第17話 テインメイト杯
テインメイト杯開催発表から一週間。
矢代秀は、事務所の会議室にいた。
テーブルには、桜井代表、高橋マネージャー、そして企画チームのスタッフたち。
「では、テインメイト杯の詳細を説明します」
桜井が、プロジェクターで資料を映し出した。
『テインメイト杯
参加資格:誰でも参加可能
エントリー数:最大256組(512人)
形式:2人1組のペア戦
優勝賞金:1000万円』
秀は――少し驚いた。
「256組……すごい規模ですね」
「ええ。テインメイトの威信をかけた大会です」
桜井が、真剣な顔で続ける。
「そして、神崎さんと白雪さんには……アンバサダーとして、プロモーション活動をお願いします」
「わかりました」
秀が、頷く。
「具体的には?」
高橋マネージャーが、説明を始めた。
「まず、告知配信。お2人で、大会の魅力を伝えてください」
「次に、エキシビションマッチ。お2人に、デモンストレーションをしていただきます」
「そして……本戦では、実況解説をお願いします」
秀は――少し考えた。
「参加は、しないんですか?」
桜井が、首を横に振った。
「アンバサダーですから、中立の立場でいてほしいのです」
「なるほど……」
秀は、少し残念そうだった。
だが――
「わかりました。精一杯、務めさせていただきます」
その夜の配信。
「おはようございます、神崎灯です」
「白雪リノです!」
同接:223,194人。
「今日は、テインメイト杯の詳細を発表します」
秀が、画面に資料を映し出す。
「参加資格は、誰でもOK。プロでもアマチュアでも、参加できます」
「優勝賞金は、1000万円です!」
莉乃が、興奮した声で言う。
チャット欄が、盛り上がる。
『1000万円!?』
『参加したい!』
『これは熱い!』
「エントリーは、来週月曜日から開始します」
「皆さん、ぜひ参加してくださいね!」
秀と莉乃は、にこやかに呼びかけた。
エントリー開始日。
朝9時。
エントリーサイトが、パンクした。
「え……?」
高橋マネージャーが、パソコン画面を見つめて固まっている。
「どうしたんですか?」
秀が、聞く。
「エントリー……開始30分で、256組埋まりました……」
「え!?」
秀も、驚いた。
「まさか、こんなに人気が出るとは……」
桜井も、驚いた顔をしている。
「急遽、枠を増やしましょう。512組まで」
「了解です」
だが――
512組も、その日のうちに埋まった。
「これは……予想以上の反響ですね……」
秀は、少し圧倒されていた。
大会一週間前。
秀と莉乃は、エキシビションマッチの準備をしていた。
「エキシビション、誰と戦うんだろうね」
莉乃が、少し不安そうに聞く。
「さあ……でも、全力でやりましょう」
「うん!」
その時――
高橋マネージャーが入ってきた。
「神崎さん、白雪さん、エキシビションの相手が決まりました」
「誰ですか?」
「黒木選手と、天音選手のペアです」
秀は――目を見開いた。
「黒木さんと、ミアちゃん!?」
「はい。所属クリエイター同士の対決ということで、盛り上がると思いまして」
秀は――少し笑った。
「面白そうですね」
エキシビションマッチ当日。
会場には、3000人の観客が集まっていた。
「すごい……」
莉乃が、圧倒されている。
「エキシビションでこの人数……本戦は、どうなるんだろう……」
秀も、少し緊張していた。
控え室。
秀と莉乃は、最終調整をしていた。
「大丈夫、秀くん?」
「ああ。準備は万全です」
その時――
黒木とミアが入ってきた。
「よう、神崎!」
黒木が、笑顔で手を振る。
「神崎さん、リノちゃん!今日は、全力で戦うよ!」
ミアも、闘志を燃やしている。
秀は――笑った。
「こちらこそ、全力で行きます」
「おう!じゃあ、ステージで会おうぜ!」
黒木たちが、去っていった。
ステージ。
秀と莉乃、黒木とミアが向かい合った。
「では、エキシビションマッチを始めます!」
実況者の声が響く。
「神崎灯・白雪リノ vs 黒木颯太・天音ミア!」
観客席が、歓声に包まれた。
「試合開始!」
試合開始と同時に――
黒木のキャラクターが、猛スピードで突進してきた。
「さすが、黒木さん!」
秀は、すぐに回避。
だが――
ミアのキャラクターが、遠距離から魔法攻撃を仕掛けてきた。
「リノちゃん、守って!」
秀が叫ぶ。
「はい!」
莉乃のキャラクターが、防御魔法を展開。
ミアの魔法を、防ぎ切る。
「さすがリノちゃん!でも、これならどう!?」
ミアが、連続魔法を発動。
莉乃の防御魔法が、少しずつ削られていく。
「まずい……!」
秀のキャラクターが、ミアに向かって突進。
だが――
黒木が、それを阻止した。
「させねえよ、神崎!」
黒木のキャラクターが、秀を止める。
「黒木さん……強い……!」
秀は、黒木と激しく戦い続ける。
観客席。
ユキ、佐藤、山田が、固唾を呑んで見守っている。
「すごい……互角だ……」
ユキが、呟く。
「神崎も黒木も、全力で戦ってるな」
佐藤が、興奮した表情で言う。
「……面白い」
山田も、静かに見入っている。
ステージ。
5分後。
秀と莉乃、黒木とミア、互いにHPが半分を切っていた。
「はあ……はあ……」
秀の呼吸が、荒くなっている。
「秀くん、大丈夫!?」
「ああ。まだ、いける」
秀の目が、鋭く光る。
「莉乃さん、例の作戦、行きましょう」
「うん!」
2人のキャラクターが――特別なフォーメーションを取った。
秀が前に出て、莉乃が後ろから援護。
完璧な連携。
黒木とミアが、驚いた顔をする。
「なんだ、この動き……!」
「完璧すぎる……!」
秀と莉乃の連携攻撃が、黒木とミアを追い詰めていく。
そして――
最後の一撃。
秀と莉乃、同時に必殺技を発動。
『絆の力』
巨大な光が、黒木とミアを包み込んだ。
『VICTORY: 神崎灯・白雪リノ』
会場が――歓声に包まれた。
「やったああああ!」
莉乃が、歓声を上げる。
秀も、満足そうに笑った。
「完璧でしたね、莉乃さん」
黒木とミアも――笑顔だった。
「参ったな……やっぱり、神崎たち強えわ」
「すごかったです……勉強になりました……」
ミアも、感心した表情だ。
4人は――ステージの中央で握手を交わした。
「いい試合でした」
「ああ。また、やろうぜ」
エキシビションマッチ後。
秀と莉乃は、控え室で休んでいた。
「疲れたけど……楽しかったね」
莉乃が、嬉しそうに言う。
「ああ。黒木さんたち、本当に強かった」
「うん。でも、私たちが勝ててよかった」
「アンバサダーとして、負けられませんからね」
秀が、笑う。
その時――
ノックの音。
「どうぞ」
ドアを開けると――カザマが立っていた。
「カザマさん!」
「見てたぞ、矢代。相変わらず、いい戦いだった」
「ありがとうございます。カザマさんも、エントリーされたんですよね?」
「ああ。優勝目指して、頑張る」
カザマが、決意を込めて言う。
「ペアは、誰ですか?」
「アナスタシアだ。ヴァルハラのサポート」
秀は――少し驚いた。
「あのアナスタシアさんと!?」
「ああ。彼女も、強くなりたいって言ってくれてな」
カザマが、少し照れくさそうに笑う。
「じゃあ、優勝候補ですね」
「そうなるように、頑張る。じゃあな」
カザマが、去っていった。
大会当日。
会場は、1万人を超える観客で埋め尽くされていた。
「すごい……」
秀が、実況席から会場を見渡して呟く。
「本当に、すごいことになったね……」
莉乃も、圧倒されている。
「では、テインメイト杯、開幕です!」
司会者の声が、会場に響く。
観客席が、大歓声に包まれた。
1回戦。
様々なペアが、激戦を繰り広げていた。
秀と莉乃は、実況席で解説をしている。
「おお、このペア、連携がいいですね」
秀が、感心した声で言う。
「本当だね。すごく息が合ってる」
莉乃も、興奮した様子だ。
試合は、白熱していた。
2回戦。
カザマとアナスタシアのペアが登場した。
「さあ、注目の一戦です!カザマ選手とアナスタシア選手!」
実況者の声が響く。
カザマたちの相手は、ヨーロッパの強豪ペア。
だが――
カザマとアナスタシアの連携は、完璧だった。
圧倒的な強さで、相手を倒していく。
『VICTORY: カザマ・アナスタシア』
「強い……」
秀が、呟く。
「カザマさんたち、本当に強いね……」
莉乃も、感心している。
準々決勝。
黒木とミアのペアも、順調に勝ち上がっていた。
「黒木選手とミア選手、ここまで全勝です!」
実況者が、興奮した声で言う。
「2人とも、すごく成長してますね」
秀が、嬉しそうに言う。
「うん。頑張ってほしいな」
莉乃も、応援している。
---
準決勝。
カザマとアナスタシア vs 黒木とミア
「おお、これは……」
秀が、少し複雑な顔をする。
「どっちも、応援したいね……」
莉乃も、同じ気持ちだった。
試合開始。
カザマと黒木、激しくぶつかり合う。
アナスタシアとミアも、魔法戦を繰り広げる。
互角の戦い。
だが――
カザマの経験値が、わずかに上回った。
最後の一撃。
カザマの必殺技が、黒木に直撃した。
『VICTORY: カザマ・アナスタシア』
「くそ……!」
黒木が、悔しそうに拳を握る。
だが――笑顔だった。
「カザマ……お前、やっぱり強えな……」
「お前もだ、黒木。いい戦いだった」
2人は、握手を交わした。
決勝戦。
カザマとアナスタシア vs 無名の新人ペア
「さあ、決勝戦です!」
実況者の声が響く。
「カザマ選手とアナスタシア選手が、優勝候補筆頭!」
「対する新人ペア、どこまで食い下がれるか!」
試合開始。
カザマたちは――圧倒的な強さを見せた。
新人ペアは、必死に食らいつくが――
カザマたちの経験と実力が、上回っていた。
『VICTORY: カザマ・アナスタシア』
会場が――歓声に包まれた。
「カザマーーーー!」
「優勝だーーーー!」
カザマとアナスタシアは――ステージの中央で、喜びを分かち合った。
表彰式。
カザマとアナスタシアが、優勝トロフィーを掲げている。
「優勝、おめでとうございます!今のお気持ちは?」
秀が、マイクを向ける。
カザマは――少し考えてから、答えた。
「……嬉しい。だが、まだ満足していない」
「と、言いますと?」
「俺の目標は、矢代を超えること。それまで、戦い続ける」
カザマの目が、真剣だった。
秀は――笑った。
「待ってます。いつでも、挑戦してください」
「ああ。必ず、超えてみせる」
2人は――互いを認め合う目で、見つめ合った。
大会終了後。
テインメイトのメンバーたちが、打ち上げをしていた。
「お疲れ様ー!」
黒木が、グラスを掲げる。
「カザマ、優勝おめでとう!」
「ありがとう」
カザマも、笑顔だった。
「神崎も、莉乃ちゃんも、お疲れ様!」
ミアが、嬉しそうに言う。
「実況、すごくよかったです……!」
ユキも、恥ずかしそうに言う。
「お疲れ様でした」
佐藤が、笑顔で言った。
「……お疲れ様」
山田も、静かに言う。
秀は――胸が熱くなった。
「皆さん……本当に、ありがとうございました」
「テインメイト杯、大成功でしたね」
桜井代表も、満足そうに笑っている。
「ええ。これも、皆さんのおかげです」
秀が、深々と頭を下げる。
その夜。
秀と莉乃は、夜の街を並んで歩いていた。
「今日、本当にお疲れ様」
莉乃が、優しく言う。
「莉乃さんも、お疲れ様です」
「テインメイト杯、大成功だったね」
「ええ。本当によかった」
秀が、満足そうに笑う。
「これからも、色んなことに挑戦していきたいですね」
「うん!秀くんと一緒なら、何でもできるよ!」
莉乃が、秀の手を握る。
秀も、その手を握り返した。
「これからも、よろしくお願いします」
「うん。ずっと一緒だよ」
2人は――月明かりの下で、笑い合った。
窓の外には、満天の星。
矢代秀の日々は――これからも、続いていく。
ゲームと共に。
仲間たちと共に。
そして、莉乃と共に。
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