卓上ルーレット占い機

 その喫茶店のテーブルの上に置かれていたのは、今どき懐かしい球形の機械「ルーレット占い機」だった。

 百円玉をスリットに押し込む。

 ルーレットが回転する。

 ポトリと転がり出たロール状のおみくじを指先で広げ、運勢を読む。

「どうしたの? 嬉しそうだね」

 いつの間に来たのか、友人が目の前に座っていた。

「大吉が出たんだ。しかも、待ち人来たる、と書いてある」

「じゃあ僕が来たからアタリだね」

 友人はそう言って笑った、はずだ。

 その時の記憶は確かにある。

 けれど、それがいつで、どこの喫茶店だったのか、覚えていない。

 あの時待ち合わせをしていた友人の顔も名前も思い出せない。

 私の手元には、あの日のおみくじの紙だけが残っている。

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