第28話 ゼヒドの雄叫び

「黒焦げになっちまえ! ヒャッヒャッヒャッヒャッ!」


 ゼヒドの放った炎は、激しく燃え続ける。あの炎の中では、普通の人間は生きる事は出来ない。だが、レインなら……。


 きっと……無事なはず!


「水魔法!」


 レインだ! レインが、水魔法を使った!


 激しく燃えていた炎の柱が、水の柱へと変化する。そして、炎は完全に消え、水の柱も霧となって消えた。レインの姿は、さっきと何も変わらず、傷一つ負ってはいない。


「ああ!? 一体どういう事だ! これはよ! 何だ、てめえは! 何で、無傷でいられんだよ! ちきしょう! ちきしょう! ちきしょう!」


 ゼヒドは、怒り狂っている。


「ああ! くそ! こうなったら、仕方ねえ! 本当はレッドをブッ殺す為に、あいつらから貰ったもんだったが、ここで使うしかねえ!」


 あいつらから、貰った? 何だ?


 ゼヒドは、ズボンのポケットから小さな黒い石を取り出す。その石を迷わず、口の中に入れて飲み込んだ。その直後――


「うおおおおおお!」


 ゼヒドは雄叫びを上げ、体が変化していく。


「おお、力がみなぎる」


 ゼヒドの体に、竜とおぼしき黒い羽根と黒い尻尾が生えていた。


 何が、起きた!?


 ゼヒドの今の姿は、まるで竜と人が合わさったかのようだ。


「さーて……。まずは、肩慣らしに」


 バン! と大きな音が鳴った。今度はレインが、壁にめり込む。


「レイン!」


「おっと、まだ力の加減が出来ねえや。ヒャッヒャッヒャッヒャッ!」


 まさか、レインが負ける?


 そんな……はずがない。


 レインが負けるなんて……。


 絶対にない! レインは、誰にも負けない! 俺は信じる!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る