第24話 新たな挑戦

韓国オファーから一週間。


矢代秀は、韓国語の勉強を始めていた。


「안녕하세요……アンニョンハセヨ……こんにちは、か」


秀は、テキストを見ながら発音練習をしている。


「감사합니다……カムサハムニダ……ありがとうございます」


ノックの音。


「どうぞ」


ドアを開けると、莉乃が立っていた。


「秀くん、また勉強してるの?」


「ああ。少しでも韓国語を話せた方がいいかなと思って」


莉乃は――少し寂しそうな顔をした。


「秀くん……韓国には、一人で行くの?」


秀は――少し驚いた。


「え?」


「台湾の時は、私も一緒だったけど……今回は、私も行けるのかな……」


莉乃の声が、小さくなる。


秀は――莉乃の手を握った。


「当然、一緒に行きます。莉乃さんがいないと、俺は寂しいから」


「……!本当?」


「もちろんです」


莉乃の顔が――パッと明るくなった。


「やった!じゃあ、私も韓国語勉強する!」


「一緒に頑張りましょう」


2人は――並んで、韓国語の勉強を始めた。


---


数日後。


秀は、韓国のイベント主催者とオンライン会議をしていた。


画面には、韓国のスタッフたちが映っている。


"Hello, Mr. Yashiro. Thank you for joining us."


(こんにちは、ヤシロさん。参加していただきありがとうございます)


中心にいる男性が、英語で話しかけてくる。


"Thank you for inviting me. I'm honored."


(お招きいただきありがとうございます。光栄です)


秀が、英語で返す。


"I'm Park Jin-woo, the director of Seoul Gaming Festival."


(私はパク・ジヌと申します。ソウル・ゲーミング・フェスティバルのディレクターです)


"Nice to meet you, Mr. Park."


(お会いできて嬉しいです、パクさん)


「日本語でも大丈夫ですよ」


ジヌが、流暢な日本語で笑う。


「あ、そうなんですか」


秀も、少しホッとした。


「はい。私、日本に留学していたことがあるので」


「それは助かります」


ジヌが、資料を画面に映し出す。


「今回のイベントは、韓国最大級のeスポーツイベントです。3日間で、延べ5万人が来場予定です」


「5万人……!」


秀は、驚いた。


「はい。神崎さんには、2日目のメインステージでエキシビションマッチをしていただきたいのです」


「わかりました」


「そして……もし可能であれば、白雪リノさんも一緒にお願いできますか?」


「もちろんです。莉乃さんも連れて行きます」


「素晴らしい!では、詳細は後日お送りします」


会議は、順調に進んでいった。


---


会議終了後。


秀は、すぐに莉乃に連絡を入れた。


「もしもし、莉乃さん」


『秀くん!どうだった?』


「韓国のイベント、一緒に出演してほしいって」


『やった!嬉しい!』


莉乃の声が、弾んでいる。


「ソウルで、5万人規模のイベントだって」


『5万人!?すごい……』


「ああ。でも、莉乃さんと一緒なら大丈夫」


『うん!一緒に頑張ろう!』


---


その夜の配信。


「おはようございます、神崎灯です」


「白雪リノです!」


同接:351,284人。


「今日は、大きなお知らせがあります」


秀が、画面に資料を映す。


「来月、韓国のソウルで開催される『Seoul Gaming Festival』に出演することになりました」


チャット欄が、盛り上がる。


『韓国!』

『すげえ!』

『アジア制覇だ!』


「このイベントは、3日間で5万人が来場する大規模なイベントです」


「私たちは、2日目のメインステージに出演します!」


莉乃が、興奮した声で言う。


『楽しみ!』

『絶対見る!』

『韓国のファンも喜んでるだろうな』


秀と莉乃は――笑顔で手を振った。


---


配信終了後。


テインメイトのラウンジで、メンバーたちが集まっていた。


「神崎、韓国行くんだって?」


黒木が、羨ましそうに言う。


「はい。来月です」


「いいなあ……俺も行きてえ……」


「いつか、黒木さんも絶対行けますよ」


秀が、励ます。


「神崎さん、莉乃ちゃん、頑張ってね!」


ミアが、応援する。


「お、お土産……楽しみにしてます……」


ユキが、恥ずかしそうに言う。


「任せてください」


秀が、笑顔で答えた。


---


数週間後。


出発の日が近づいてきた。


秀は、韓国語の勉強を続けていた。


「만나서 반갑습니다……マンナソ パンガプスムニダ……お会いできて嬉しいです」


発音も、だいぶ良くなってきた。


「저는 신사키 토모리입니다……チョヌン シンサキ トモリイムニダ……私は神崎灯です」


莉乃も――一緒に勉強している。


「화이팅……ファイティン……頑張って、だっけ?」


「そうです。韓国でよく使う応援の言葉ですね」


「화이팅!」


莉乃が、元気よく言う。


秀は――笑った。


「莉乃さん、発音いいですね」


「本当?嬉しい!」


---


出発前日。


秀と莉乃は、事務所の屋上にいた。


「明日から、韓国だね」


莉乃が、少し緊張した様子で言う。


「ああ。5万人の前で……」


秀も、少し緊張している。


「でも、大丈夫だよ。秀くんと一緒だから」


莉乃が、秀の手を握る。


「ありがとう。俺も、莉乃さんと一緒だから大丈夫」


秀も、その手を握り返した。


「絶対、成功させようね」


「ああ。必ず」


2人は――夜空を見上げた。


満天の星が、2人を見守っていた。


---


翌朝。


空港。


秀と莉乃は、スーツケースを持って立っていた。


「行ってきます」


桜井代表や、見送りに来たメンバーたちに挨拶する。


「頑張ってこいよ!」


黒木が、拳を突き出す。


秀も、拳を合わせた。


「行ってきます」


「気をつけてね!」


ミアが、手を振る。


「お、お土産……待ってます……」


ユキも、恥ずかしそうに言う。


秀と莉乃は――搭乗ゲートへ向かった。


---


飛行機の中。


秀は、窓の外を見つめていた。


雲の上には、青い空。


「韓国、どんな場所なんだろう」


莉乃が、ワクワクした様子で言う。


「楽しみですね」


秀も、期待に胸を膨らませていた。


---


数時間後。


仁川国際空港に到着した。


「着いた……」


秀が、呟く。


空港には、ハングル文字の看板が並んでいる。


「韓国だ……」


莉乃も、キョロキョロと周りを見渡している。


到着ロビーを出ると――


大勢のファンが、出迎えに来てくれていた。


「신사키 토모리!」


(神崎灯!)


「시라유키 리노!」


(白雪リノ!)


韓国語で、声援が飛ぶ。


秀は――笑顔で手を振った。


"안녕하세요!감사합니다!"


(こんにちは!ありがとうございます!)


秀の韓国語に、ファンたちが歓声を上げる。


「대박!한국어 할 줄 알아!」


(すごい!韓国語話せる!)


莉乃も――勇気を出して言った。


"안녕하세요!만나서 반갑습니다!"


(こんにちは!お会いできて嬉しいです!)


ファンたちが、さらに盛り上がる。


---


ホテル到着。


ソウル市内の高級ホテルだった。


「すごい……また豪華なホテル……」


莉乃が、ロビーを見渡している。


チェックインを済ませ、部屋へ向かう。


秀の部屋は――また豪華なスイートルームだった。


「台湾の時と同じくらい、豪華ですね」


秀は、窓際に立って――ソウルの景色を眺めた。


高層ビルが立ち並ぶ、近代的な街並み。


「綺麗だな……」


ノックの音。


「どうぞ」


ドアを開けると、莉乃が立っていた。


「秀くん、一緒にソウル見ようよ!」


「いいですよ」


2人は――ホテルを出て、ソウルの街を歩き始めた。


---


明洞。


ソウルで最も賑やかな繁華街だ。


「わあ……人がいっぱい……」


莉乃が、圧倒されている。


ショップ、カフェ、レストラン、屋台。


様々な店が立ち並んでいる。


「何食べようか」


秀が、聞く。


「韓国料理!全部食べたい!」


莉乃が、目を輝かせる。


2人は――韓国料理のレストランに入った。


---


サムギョプサル、キムチチゲ、ビビンバ……


様々な韓国料理を堪能した。


「美味しい……」


秀が、満足そうに食べている。


「本場の韓国料理、最高だね……」


莉乃も、幸せそうだ。


食事の後、2人は街を散策した。


---


夕方。


秀と莉乃は、南山タワーに登っていた。


ソウルを一望できる展望台。


「綺麗……」


莉乃が、景色を見つめている。


秀も――景色を見ながら、心が落ち着くのを感じた。


「明日から、イベントが始まりますね」


「うん……緊張するけど、頑張る」


「俺も。莉乃さんと一緒なら、大丈夫」


秀が、莉乃の手を握る。


莉乃も、その手を握り返した。


「うん。一緒に、頑張ろう」


2人は――ソウルの夕景を見つめた。


---


その夜。


ホテルに戻った秀は、部屋で明日のイベントについて考えていた。


「5万人……」


台湾の時より、さらに大規模だ。


少し、緊張している。


だが――


「大丈夫。莉乃さんがいる」


秀は、自分に言い聞かせた。


スマホが鳴る。


莉乃からのメッセージだった。


『秀くん、明日頑張ろうね。私、秀くんと一緒だから大丈夫。おやすみなさい』


秀は――笑いながら、返信を打った。


『ありがとう。莉乃さんと一緒なら、俺も大丈夫。おやすみなさい』


送信。


秀は、ベッドに横たわった。


「さあ、明日……頑張ろう」


---


翌朝。


イベント当日。


秀は、早朝に起きて――窓の外を見た。


青い空。


いい天気だ。


「よし……」


秀は、気合を入れた。


---


午前9時。


秀と莉乃は、イベント会場へ向かった。


巨大なコンベンションセンター。


既に、長蛇の列ができている。


「すごい……こんなに……」


莉乃が、圧倒されている。


「5万人……本当に来るんだな……」


秀も、驚いている。


2人は――会場へ入っていった。


---


バックステージ。


秀と莉乃は、出番を待っていた。


「緊張する……」


莉乃が、落ち着かない様子だ。


「大丈夫。俺がいるから」


秀が、莉乃の手を握る。


莉乃も――少し落ち着いた。


「うん……ありがとう」


その時――


スタッフが入ってきた。


"It's time. Are you ready?"


(時間です。準備はいいですか?)


"Yes, we're ready."


(はい、準備できてます)


秀が、答えた。


"Let's go."


(では、行きましょう)


---


ステージ。


幕が開く。


そこには――数万人の観客が、待っていた。


「うおおおおおお!」


「신사키 토모리!」


「시라유키 리노!」


大歓声が、会場を包む。


秀は――その光景を見て、胸が高鳴った。


「これが……韓国のイベントか……」


莉乃も、涙目になっている。


「すごい……みんな、来てくれた……」


秀は――マイクを握った。


そして――


"안녕하세요!저는 신사키 토모리입니다!"


(こんにちは!私は神崎灯です!)


会場が――さらに盛り上がった。


"저는 시라유키 리노예요!만나서 반갑습니다!"


(私は白雪リノです!お会いできて嬉しいです!)


莉乃も、韓国語で挨拶する。


会場が――大歓声に包まれた。


秀と莉乃の――韓国での挑戦が、始まった。

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