第29話 三体同時戦線
黒い霧が荒野を覆い、虚骸兵三体が同時に動き出す。
結晶の巨腕が地を叩くたび、地面は砕け、兵士たちが吹き飛ばされた。
「このままじゃ……押し潰される!」
ノアが必死に防御結界を張り直す。
だが虚無波動の侵食は強烈で、結界はじわじわと削り取られていった。
「ノア、一人で背負うな! 俺も加勢する!」
蓮は無限アイテムボックスから輝く魔導盾を取り出し、ノアの横で結界を重ねた。
「ありがとう……! これなら持ちこたえられる!」
◆ ◆ ◆
前線ではリーナとシャムが虚骸兵の一体を引き受けていた。
「斬り込む!」
リーナが叫び、剣に光を纏わせて突進する。
虚骸兵の腕が振り下ろされる。
シャムが槍で受け止め、その隙にリーナが胴を切り裂いた。
結晶に亀裂が走るが、すぐに修復されてしまう。
「やっぱり核を狙うしかないな!」
シャムが歯を食いしばる。
「なら、私が囮になる!」
リーナはそう言うと、大胆にも虚骸兵の足元へ飛び込んだ。
「リーナ!」
シャムが叫ぶが、彼女は振り返らず、ただ剣を振るい続けた。
◆ ◆ ◆
別の虚骸兵はカイエンとミストが相手をしていた。
「やれやれ、手強いな!」
カイエンは雷撃を撃ち込み、虚骸兵の動きを止めようとする。
だが結晶は雷を吸収し、逆に赤い光を強めていった。
「カイエン、雷は駄目! 光属性の干渉でなきゃ!」
ミストが解析結果を叫ぶ。
「なら光を纏わせて撃ち込めばいいんだな!」
カイエンは剣を掲げ、ミストが光の魔法を重ねる。
「光雷一閃――!」
雷に光を宿した斬撃が虚骸兵を貫き、結晶が大きく砕け散った。
「効いた!」
「今のだ、繰り返せば倒せる!」
◆ ◆ ◆
三体目はネフェリスが歌で兵士を支えつつ、蓮が挑んでいた。
澄んだ旋律が戦場を包み、恐怖に囚われた兵士たちを勇気づける。
「君の歌声は……いつも助けてくれるな」
蓮が呟きながら剣を構える。
「当然でしょ! 私たちは仲間なんだから!」
ネフェリスが笑みを浮かべる。
虚骸兵の巨拳が振り下ろされる。
蓮は回避しつつ、剣を閃かせて赤い核を狙った。
刹那、アカシック・リゾナンスが輝き、虚骸兵の核の位置を示す。
「そこか!」
剣が核を貫き、虚骸兵の巨体が崩れ落ちた。
「よし……三体目、撃破!」
◆ ◆ ◆
だが残る二体が怒り狂ったように咆哮を上げ、同時に虚無波動を放つ。
黒い霧が戦場全体を覆い、兵士たちの存在そのものを蝕んでいった。
「ぐっ……これはまずい!」
ノアが結界を張るが、限界が近い。
「全員、核を狙え! 同時に仕留めるしかない!」
蓮が叫ぶ。
「了解!」
「任せて!」
仲間たちが一斉に動き出す。
リーナとシャムが連携し、核を露出させる。
カイエンとミストが光雷を重ねて結晶を砕く。
ネフェリスの歌が皆の力を高める。
そして蓮が、最後の一撃を放った。
「これで――終わりだ!」
剣が光の奔流となり、二体の虚骸兵の核を同時に貫いた。
轟音と共に黒い巨体が崩れ落ち、戦場を覆っていた霧が晴れていく。
◆ ◆ ◆
兵士たちの歓声が荒野に響き渡った。
「勝った……! 本当に勝ったぞ!」
蓮は剣を下ろし、仲間たちを見渡した。
皆、疲労困憊ではあるが、生きて立っていた。
「……よくやったな、みんな」
彼の声に、仲間たちは笑みを浮かべて頷いた。
しかし蓮の胸の奥には、不安が残っていた。
――これは終わりではない。帝国は必ず次の一手を打ってくる。
決戦の序曲は終わり、次なる嵐が迫ろうとしていた。
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