ピザを1枚頼んで二人で分けようということになった。
ペローニで乾杯したあと、今更ながらだが、木下のお悔やみを伝えたあと、近況を聞いたりして過ごすと、パスタが運ばれてきた。とても美味しい。
「美味しいですね。水原さんがお勧めするはずです」
「よかった。さんざんお勧めして気に入ってもらえなかったらどうしようと思っていたの」
「それはそうと、この1年くらい、色々な男性と付き合っては別れていると噂されていますけど、真相はどうなんですか?しかも、噂の男性は皆、木下と仲の良かった連中だ」
俺がいきなり切り込んだので、水原さんは黙り込んでしまった。
「まあ、話したくなければ話さなくてもいいですけど」
「そういうふうに噂されていたのですね。全然知りませんでした」
「別に付き合っていたわけではないということですか?」
「ええ、皆さんには相談に乗ってもらっていただけです。それより、杉内さんも達くんと仲良かったって野村さんから聞きましたけど、本当ですか?」
木下は水原さんから達くんて呼ばれていたのか。
「そうですね。同期ですからそれなりに付き合いはありました。でも水原さんと付き合うようになってからは、交流はほとんどありませんでしたけど」
「杉内さんは、達くんから何か預かっていませんでしたか?」
唐突な質問に俺は面食らった。預かりもの?
「ちょっと記憶にないですけど、どういう物ですか?」
「どういう物かはわからないですけど、何でもいいので、達くんから何か渡された物ないですか?」
「いつ頃の話しでしょうか?亡くなる少し前ということですか?それともずっと前?」
「それもわからないのです」
一体、どういうことなのだ?
水原さんの話によると、生前木下は、「結婚式が終ったら麻美にプレゼントがある」と言っていたということだ。プレゼントって何?と聞いても教えてくれなかった。でも「見たら麻美は絶対に喜ぶはずだ」と言っていたらしい。そのプレゼントは信頼できる友人に預けているので、結婚式が終ったら持ってきてもらうつもりだと言っていたということだった。
「じゃあ、そのプレゼントを探すために木下と親しかった奴に相談していたというわけですか?」
「そうです。でも結局、誰もそんな物は預かっていないようで、会社関係の人だけでなく、学生時代のそれらしい友達にも聞いたのですけど」
「そうですか。いったい何だったんでしょうね」
「杉内さんも心当たりないですか?」
「預かり物はないですが、木下からもらったものはいくつかあります。でも、水原さんへのプレゼントになりそうなものは・・・」
「それでも、一度見せてもらえませんか?」
「じゃあ、今度持ってきましょうか?」
「お願いします」
俺たちは連絡先を交換して、次に会う日時と場所を決めて別れた。
次の土曜日に俺たちはファミリーレストランで会った。
「これが木下からもらった物です」
俺がいくつかの品を見せた。
木下がタバコをやめたからと言ってもらったライター。今は俺もタバコをやめたので使っていない。入社1年目の時に、俺の誕生日会を開いてくれて、その時に誕生日プレゼントとしてもらったボールペン。同期のメンバー何人かと海に行ったときに、木下が「新しいのを買ったので、もう使わないから」と言ってくれたサングラス。すべてもらった物で、預かったものではない。何より、水原さんが喜びそうな物は何もなかった。それぞれの品を説明したところ、水原さんは残念そうだったが、ポロリと言った。
「杉内さんは達くんと仲良かったのですね」
「そうですね。入社して5年くらいまでは結構一緒に遊んだりしていました。僕が広告宣伝部に行ってからは会う機会が減って、水原さんと付き合うようになってからはほとんど交流がなかったです」
「それじゃあ、私が二人の仲を引き裂いたようなものじゃないですか?」
「そんなことないです。男同士というものは、普段会っていなくても、何かあれば助け合いますし、機会があれば久しぶりに飲もうかということにもなります。ただ、会社組織の中では、友達よりも同じ部署の人間を優先しますし、部下を持つようになれば、部下との交流を優先するということです」
「男の人って、いいですね。普段会っていなくても、信頼しあっていると言った感じで」
「まあ、そういう人ばかりではないでしょうけどね。少なくとも、私と木下はそういう関係だったと思います」
俺たちは、それから木下の思い出話をした。俺が知らない一面を木下は女性の前では出すようで、それはそれで面白かった。こうやって話していると、水原麻美という女性は、本当に良い人だなと思った。美人で、性格も良い。木下が惚れるのも当然だと思わずにはいられなかった。
水原麻美から相談があると言ってきたのは、それから2週間ほどしてからだった。平日だと会社の連中に見られて、また有らぬ噂をたてられるのは嫌なので、休みの土曜日に会うことにした。
「相談って、何でしょう?」
「実は、以前相談に乗ってもらった田中さんに交際を迫られていて、どうしていいのかわからないのです」
「田中が水原さんと付き合いたいと言っているのですか?」
「遠まわしですけど、そういうことだと思います」
「なるほど、田中の気持ちもわからないではないですけど、それで、水原さんはどうしたいのですか?」
「私も32歳ですから、いつまでも達くんのことを引きずっても仕方ないとは思っていますけど、まずは達くんが私に何をプレゼントしようとしていたのか、それを突き止めないと気持ちの整理ができないと思っています」
「だったら田中にはっきりとそう言えばいいと思いますよ」
「杉内さんから田中さんに、それとなく言ってもらうわけにはいきませんか?」
「私からですか?それはダメでしょう。私が言っても聞く耳を持たないでしょう」
「やっぱりそうですよね」
「ひょっとして、木下からのプレゼントが何だったのかわかったら、田中と付き合ってもいいと思っているのですか?」
「はっきり言って、田中さんはタイプじゃないです。ただ、達くんがいなくなって、もう3年ですから、寂しいと思うことはあります。お付き合いまではいかなくても、一緒に食事をしたり、お話をする相手が欲しいなと思うことはあるんです」
「それは、タイプではない田中とでも、ということですか?」
「だって、今のところ、他にそんな人いないじゃないですか」
「それは、田中が可哀そうです。あなたはそんな気はなくても、一緒に食事をすれば田中はデートだと思うでしょう。このままいけば水原さんと付き合えると思い込んでしまうと思います」
「そうですよね」
「お友達をつくることです。1対1でなくてもいいじゃないですか?グループでも。その中から1対1で食事をしたり、映画をみたりできる友達ができると思いますよ」
「じゃあ、杉内さんが私と友達になってくれませんか?」
「私がですか?」
「達くんのプレゼントの件で、何人かお会いしましたけど、達くんのお悔やみを言ってくれたのは、杉内さんだけでした。話していても、達くんのことを一番信頼して、本当の友達だと思ってくれていたのは杉内さんでした。何より、杉内さんと達くんのことを話していると、何故かとても心が落ち着くんです」
「わかりました。いいですよ。たまに会って、食事でもしながら、木下のことを話しましょう」
「本当ですか?嬉しいです」
俺たちはそうやって、木下の友達と木下の婚約者という関係から、友達という関係になった。水原さんが相談があると言って俺を呼び出したのは、ひょっとするとそれが目的だったのかもしれない。
友達という関係になってから、水原さんは頻繁に俺に連絡してくるようになった。一緒に食事をしたり、飲みにいくこともたまにあるが、週に2~3回は電話をしてきて、仕事の愚痴をこぼしたり、テレビドラマの話をしたりした。水原さんはそれが心地よいようで、私が新しい恋に踏み出せるまで、できたら杉内さんは彼女を作らないでと冗談交じりに言ってくる。なんか、不思議な関係だった。
水原さんは相変わらず木下からのプレゼントを探しているようで、会社関係の友達はすべて聞きつくし、今は学生時代の友達を高校まで遡って聞いているようだ。木下の家族にも事情を話しており、お母さんと妹さんが学生時代の友達に連絡をして聞いてくれているらしい。ただ、木下のお母さんは水原さんの将来を気にしているようで、早く新しい人生を歩みなさいといつも言ってくると言っていた。水原さんは就職してすぐに、お母さんを事故で亡くしたそうで、木下のお母さんを実の母親のように慕っている。俺も木下とよく遊んでいた頃、木下の家には何回か泊まらせてもらった。夕食だけご馳走になったことも何度かある。その都度木下のお母さんには世話になっていた。優しくてとても良い人だと思った。俺は親元を離れて上京し、学生時代は学生寮で暮らしていたので、寮母のような役割をしていた食堂のオバサンを母親代わりに慕っていたが、社会人になり独り暮らしを始めると、そういう存在もいなくなり、たまに木下の家で木下のお母さんに優しくされると心が温かくなった。木下に今日は俺の家に来ないかと言われると嬉しかったものだ。木下のお母さんとは木下の葬儀のとき以来会ってはいないが、水原さんを通じて元気そうな近況を聞けたのでほっとした。
水原麻美との友達という関係が1年ほど続くと、二人とも遠慮がなくなってきた。お酒に酔うと、麻美は俺に甘えてくるようになり、俺もそれが心地よくなっていた。
その日麻美は、かなり酔っていた。終電が近いというのに、まだ飲むと聞かず、結局終電を逃してしまった。
「大吾!今日は私、大吾の家に泊まる!」
「外泊したらお父さんが心配するだろ?」
「私、もう33歳だよ?オバサンだよ?父親に心配される年じゃないよ」
「まあ、そうかもしれないけど、俺の部屋、シングルベッドしかないから」
「一緒に寝ればいいじゃない」
「俺も男なんだから、麻美が隣に寝ていたら眠れないじゃないか」
「いいよ。今日は大吾に何されてもいい。この1年、私のために彼女も作らず、友達でいてくれたんだもの。1回くらい、何されてもいい」
「お前、酔っているだろ?」
「酔っているよ。酔っていなきゃ、こんな本音を言えないじゃない。いいから、タクシーに乗ろう!」
どうなることやら、なるようになれと俺はタクシーを止めた。
麻美が俺の部屋に来るのは初めてだった。木下は何度も俺の部屋に泊まっている。木下や、他の男連中であれば朝まで飲んで雑魚寝で十分だが、麻美の場合は、さすがにそういうわけにはいかない。麻美をベッドで寝かせ、俺はソファーで寝るしかないなと考えながら部屋に上がった。
「コーヒーでも淹れるから、そのへんに座っててよ」
俺はそう言って台所へ行き、ケトルに水を入れスイッチを入れた。戻ると、麻美は突っ立ったまま、一点を見つめている。
「この絵、どうしたの?」
麻美が見ているのは、壁に掛けてある、俺が大学時代に描いた10号の油絵だった。
「それは大学時代に俺が描いた絵。一番気に入っている絵だったので、それだけは処分せずに飾っている」
「お母さん・・・」
「え?」
「これ、学生寮の食堂で働いていた時のお母さんだよ」
三角巾を頭に被り、額縁の中で微笑んでいる女性は、確かに俺が学生時代に住んでいた学生寮の食堂のオバサンだった。
「これ、俺が学生時代に住んでいた学生寮の食事の世話をしてくれていた千春さんだよ?」
「千春は母の名前です」
寮にいたときは、皆千春さんと呼んでいて、苗字までは知らなかった。そうだったのか、千春さんは麻美のお母さんだったのか。
「なあ、木下と付き合う前に、木下にお母さんの写真を見せたことある?」
「まだ付き合う前だったけど、お母さんってどんな人だったのって聞かれたから、学生寮の食堂で働いていたと説明したら、どこの寮って聞くので寮の名前を言ったら、写真を見せてと言うので、写真を見せたことある」
そうだったのか。そういうことだったのか。
「麻美、木下が言っていたプレゼントって、この絵の事だったと思う」
「え?どういうこと?これは大吾が描いた絵でしょ?」
「木下が麻美と付き合う前に、ここに来て一緒に飲んだんだ。あいつ、麻美に告白したいけど、勇気がないっていうから、水原さんに告白して結婚までしたら、俺は木下の望むものを何でも結婚祝いでプレゼントするって言ったんだ。ただし、10万円以内で買える物って条件つけたら、じゃあこの絵をくれと言うので、この絵はダメだから、10万円以内で買えるものを考えておけって言ったのに、どうしてもこの絵がいいというから、俺も酔っていたので、わかった水原さんと結婚したら、結婚式にこの絵を担いで持っていくって言ったんだ。こんな素人が描いた絵を本気で欲しがるとは思わなかったから、あいつは俺がこの絵を大切にしていることを知っていたので俺を困らせるために言ったのだと思っていた。実際結婚するときは、10万円くらいのものをリクエストさせようと思っていたんだ」
「達くんはこの絵が私のお母さんの絵だと知っていたんだね」
「あいつはここに何回も泊まりに来ているから、この絵のモデルは俺が学生時代に住んでいた学生寮の食堂のおばさんだって説明したこともあったし」
「そうか、この絵だったんだ」
麻美がポロリと涙をこぼした。
「お母さん、とてもいい笑顔をしている」
「とても親切で、優しくて、本当のお母さんみたいな人だった。だから、どうしても千春さんの絵を描きたかったんだ。そうか、千春さん、亡くなっていたんだ」
麻美が俺に抱きついてきて泣き出した。
「ありがとう、こんな素敵な絵を残してくれて」
「じゃあ、この絵は木下との約束だから、麻美にあげるよ」
「この絵、大吾と私の二人の物にしたらダメかな?」
「二人のもの?」
「毎日、毎日、二人でこの絵を見たい」
「木下が麻美にプレゼントする予定だった物がわかったら、新しい人生を歩むって、言っていたよね?それ、俺でいい?」
「大吾しか考えられない」
俺はゆっくりと麻美を抱きしめ、優しくキスをした。唇を離したちょうどその時、ケトルのお湯が沸き、カチッとスイッチが切れる音がした。俺たちはそれを気にも留めず、どちらからともなくベッドに横になった。
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