『俺達のグレートなキャンプ150 ラジオの中継に割り込んでどんちゃん騒ぎだ』

海山純平

第150話 ラジオの中継に割り込んでどんちゃん騒ぎだ

俺達のグレートなキャンプ150 ラジオの中継に割り込んでどんちゃん騒ぎだ


「よっしゃあああああ!今日は記念すべき150回目のキャンプだぜええええ!!」


石川が両腕を力いっぱい突き上げ、朝日に向かって雄叫びをあげる。

その声量はもはや騒音レベルで、山間のキャンプ場全体に響き渡る。

木々を揺らし、鳥たちを飛び立たせ、まだ夢の中にいた近隣のテントの住人たちを

強制的に現実世界へと引き戻していく。

あちこちのテントから「うるせぇ...」「まだ朝の七時だぞ...」「誰だあの馬鹿...」

という呻き声や怨嗟の声が漏れてくる。


だが石川はまったく気にする素振りを見せない。

それどころか、満面の笑みを浮かべながら、

まるでオリンピック選手がウォーミングアップするかのように、

テントの前で準備運動を開始する。

その動きは異様に本格的で、片足を高々と上げてストレッチし、

腰をぐるぐる回し、最終的にはシャドーボクシングまで始めた。

左ジャブ、右ストレート、アッパーカット。

その一連の動作は妙に様になっており、

どこで覚えたのか本格的なフットワークまで披露している。

足音がタンタンタンとリズミカルに響く。


「150回ってすごいっすね!記念すべき日っす!

これはもう国民の祝日にしてもいいレベルっす!

キャンプの日!いや、グレートキャンプの日っす!」


千葉も負けじと声を張り上げる。

彼の目はまるで子供が遊園地に連れて行ってもらえると知った瞬間のように

キラキラと輝いており、その瞳孔は興奮で開ききっている。

まだキャンプ歴半年ほどだというのに、すっかり石川のペースに染まってしまっており、

もはや常識というブレーキが完全に壊れてしまっている。


手には淹れたてのコーヒーが入ったマグカップを持っているのだが、

興奮のあまり手が小刻みに震えており、

中身が波打って縁からジャバジャバと溢れそうになっている。

すでに何度か手にコーヒーがかかっているはずだが、本人はまったく気づいていない。

それどころか、空いている方の手で石川に向かってガッツポーズを作り、

「グレート!グレート!」と連呼し始めた。

その勢いでマグカップが大きく傾き、ついにコーヒーが地面にドバッとこぼれる。

「あ」と千葉が一瞬だけ我に返るが、すぐに「まあいいや!」と笑顔に戻った。


「はいはい、静かに。まだ朝の7時よ...

というか、あなたたち、周りの人のこと少しは考えなさいよ...」


富山が眉間に深いシワを寄せながら、

まるで暴走する子供たちを制止する母親のように、

両手を下に押し下げるジェスチャーをする。

彼女の髪は寝癖で左右にハネており、まだ完全には目が覚めていない様子で、

目元にはうっすらと寝た跡がついている。

パジャマ代わりのトレーナーは若干よれており、

スリッパを引きずるように歩く姿からは

「本当はもっと寝ていたかった」というオーラが滲み出ている。


だが、長年の付き合いで培われた危機察知能力が、

彼女の眠気を吹き飛ばそうとしている。

この石川のハイテンションぶりは、何か厄介なことが起こる前兆だ。

これまで何度この光景を見てきたことか。

そのたびに富山は巻き込まれ、謝罪し、時には逃げ、そして結局は疲れ果ててきた。

胃がキリキリと痛み始める。まだ朝食も食べていないのに。

彼女は無意識に自分のお腹を押さえた。


「でさあでさあ!150回目の記念キャンプだろ?

だから今回は超スペシャルな、いや、

超ウルトラスーパーデラックススペシャルな暇つぶしを用意してきたんだよおおお!

これはもう伝説になるぜ!後世に語り継がれるレベル!

孫の代まで語り継がれる!いや、ひ孫の代まで!」


石川がリュックからゴソゴソと何かを取り出す。

その仕草はまるでマジシャンが帽子からウサギを取り出す前のように大げさで、

わざとらしく「何が出るかなー?何が出るかなー?」と歌いながら、

体を左右に揺らし、ついにそれを引っ張り出した。


それは普通の小型トランジスタラジオではなく、やけに大きくて立派な、

まるで昭和の時代に町内会の運動会で使われていたような、

アンテナがニョキニョキと三本も伸びている業務用っぽい代物だ。

しかもなぜかステッカーが貼られており、

「最強」「無敵」「グレート」という謎の単語が躍っている。

さらによく見ると「石川専用」というシールまで貼られていた。


「ラジオっすか? ラジオ聴きながらのんびりキャンプ、いいっすね!

風流っすね!秋の夜長にラジオっすよ!

あ、でもまだ朝だった!秋の朝にラジオっす!

朝からラジオ体操っすか!?それともラジオドラマ!?」


千葉が目を輝かせる。

彼の解釈は常にポジティブで純粋で、そして的外れだ。

きっと石川が「空を飛ぼう」と言っても「いいっすね!何時に飛びますか!?」

と答えるに違いない。

彼の頭の中では、すでにラジオを聴きながらコーヒーを飲み、

のんびりと焚き火を見つめる自分の姿が浮かんでいる。

その想像の中の自分は、なぜか麦わら帽子を被っていた。


「違う違う!ただ聴くんじゃないんだよ、千葉!

そんな生ぬるいことするわけないだろ!

俺たちは『奇抜でグレートなキャンプ』がモットーだぜ!?」


石川がニヤリと笑う。

その笑顔には確実に何か企んでいる雰囲気が漂っている。

目が怪しく光り、口角が不自然なほど上がっている。

まるで悪役が「計画通り...」と呟く直前のような表情だ。


富山の嫌な予感がさらに強くなる。

背筋がゾクッと寒くなり、心臓の鼓動が早くなる。

彼女は無意識に一歩後ずさった。

逃げたい。今すぐこの場から逃げたい。

でも逃げられない。なぜなら、荷物も車も全部ここにある。

そして何より、長年の友人を見捨てるわけにはいかない。

いや、正確には「見捨てたら後で文句を言われる」という経験則がある。


「実はな、今日の午後2時から、地元のFMラジオ局

『エフエムマウンテンウェーブ』が、

このキャンプ場で生中継するんだよ!

キャンプ場リポートってやつ!

俺、昨日ネットで偶然見つけてさ!

これは運命だと思ったね!

150回目の記念日に、ラジオの生中継!

こんな偶然ある!? ないよな!?」


石川が興奮気味に語る。

その目は完全にイッちゃっている。

まるで宗教の信者が啓示を受けたかのような表情だ。


「へえええ!すごいっすね! このキャンプ場、有名なんすね!

さすがっす!石川さんがいつも選ぶキャンプ場は一流っす!

で、で、それで!? ラジオに出るんすか!?

サイン色紙とか用意した方がいいっすか!?」


千葉が前のめりになる。

もうすでに頭の中でラジオ出演している自分を想像しており、

どんな自己紹介をしようか、何を話そうか、

もしかしたら有名人になれるかもしれない、

などという妄想が膨らんでいる。

彼の口元は緩みっぱなしで、よだれが垂れそうだ。


「で? それがどうしたの、石川...

というか、聞きたくないけど聞かなきゃいけない気がするから聞くけど、

あなた、何を企んでるの...?」


富山が恐る恐る聞く。

声は震えている。

喉がカラカラに渇いており、唾を飲み込む音が妙に大きく聞こえた。

石川の次の言葉を聞きたくない気持ちと、

知っておかないとまずい気持ちが交錯する。

頭の中では「嫌な予感しかしない」という警報が鳴り響いている。

できることなら今すぐ耳を塞ぎたい。


「決まってんだろ! その中継に割り込んで、

俺たちでどんちゃん騒ぎするんだよ!

『俺達のグレートなキャンプ150回記念!』ってな!

ラジオのリスナー全員にこの喜びを分かち合うんだああああ!

山梨県中、いや、日本中に俺たちの声を届けるんだ!

グレートな波動を電波に乗せて!」


石川が拳を高々と振り上げる。

その瞳には狂気じみた情熱が宿っており、

額には興奮による汗が光っている。

彼の脳内では、すでにラジオのパーソナリティと

和気藹々と話している自分の姿が映し出されているのだろう。

リスナーからの反響、賞賛の声、そして伝説の誕生。

彼の妄想はもはや止まらない。


「最高っすううううう! ラジオデビューっすね!

俺、何話せばいいすか!?

『どうも皆さん、新人キャンパーの千葉です!』

みたいな感じっすか!?

それとも『グレートなキャンプへようこそ!』みたいな!?

あ、キメ台詞考えた方がいいっすかね!?

『キャンプは人生だ!』とか!

『焚き火の向こうに未来が見える!』とか!」


千葉も即座に乗っかる。

もう完全に妄想の世界に入り込んでおり、

すでに頭の中で自己紹介の練習を始めている。

口をモゴモゴさせながら、手で架空のマイクを持つジェスチャーをし、

「えー、皆さん、こんにちは」と小声で練習している。

その姿はまるで鏡の前で告白の練習をする中学生のようだ。


「ちょっと待って、ちょっと待って待って待って!

何を言ってるの!? 何を言ってるのあなたたち!?」


富山が両手を前に突き出し、必死に制止しようとする。

額には冷や汗がダラダラと流れ落ち、

顔色は真っ青になっている。

心臓が口から飛び出しそうなほどバクバクと鳴っている。

これはダメだ。完全にダメなパターンだ。

過去の経験が、そう告げている。


「それって完全に迷惑行為じゃない!?

放送事故になるわよ!?

というか、確実に放送事故になるわよ!

テレビだったらモザイクかかるレベルよ!?

それに、ラジオ局の人たちだって困るでしょ!?

真面目に仕事してる人たちの邪魔しちゃダメでしょ!?

というか、他のキャンパーの人たちにも迷惑かかるし!

ここ、人気のキャンプ場なのよ!?

みんな静かに自然を楽しみに来てるのよ!?

それを、それを...どんちゃん騒ぎって...」


富山の声はどんどん大きくなり、最後の方は悲鳴に近くなっている。

彼女の中で理性と諦めが激しく戦っている。

「止めなければ」という使命感と、

「どうせ止められない」という絶望感が入り混じる。


「大丈夫大丈夫! むしろ盛り上がるって!

キャンプの楽しさをラジオで伝えるんだから、

ラジオ局も喜ぶよ!

むしろ感謝されるね!

『視聴率上がりました!ありがとうございます!』

ってお礼言われるかもしれないぞ!

Win-Winってやつ!

いや、Win-Win-Winだ!

俺たちも嬉しい、ラジオ局も嬉しい、リスナーも嬉しい!

三方良しってやつ!近江商人もびっくり!」


石川が親指を立てる。

その自信満々な態度と、まったく根拠のない確信に、

富山は頭を抱える。

両手で顔を覆い、指の間から石川を見る。

もうダメだ。完全にダメだ。

この男は何も分かっていない。


「Win-Winの意味分かってる!?

三方良しの意味も分かってないでしょ!?

それにあなた、前にも似たようなことして怒られたでしょ!?

海水浴場の取材のときに、背景で

『グレートだぜええ!』『夏だぜええ!』『海だぜええ!』

って連呼して叫んで、

地元の観光協会から苦情来たじゃない!?

あのとき何て言われたか覚えてる!?

『二度と来るな』って言われたのよ!?

出禁よ、出禁!」


富山が過去の悪夢を思い出し、顔をしかめる。

あの時の光景が鮮明に蘇る。

テレビカメラの前で全身ピンクの水着を着て、

サングラスをかけた石川が飛び跳ねていた姿。

そして観光協会の受付で冷たい視線を浴びながら謝罪した自分の姿。


「あれは良い思い出だよな〜

あの日の海、最高にグレートだったもんな〜

波も良かったし、天気も良かったし、

俺たちのテンションも最高潮だったし」


石川が遠い目をして空を見上げる。

反省の色はまったくない。

むしろ懐かしそうな、愛おしそうな笑みを浮かべている。

彼の脳内では、あの日の映像が美化されて再生されているのだろう。

スローモーションで、キラキラしたエフェクト付きで。


「良い思い出じゃないのよ!

トラウマなのよ!

謝罪に行ったの私なのよ!?

あなたたち二人は逃げたじゃない!

『ちょっとコンビニ行ってくる』

って言って帰ってこなかったじゃない!

私一人で三十分も頭下げ続けたのよ!?

首が痛かったのよ!?

しかも菓子折り代も私が出したのよ!?」


富山の声が裏返る。

確かにあの時、富山が一人で観光協会に菓子折りを持って謝りに行った。

受付の人の冷たい視線、

上司らしき人の呆れた表情、

そして最後に言われた「もう来ないでください」という言葉。

それらを今でも鮮明に覚えている。

夜、一人で泣いた。布団の中で。


「まあまあ、富山さん! 今回は大丈夫っすよ!

だって石川さん、ちゃんと準備してるみたいだし!

前回は準備不足だったんすよ、きっと!

今回は完璧っす!」


千葉が無邪気にフォローに入る。

だが、その言葉が富山の不安を増幅させる。

石川の「準備」ほど恐ろしいものはない。

それは災害の準備と同義だ。

彼が準備すればするほど、事態は悪化する。

それがこれまでの経験則だ。


「そうそう! 見てみろよ、これ!

完璧な準備だぜ!」


石川が別のバッグから次々と何かを取り出す。

それは色とりどりのパーティーグッズだった。

ピカピカ光る電飾付きの変なサングラス、

キラキラのモール、

そして「150」と大きく書かれた手作りの横断幕。

横断幕には周りに星のシールが貼られ、

なぜかグリッター(ラメ)までまぶされている。

さらには花火まである。

しかも打ち上げ花火。

しかもかなり大きい。


「準備万端だろ!?

これだけあれば、ラジオのパーソナリティも

『わあ!すごい!』って驚くぜ!

むしろ『一緒に盛り上がりましょう!』

って言ってくれるかもしれないぞ!」


石川が得意げにグッズを並べる。

その顔は達成感に満ちており、

まるで完璧な計画を立てた天才発明家のような表情だ。


「準備の方向性が完全に間違ってるのよおおお!

というか花火!?

花火持ってきたの!?

ここ、花火禁止のキャンプ場よ!?

看板に書いてあったでしょ!?

『午後九時以降花火禁止』じゃなくて、

『花火全面禁止』よ!?

読めなかったの!?

日本語読めないの!?」


富山が叫ぶ。

もはや頭を抱えて地面に膝をつきそうだ。

血圧が上がっているのが自分でも分かる。

こめかみがズキズキと痛む。

胃薬が欲しい。いや、もう病院に行きたい。


だが時刻は刻一刻と進んでいく。

太陽は容赦なく昇り、午前の穏やかな時間が流れていく。

石川と千葉はすでに作戦会議モードに入っており、

テントの前に地図を広げて、

ラジオの中継場所を予測し始めた。

二人の目は真剣そのもので、

まるで軍の作戦参謀のように地図を睨んでいる。


「多分、管理棟の前だよな。

あそこが一番景色いいし、

駐車場も近いからラジオカーも停めやすい」


石川が地図に指を這わせる。


「じゃあ俺たち、そこの近くにスタンバイするっすか!

ベストポジション確保っす!」


千葉も地図を覗き込む。


「いや、それじゃダメだ。

待ち伏せしてるみたいじゃん。

もっと自然に、偶然通りかかった風を装わないと。

『あれ、何かやってる?』

みたいな感じでさ。

演技が大事なんだよ、演技が」


石川が人差し指を立てて解説する。

その真剣な表情は、本当に重要な作戦を立てているかのようだ。


「なるほど! さすがっす!

じゃあ、トイレに行くふりして

近くを通るとかどうすか!?」


「お、それいいな!

あとは、散歩してる風とか!

『いい天気だな〜』って感じで!」


「最高っす! 完璧な作戦っす!」


二人の会話を聞きながら、富山はため息をつく。

深い、深いため息。

肺の中の空気を全部吐き出すような、そんなため息。

もう止められない。

この流れは何度も経験してきた。

石川が本気でやると決めたことは、

富山がどれだけ反対しても、

どれだけ説得しても、

どれだけ泣いても、

結局実行される。

そして、結果的に富山も巻き込まれる。

それがいつものパターンだ。

運命だ。宿命だ。諦めだ。


「はあ...わかったわよ。

でも、絶対に放送の邪魔はしないでよ。

あくまで『たまたま通りかかった陽気なキャンパー』

を演じるのよ。

絶対に、絶対に、絶対に、

暴走しないって約束して。

分かった? 石川、聞いてる? 千葉も!」


富山が諦めたように言う。

声には疲労が滲んでいる。

すると石川と千葉の顔がパッと明るくなる。

まるで親に「ゲーム買ってあげる」

と言われた子供のような表情だ。


「よっしゃあああ! 富山も仲間だあああ!

これで三人揃った!

最強トリオの完成だ!

さあ、伝説を作るぞおおお!」


石川が跳び上がる。


「富山さん、一緒に楽しみましょう!

きっと一生の思い出になるっすよ!

孫に話せる思い出っす!」


千葉も嬉しそうに笑う。


二人が富山に抱きつこうとするが、

富山は素早く避ける。

そしてテントに戻り、

「私は知らないからね...知らないからね...」

と小声で何度も呟いた。

まるでお経を唱えるように。


午後1時30分。

運命の時刻まで、あと三十分。


石川たちは管理棟近くの

「偶然通りかかる予定のルート」を

入念に確認していた。

石川はすでにキラキラのサングラスをかけており、

その姿は完全に怪しい人物だ。

千葉は「150」の横断幕をリュックに忍ばせているが、

端っこが少しはみ出ている。

富山だけが普通の格好で、

できるだけ二人から距離を取ろうとしている。

最低でも五メートル。

できれば十メートル。

いや、別のキャンプ場にいたい。


「見ろよ、もうスタッフが準備始めてるぜ!

ワクワクしてきたああああ!」


石川が指差す先には、

確かにラジオ局のロゴが入ったワゴン車が停まっており、

若いスタッフが機材を運んでいる。

マイクスタンドやミキサーらしき機材が次々と運び出される。

スタッフは真面目に、丁寧に、仕事をしている。

まさか三十分後に嵐が来るとは知らずに。


「うわー、本格的っすね!

緊張してきたっす!

手が震えてるっす!

あ、足も震えてるっす!」


千葉が手を握りしめる。

彼の額には早くも汗が浮かんでおり、

呼吸が荒くなっている。

本番前の緊張が押し寄せている。


「緊張するような悪いことしてるって

自覚あるのね...

もう、本当に、本当にやめて...」


富山が呆れた声で言う。

だが、もう遅い。

全てが動き出している。


午後2時ちょうど。

ラジオの中継が始まった。


石川たちは少し離れた茂みの影から様子を窺っている。

まるでスパイ映画のワンシーンのように、

木の陰に隠れ、ラジオで放送を確認する。


『はい、皆さんこんにちは!

エフエムマウンテンウェーブ、

『午後のキャンプ日和』の時間です!

パーソナリティの桜井あやかです!』


明るい女性パーソナリティの声がラジオから流れる。

その声は爽やかで、ハキハキしており、

まさにプロのアナウンサーという感じだ。


石川が「キターーー!」と小声で叫び、

拳を握りしめる。

千葉も「始まったっす!」と興奮気味に囁く。


『今日は特別企画、

山梨県の人気キャンプ場、

『グリーンバレーキャンプ場』から

生中継でお送りしまーす!

今日のアシスタントは田中誠さんです!

田中さん、ここのキャンプ場、素敵ですね!』


『そうですね、桜井さん!

今日は天気も良くて、

最高のキャンプ日和です!

では早速、キャンプ場の管理人さんに

お話を...』


「今だ! 行くぞ!」


石川が突然立ち上がる。

そして「偶然通りかかった」という演技をするため、

わざとらしく鼻歌を歌いながら、

中継現場の方へ歩き出す。

その鼻歌は『キャンプだホイホイ♪テントだホイホイ♪』

という聞いたこともないオリジナル曲で、

しかもやけに大きな声だ。

全然偶然じゃない。

完全にわざとだ。


「いや、その鼻歌は不自然でしょ!

というか、声大きすぎ!

偶然通りかかった人の声量じゃないのよ!」


富山がツッコむが、石川は聞いていない。

千葉も後に続き、

「いい天気だな~♪」と大声で歌いながら歩く。

そして富山も仕方なく、深いため息をつきながら、

「知らない、私は知らない」と呟きながら、

二人の後を追う。


中継現場では、

桜井パーソナリティがキャンプ場の管理人にインタビューしている。


『それでは、管理人の山田さん、

このキャンプ場の魅力について...』


「おおっと! ここでラジオやってんのか!

偶然だなあああ!

すっげえ偶然!

宝くじ当たるより偶然!」


石川がわざとらしく驚く演技をする。

その演技は小学生の学芸会レベルで、

大げさに目を見開き、

口を「おおお」の形にして、

両手を頬に当てている。


パーソナリティの桜井と田中、

そして管理人が一斉に振り返る。

桜井の顔には困惑の色が浮かび、

田中は「えっ」という表情で固まり、

管理人は眉をひそめる。


「あ、あの...すみません。

今、中継中なので...」


若い男性スタッフが石川たちに気づき、

遠慮がちに声をかける。

だが石川はその声を完全に無視し、

さらにグイグイと近づいていく。

その歩み寄り方は、まるで獲物を狙うライオンのようだ。


『あら、ちょうどキャンパーの方が

通りかかりましたね...

あの、すみません、

今ラジオの中継をしているんですが、

少しお話聞いてもいいですか?』


桜井がプロの笑顔を作り、

マイクを向ける。

だが、その笑顔は微妙に引きつっている。

目が笑っていない。

完全に警戒している。


「もちろんです!

喜んで!

というか、むしろお願いします!

実は俺たち、今日で150回目のキャンプなんすよ!

150回!

百五十回!

イチゴーマル!」


石川が満面の笑みで答える。

その声量は通常の三倍で、

ラジオのマイクが音割れしそうなほどだ。


桜井がビクッと体を震わせる。

田中も目を丸くする。


『ひゃ、150回!?

それはすごいですね!

相当なベテランキャンパーなんですね!

え、えっと、お名前は...?』


桜井が驚きの声を上げながらも、

プロとして質問を続ける。

だが、その手はマイクを握りしめて微妙に震えている。


「石川です!

グレートキャンパーの石川!

そしてこっちが相棒の千葉!」


「千葉っす!

新人キャンパーっす!

でも150回目に立ち会えて光栄っす!」


千葉が深々とお辞儀をする。

その勢いでリュックから横断幕の端がさらに飛び出す。


『150回って、毎週行っても

3年近くかかりますよ!

すごい...本当にすごい...』


田中が素直に驚く。

だが、その声のトーンには

「どうしよう」という焦りが混じっている。


そして石川は、

この反応を完全にゴーサインと受け取った。

目がキラーンと光る。


「そうなんすよ!

だから今日は記念の日なんす!

記念日!メモリアルデー!

アニバーサリー!

なあ、千葉! 横断幕出せ!

今だ!出すんだ!」


「了解っす!

これが俺たちの魂っす!」


千葉がリュックから

「150」の横断幕を勢いよく取り出し、

バサッと広げる。

その横断幕には手書きで

「俺達のグレートなキャンプ150回達成!」

と書かれており、

周りにはキラキラのモールが貼り付けられ、

グリッターがキラキラと光り、

なぜか写真まで貼られている。

過去のキャンプの写真だ。

しかも変顔をしている写真。


『あ、あはは...すごい...

手作りの横断幕まで

用意されてるんですね...

これは、えっと、気合い入ってますね...』


桜井が引きつった笑いを浮かべる。

完全に困惑している。

どう反応していいか分からない。

目線がカメラマン...いや、ディレクターの方に向く。

「助けて」という無言のサインだ。


「ちょ、ちょっと...

ちょっと石川...」


富山が小声で止めようとする。

だが、もう遅い。

石川はすでに全開モードだ。

ブレーキは壊れた。

アクセルは踏みっぱなしだ。


「そうなんすよ!

俺たちのキャンプは

『奇抜でグレートなキャンプ』がモットーで!

毎回いろんな暇つぶしを考えて実行してんすよ!

例えばね、例えば!

テントの中で流しそうめんやったり!

真夜中に山で宝探ししたり!

キャンプファイヤーしながらカラオケ大会したり!

あとは、あとは!

川でイカダ作って競争したり!

満月の夜に狼男ごっこしたり!」


石川が次々と過去のキャンプエピソードを語り始める。

その話す速度はどんどん速くなり、

まるでラッパーのようだ。

桜井と田中は完全に石川のペースに飲まれている。

呆然と立ち尽くし、

ただ石川を見つめている。


『それは...た、楽しそうですね...

え、えっと、狼男ごっこ...?』


桜井が必死に相槌を打つ。

プロ根性でなんとか会話を繋ごうとするが、

完全に限界が近い。


「そうっす!

満月の夜に、みんなで遠吠えするんすよ!

アオーーーン!って!

最高に楽しいっす!」


千葉が実際に遠吠えの真似をする。

「アオーーーーン!」

その声がマイクに入り、

ラジオの電波に乗って山梨県中に響く。


『あ、あはは...

面白いですね...

リスナーの皆さん、

今、生で遠吠えが聞こえましたね...』


田中が苦笑いしながらフォローする。

額に汗が浮かんでいる。


そしてその時、

石川の目がさらにギラリと光った。

何か閃いたのだ。

悪い予感しかしない。


「そうだ!

せっかくだから、

150回記念の証を残そうぜ!

皆さんも一緒に!」


石川がバッグから

電飾付きのサングラスをもう一つ取り出し、

桜井に差し出す。

そのサングラスは、

どう見ても昭和のディスコで使われていたような、

ピンクとゴールドが混ざった、

センスの欠片もないデザインだ。


「これ、かけてくださいよ!

一緒に記念撮影...

じゃなくて、記念中継しましょう!

電波に乗せて思い出を残すんす!」


『え、ええ!?

い、いや、あの、これは...』


桜井が完全に戸惑う。

だが石川の勢いに押され、

思わずサングラスを受け取ってしまう。

その瞬間、石川がニヤリと笑った。

作戦通りだ、という顔だ。


「かけてかけて!

絶対似合いますよ!

むしろかけないともったいない!

人生損してる!」


千葉も煽る。

周りのスタッフは完全に呆気に取られている。

口をポカンと開けて、ただ見ている。


『あ、あの...

でも、中継中ですし...』


桜井が必死に断ろうとする。

だが石川と千葉の圧がすごい。

二人とも目をキラキラさせて、

まるで「お願いします!お願いします!」

と言わんばかりの表情で見つめている。

その圧に負け、

桜井が恐る恐るサングラスをかける。


電飾がピカピカ光り出す。

ピンク、ゴールド、ピンク、ゴールド。

点滅する。

チカチカする。

桜井の顔が照らされる。


「最高っす!

超似合ってるっす!

まるで未来から来たDJみたいっす!」


千葉が拍手する。

そして石川もサングラスをかけ、

二人で「150! 150! 150!」

とチャントを始める。

手拍子まで加わる。

パンパンパンパン。


『あ、あはは...

ありがとうございます...

えっと、リスナーの皆さん、

今、私、

すごいサングラスかけてます...

ピカピカ光ってます...』


桜井が完全に困り果てながらも、

プロとして実況する。

その声は震えている。

助けを求めている。


田中も「どうしよう」という表情で

ディレクターの方を見る。

ディレクターは顔を両手で覆っている。

見ていられない、という仕草だ。


そして、まさにその瞬間だった。


突然、千葉が持っていた横断幕が

強い風に煽られ、

バサッと大きく広がった。

その勢いで千葉がバランスを崩し、

「うわっ!」と叫びながら

よろめく。


そして、千葉の体が

石川にぶつかる。


石川がよろける。


そして、石川が持っていたバッグが

地面に落ちる。


バッグの中身が飛び出す。


モール、ステッカー、

そして...


花火。


打ち上げ花火が転がり出て、

コロコロコロと転がり、

そのまま桜井の足元まで転がっていく。


『え...? これ...花火...?』


桜井が呆然と花火を見つめる。

その瞬間、完全に放送事故の空気が流れる。


「あ...」


石川が青ざめる。

千葉も固まる。

富山は顔を両手で覆う。


そして、その時だった。


「こらああああああ!

お前ら何やってんだああああ!」


突然、怒鳴り声が響く。

振り返ると、

キャンプ場の管理人、山田さんが、

真っ赤な顔で走ってくる。

その顔は怒りで歪んでおり、

目は完全に据わっている。

本気の怒りだ。


「あ、あの、すみません!

すみません!本当にすみません!」


富山が慌てて謝罪する。

その顔は真っ青で、

足はガクガク震えている。


「中継の邪魔すんじゃねえ!

それに花火!

花火持ってきてんじゃねえか!

ここ花火禁止だろうが!

看板見えねえのか!

目ついてんのか!」


管理人が怒鳴る。

その声はラジオのマイクにもしっかり拾われている。

山梨県中に怒声が響く。


『あ、あの...

大丈夫です、

楽しいお話でしたし...

えっと、花火は...

え、花火禁止なんですか...?』


桜井が必死にフォローしようとするが、

管理人は聞いていない。

というか、桜井もサングラスをかけたまま

フォローしているので、

全然説得力がない。


「お前ら、帰れ!

今すぐ帰れ!

出禁だ!

二度と来るな!」


管理人が指をビシッと石川たちに向ける。


「え!? 出禁!?

そ、そんな...」


石川が驚く。

さすがにこの展開は予想外だったらしい。

目を白黒させている。


「当たり前だ!

前にもうちのキャンプ場で

花火の時間外に打ち上げて

注意されただろ!

忘れたのか!

半年前だぞ!

今度は中継の邪魔して、

また花火持ってきて!

二度と来るな!」


管理人がさらに怒鳴る。

そして石川の記憶が蘇る。

確かに、半年前にここで

「真夜中の花火大会」を企画し、

管理人に怒られた。

あの時の管理人の顔と、

今の顔が一致する。


「あ...あの時の...

山田さん...」


石川が青ざめる。

千葉も状況を理解し始めたようで、

「やばいっす...マジでやばいっす...」

と呟く。

完全に顔面蒼白だ。


「ほら、荷物まとめて帰れ!

今すぐだ!

今すぐ!

一秒でも早く!」


管理人が腕を組んで立ちはだかる。

その威圧感は凄まじい。


『あ、あの...

皆さん、すみません、

少しトラブルがあったようで...

えっと、えっと、

CM、CM入ります...

CM入りまーす!』


桜井が慌てて中継を中断する。

サングラスを外しながら。

スタッフがすぐに音楽を流し、

CM明けの準備を始める。


「本当にすみません!

本当に、本当にすみません!

申し訳ございません!」


富山が管理人と桜井、

そしてスタッフ全員に頭を下げる。

90度。完璧な角度。

石川と千葉も渋々頭を下げる。

だが、その角度は45度くらい。

反省の色が薄い。


「もう知らない!

私、もう知らないからね!

二度と、二度と付き合わないからね!」


富山が叫ぶ。

その声には怒りと呆れと

諦めと疲労が全て混じっている。


そして、さらなる災難が襲う。


「あ、あの...」


若い女性スタッフが

恐る恐る声をかけてくる。


「実は、その...

横断幕が、機材に引っかかって...

ミキサーが...」


スタッフが指差す先を見ると、

千葉の横断幕が風で飛ばされ、

ミキサーに絡まっている。

そして、ミキサーの画面には

「ERROR」の文字が点滅している。


「え...」


千葉が固まる。


「あ、あの、大丈夫ですか...?

修理代とか...」


富山が震える声で聞く。


「...後ほど、

ご連絡させていただきます」


スタッフが冷たい声で答える。

その目は完全に冷めている。


石川たちは、

もう何も言えなかった。


結局、石川たちは

急いで荷物をまとめ、

キャンプ場を後にすることになった。


車に荷物を積み込みながら、

管理人が後ろから見張っている。

完全に追い出されている。

逃がさないぞ、という目だ。


石川はまだ

「でも盛り上がったよな」

と呟いている。

千葉は

「ラジオデビューできて嬉しかったっす」

と笑っている。

二人とも、まだ現実が見えていない。


富山は助手席で腕を組み、

完全に不機嫌モードだ。

というか、もう怒りを通り越して

無の境地に達している。


「あのね、二度と、

二度とこういうことしないって

約束して。

指切りして。

血判押して」


富山が低い声で言う。

その声には凄みがある。


「まあまあ、富山!

これも良い思い出じゃん!

ラジオに出たんだぜ!?

すごくない!?」


石川が笑顔で言う。

空気を読んでいない。


「思い出にならないのよ!

出禁になったのよ!?

しかも二回目よ!?

二回目の出禁よ!?

あのキャンプ場、

設備良くて好きだったのに!

温泉も近かったのに!

もう行けないのよ!?

それに、それに!

ミキサー壊したかもしれないのよ!?

修理代いくらすると思ってるの!?

私の貯金が...私の貯金が...」


富山が叫ぶ。

涙目になっている。

本気で泣きそうだ。


「大丈夫大丈夫!

他にもキャンプ場はいっぱいあるって!

山梨だけでも何十箇所もあるし!」


石川が軽く答える。

その能天気さが、

さらに富山の怒りを増幅させる。


「そういう問題じゃないでしょおおお!」


富山の叫び声が車内に響く。


車は山道を走り始める。

後部座席で千葉がラジオをつける。

すると、先ほどの中継の続きが流れてきた。

CM明けだ。


『さて、先ほどは...

少しハプニングがありましたが...

えっと、リスナーの方から

メッセージが届いてます!

読みますね。

「さっきの150回キャンプの人たち、

面白かったです!

久しぶりに笑いました!

あんなに楽しそうにキャンプしてる人、

初めて見ました!」

だそうです!』


千葉と石川の顔がパッと明るくなる。


「ほら!

リスナーには好評だったじゃん!

大成功!大勝利!」


石川が喜ぶ。


「やったっす!

俺たち、認められたっす!」


千葉も拳を握る。


『でも、皆さん、

キャンプ場のルールは

しっかり守りましょうね!

花火禁止のところで花火はダメですよ!

それと、中継の邪魔も...

まあ、楽しかったですけど...』


田中が苦笑いしながら言う。


『あ、もう一通来てます。

「サングラスかけた桜井さん、

面白かったです!

また見たいです!」

...見えないですけどね、ラジオなので...』


桜井が照れくさそうに笑う。


「だからそういう問題じゃないのよおおおお!」


富山の叫びが再び響く。


だが、石川の頭の中では

すでに次のキャンプの企画が始まっている。


「次は151回目だな!

何しようかな!

そうだ、海でキャンプして、

サーフィン大会開いて、

ビーチバレー大会もして...」


「ちょっと黙ってて!

もう何も聞きたくない!

耳を塞ぐ!

ラララ聞こえない!」


富山が両手で耳を塞ぐ。

だが、石川の声は止まらない。


車は夕日に向かって走り続ける。

山道を下り、街へと向かう。

そして、石川たちの奇抜なキャンプは、

これからも続いていくのだった。


翌日。

富山のスマホに、

ラジオ局からメッセージが届いた。


『先日は中継にご参加いただき

ありがとうございました。

リスナーからの反響が予想以上に大きく、

「面白かった」「また聞きたい」

という声が多数寄せられました。

つきましては、もし可能であれば、

今度正式にゲストとして

番組に出演していただけないでしょうか。

ご検討いただければ幸いです。

なお、ミキサーの修理代につきましては...』


富山は画面を凝視する。

そして、深いため息をついた。

宇宙一深いため息だ。


「...絶対に石川には教えない。

絶対に。

死んでも教えない」


だが、富山の心の奥底では、

ほんの少しだけ、

本当にほんの少しだけ、

「まあ、悪くなかったかも...」

という気持ちが芽生えていた。

それを認めることは、

死んでもしないが。


そして、メッセージの続きを読む。


『ミキサーの修理代につきましては、

三万円になります。

後日、請求書をお送りいたします』


「...やっぱり教える。

絶対に教える。

今すぐ電話する」


富山はすぐに石川に電話をかけた。


こうして、

俺達のグレートなキャンプ150回目は、

出禁と修理代請求という形で

幕を閉じた。


だが、石川たちの冒険は終わらない。

次はどんな奇抜なキャンプが待っているのか。

それは誰にも分からない。


ただ一つ確かなのは、

富山がまた振り回されるということと、

また謝罪することになるということと、

また出費が増えるということだけだ。


〜完〜


その夜、石川から富山に電話が来た。


『もしもし、富山!

次のキャンプなんだけど、

温泉地で『露天風呂でBBQ』

ってどうかな!?

グレートじゃない!?』


「...出禁になるから却下」


『じゃあ『山頂で餅つき大会』は!?』


「重いから却下」


『じゃあじゃあ!

『川で流しラーメン』は!?』


「環境汚染で却下」


『厳しいな〜

じゃあ普通に静かにキャンプする?』


「...それが一番グレートよ」


『え〜つまんな〜い』


ガチャン。


富山は電話を切った。

そして、またため息をついた。


「...来週も、きっと、

また振り回されるんだろうな...」


窓の外では、満月が輝いている。

まるで石川たちの冒険を

祝福しているかのように。


そして富山のスマホに、

千葉からメッセージが届く。


『富山さん!

次のキャンプ、

満月の夜に狼男ごっこ

またやりましょう!

アオーーーン!』


「...やらない」


富山は即答し、スマホを閉じた。


だが、その口元には、

ほんの少しだけ笑みが浮かんでいた。


きっと、また付き合ってしまうのだろう。

それが、富山の運命なのだから。


そして、グレートなキャンプは続く。

151回目へ、そして未来へ。


本当に〜完〜

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『俺達のグレートなキャンプ150 ラジオの中継に割り込んでどんちゃん騒ぎだ』 海山純平 @umiyama117

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